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第1章
1-10 冒険者初級講習
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オカロダ町の冒険者ギルドで紹介してもらった髭の酒蔵亭は名前のとおり酒場も兼ねており宿屋の店主が仕込んだオーク肉の腸詰めを揚げたオクタ揚げは店の看板メニューだった。
ポヤティラ山の伏流水で仕込まれたエールはまろやかな風味のアロゴエールとしてオカロダ町と周辺の村では有名なエールだった。ヒロシとミサエさんは夕食のボアファングのシチューの他に追加でエールと山ぶどう酒を注文してどちらも1杯が鉄貨3枚、オクタ揚げは大盛りで鉄貨5枚の値段だった。宿代は二人で銀貨2枚だったので20000円として計算をして銀貨1枚が元の世界の10000円の価値で落ち着いたのだった。
翌日、ヒロシとミサエさんはギルド主催の冒険者初級講習を受けた。冒険者になるには初級講習と中級講習の2つのコースが設定されており、受講料金は初級講習は完全に無料、中級講習は一人銀貨2枚だった。初心者講習は義務なのでどうしても受ける必要があったが、中級講習は一定の実力が有れば免除された。
「それでは只今から、冒険者初級講習を始めます」
「私は講師のエレーナです。どうぞよろしくお願いします」
「「「「エレーナ先生、よろしくお願いします」」」」
受講者全員で元気よく挨拶をした。受講生はヒロシとミサエさんの他に6人の少年少女がいた。受講生の年齢はヒロシたちよりもかなり年下で12歳から15歳までの少年少女たちだった。少年少女たちははオカロダ町の近隣の村々から冒険者に憧れて稼ぎに出てきたと言っていた。
冒険者初級講習とは、一般的な社会生活やルールついての一般常識に始まり冒険者レベルに応じた依頼の受け方、屋外活動する上でのキャンプ方法、緊急時の怪我の対処方法や野生動物から身を守る方法までサバイバル術のイロハを教えてもらえた。それと、この世界では魔法が主になるので生活魔法の復習が繰り返し行われた。
生活魔法とは掃除《クリーン》灯火《ライト》清潔《ボデイ・クリーン》飲料水《ウォータ》などの普段の生活でも使える基本的な魔法だが応用すれば攻撃魔法に使えると教わった。ヒロシとミサエさんは世界辞書のインストールのお陰で生活魔法は既に習得が出来ていたのだった。
講習の最後に武器の扱い方を教わり、狩猟ナイフを使ったスライムとゴブリンの倒し方を教わって冒険者初級講習は夕方に終了したのだった。
「「「「エレーナ先生、ありがとうございました」」」」
7人の少年少女は一目散に帰って行ったが、エレーナ先生の話では冒険者ギルドに横に併設された未成年者向けの簡易宿泊所で男女別に寝泊まりしながら一流冒険者になるためのお金を稼いでいるらしかった。簡易宿泊所の料金は一泊が鉄貨5枚で2日以上の前払い制だった。
エレーナ先生がヒロシとミサエさんに教えてくれたのは、未成年の子どもでも冒険者初心者講習を受ければダンジョンの1階と2階までは潜ることが出来るのでそこで実力をつけると教わった。
◇ ◇ ◇ ◇
初日の初心者講習が終わったので二人は通りを歩いていた。オカロダの大通りはテンプル通りと呼ばれていて、東西の二つの教会へ続く大通りに沿って多くの店が立ち並んでいた。夕方になったので仕事帰りの職人と夕食を買い求める客で通りは賑っていた。
「ヒロシさん、ずいぶんとにぎやかだよね」
「そうだね、ソタイン村の100倍くらいにぎやかだよね」
「そうよね」
「ミサエさん、一緒に受講した子どもたちは何処で食事をしているのだろうね」
「そうね、想像だけど、まかない食のような安いご飯を提供するお店が宿泊所の近くに有るのと違うかしら」
「そうかも知れないね」
髭の酒蔵亭に戻った二人は食堂の空いている席に着いた。
「おい、聞いたか、ダニヤ村ダンジョンの1階で子どもが死んだそうだ」
「そうなのか、ダンジョンの1階はスライムとホーンラビットだけだろ」
「そのホーンラビットが突進して角が子どもの腹に刺さったのさ」
「そうだったのか、監視の職員に落ち度は無いらしいから気の毒としか言いようがないな」
「死んだ子どもには不憫だが運が無かったとしか言いようがないな」
「そうだな」
二人の冒険者はしんみりとエールを飲んでいた。
