上 下
16 / 69
第2章

2-4 ダリナの魔女見習い2

しおりを挟む
 翌朝……

 ヒロシとミサエさん、ダリナの3人はソタイン村の共同釜にパンを買いに行った。

 ヒロシは紺色の錬金術師の服装で、ミサエさんとダリナは黒の魔女服を着ていた。誰かに聞かれたときのために3人で相談して、ダリナはオカロダ町に行った時に魔女の弟子として冒険者ギルドで預かった事にした。

「おや、魔女様、お弟子さんをとったのかい?」
「はい、オカロダ町に行った時に冒険者ギルドで預かったのです」

「ダリナです、よろしくお願いします」
「私はハンナだよ」
「ここは住みやすい平和な村なんだよ」

 村の共同釜にいたおかみさんたちはダリナに次々と質問をしてきた。

「ヒロシさん、ミサエさん、導師と魔女の格好をしているが、今日も何処かへお出かけかい?」
「はい、獣人族の里でラウレルの葉とウルフベリーの実を採りに行くつもりです」

「ゴブリンには気を付けるんだよ」
「それから、ゾウベクさんとズラタさんに出会ったら、ラビットの肉を持ってきてくれと伝えてくれないかい」

「は~い、分かりました、森で出会ったら伝えておきますね」

 3人は一旦家に戻って、少し遅めの朝食をしっかりと食べて冒険の準備をした。裏庭でヒロシがキャンピングカーを出したのて皆んなで乗り込んだ。

「ヒロシさん、ミサエさん、この馬無し馬車も神様に教えてもらった魔道具ですか?」
「そうだよ、神様に教えてもらって俺が錬金術で作ったキャンピングカーだよ」

「キャンピングカーですか?」
「そうよ、この中で寝ることも出来るのよ」

「へえ~、じゃぁ、野宿をしなくてもすみますね」
「そうよ」

 ミサエさんにキャンピングカーの中を案内されてダリナはベッドの上で飛び跳ねた。

「賢者、ラウレルの葉とウルフベリーの実のある場所に案内してくれ」
「了解しました、獣人族の里の近くまで行きます」

 キャンピングカーは静かに走り出した。

「ヒロシさん、ミサエさん、この馬車は全く揺れませんね、それに凄く早いです」
「そうよ、揺れないから馬車に酔うことは無いのよ」

「まもなく、採取場所に到着します」
「ヒロシさん、ミサエさん、もう着いたのですか?」

「そうだよ」

「ダリナ、両手杖を持って降りましょう」
「は~い」


「ヒロシさん、ダリナの短剣型魔導銃を作って」
「ああ、賢者と相談して女の子用に少し軽くなるように調整しておくよ」

 ヒロシはミサエさんとダリナのために狩猟用ナイフを参考に刃渡りを30センチ程にした魔石をはめ込んだ短剣型魔導銃を2本作った。

「ダリナ、この引き金を引けば雷魔法が自動で撃てるんだ」
「やってみて」

 ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、ビッ ダリナは短剣型魔導銃の試し撃ちをした。

「ヒロシさん、凄いです、詠唱しなくても魔法が使えるなんて夢みたいです」
「雷の魔石を柄にはめてあるからだよ」

「警告!、警告!、ゴブリン5体が来ます。魔導銃を構えて下さい」
「防御結界3重展開」

 ギギィ、ギギィ、ギギィ、ギギィ、ギギィ、ゴブリンはヒロシたち3人を取り囲んで威嚇をしてきた。

 ビッ、ビッ、ビッ、ギィー、ビッ、ビッ、ビッ、ギィー、ダリナの短剣型魔導銃が当たって2体のゴブリンが倒れた。

「ダリナ、落ち着いて、魔導銃で確実にゴブリンに当てるのよ」
 ギギィ、ギギィ、ギギィ、ギギィ、ギギィ、
 ビッ、ビッ、ビッ、ギィー、ビッ、ビッ、ギィー、ビッ、ビッ、ギィー、残り3体のゴブリンも倒れた。

 ゴブリン5体は全てダリナがダガーナイフに似せた短剣型魔導銃で倒したのだった。

「ダリナ、もう大丈夫よ」

「ふう、ミサエさん、怖かったです」
 ピコーン、ピコーン、ピコーン、ピコーン、ピコーン、

「ミサエさん、頭の中で音が鳴っています」
「ダリナ、大丈夫よ、魔物を倒したからレベルが上がる時の音よ」

「ヒロシさん、ゴブリンの耳をお願いね」
「ミサエさん、任せといて」

「ダリナ、座って少し休みましょう」
 ミサエさんは収納から温かいお茶を出してダリナに飲ませた。

「ヒロシさん、タブレットでダリナのレベルを開示して」
「賢者、ダリナのステータスを開示してくれ」

 ◇ ◇ ◇ ◇

【名前】ダリナ
【種族】獣人族
【年齢】15
【称号】魔女見習い
【スキル】
 全属性魔法、鑑定

【LV】16
【MP】32000
 ◇ ◇ ◇ ◇

「昨日もそうだったけど、魔導ブースターのお陰で魔物を倒すとダリナのレベルが上がりやすいのよ」
「ミサエさん、ダリナの特訓は今日はこの辺で終わりにしようよ」

「そうね、無理してダリナのレベルを一気に上げても魔力酔いを起こして体が付いていかないわ」

「ミサエさん、ダリナ、ソタイン村のギルドに寄ってから家に戻ろうか」
「「はい」」

「獣人族の里の近くでゴブリンが出たので退治してきました」
 ヒロシとミサエさん、ダリナの3人はソタイン村のギルドに入っていき、ゴブリンの耳5体分を出した。

「全部で5体、合計で金貨1枚と銀貨5枚です」

「ありがとうございます」

 三人はソタイン村の商業ギルドを出て歩いて魔女の家に帰ってきた。魔導ブースターの効果で魔物を倒すとダリナのレベルが上がるスピードは通常の人の10倍早いのだが、急激なレベルアップはダリナの体に魔力酔いを引き起こしていたのだった。

(話終わり)
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

処理中です...