「そう言えば、オカロダ町に新しいグループが誕生するって噂だな」
「その話、詳しく教えてくれよ」
「ああ、ダニヤ村から来た男女2組のグループだそうだ」
「そうなのか」
「この話はまだ内密にな」
「ああ、分かっているよ」
ヒロシとミサエさんは隅のテーブルが空いていたので椅子に座って店内の様子を伺っていた。
「ヒロシさん、グループって何なの?」
「ミサエさん、急に聞かれても俺も分からないよ」
「そう言えば、昨日、壁際で大声で笑っていた男女二人がいたわね」
「そうだったかな」
「兄さんと姉さんたち、その話は人前では言っちゃいけないよ」
「ああ、壁に耳ありって言うからね」
「すみません、気をつけます」
「すみません、お二人にエール二つ」
「は~い」
「兄さん、たかったようで悪いな」
「いいえ、気にしないで下さい、俺たちソタイン村から出てきたので何も知らないので」
「それと、兄さんたち、ソタイン村から出てきた事も絶対に他人に言わないほうがいいな」
「人によっちゃ村人は差別対象になるからな」
「そうなんですか」
「分かりました、ご忠告ありがとうございます」
「いいってことよ、気にするな」
「すみません、お二人にエールおかわり二つ」
「は~い」
エールのおかわりで饒舌になった冒険者のアレクとエドマンは2年前に王都ケトマスからキント市に流れてきて1年前にオカロダ町に着いたと教えてくれた。来月にはナニサカ市に移ると教えてくれたのだった。
「兄さんと姉さんも早いこと他の町に引っ越しをしたほうがいいかもな」
「ここでは壁に耳が有るから迂闊な事は言えないし余所者には優しくない町だからさ」
「まぁ、そういう事だ」
「エールごちそうさん」
客室に戻る前にアレクとエドマンが教えてくれたのは、オカロダ町ではクランが幅を利かせているのでクランを批判するような言動は影で冒険者が制裁を受けても誰も文句は言えなかったのだった。クランに属していない他所から来た冒険者は一律亜人として見なされ、実力を低く見られ彼らの軽蔑対象となっていた。
クランも含めてイポニアの一般常識を何も知らないヒロシとミサエさんはオカロダ町独特の貴族主義を冒険者のアレクとエドマンから教わったのだった。
(話終わり)
-------------------------------------
追記: 冒険者レベルの目安
LV1~ Fランク冒険者(木チップ)見習い:冒険者初級講座を受講後、主に12歳から15歳までの子どもがダンジョンの1階と2階に潜ることが出来る ※冒険者初級講座は誰でも無料で受講可能である。
LV10 Eランク冒険者(石ストーン)初心者の冒険者:冒険者中級者講習を受ける事が出来る。
LV15 Dランク冒険者(鉄アイアン)一人前の冒険者
LV25 Cランク冒険者(銅カッパー)ベテランの冒険者
LV35 Bランク冒険者(銀シルバー)昇級条件は盗賊の討伐が必須
LV45 Aランク冒険者(金ゴールド)昇級条件は盗賊の討伐と高位ランクの魔物の討伐が必須
LV70 Sランク冒険者 (白金ミスリル)
LV99 SSランク冒険者
※この世界の子どもたちは孤児救済の措置として12歳から冒険者ギルドに登録ができる。15歳になると成人として扱われ、飲酒、結婚が出来る。
※冒険者のレベルの目安は全作品をとおして同じとします
ポヤティラ山の伏流水で仕込まれたエールはまろやかな風味のアロゴエールとしてオカロダ町と周辺の村では有名なエールだった。ヒロシとミサエさんは夕食のボアファングのシチューの他に追加でエールと山ぶどう酒を注文してどちらも1杯が鉄貨3枚、オクタ揚げは大盛りで鉄貨5枚の値段だった。宿代は二人で銀貨2枚だったので20000円として計算をして銀貨1枚が元の世界の10000円の価値で落ち着いたのだった。
翌日、ヒロシとミサエさんはギルド主催の冒険者初級講習を受けた。冒険者になるには初級講習と中級講習の2つのコースが設定されており、受講料金は初級講習は完全に無料、中級講習は一人銀貨2枚だった。初心者講習は義務なのでどうしても受ける必要があったが、中級講習は一定の実力が有れば免除された。
「それでは只今から、冒険者初級講習を始めます」
「私は講師のエレーナです。どうぞよろしくお願いします」
「「「「エレーナ先生、よろしくお願いします」」」」
受講者全員で元気よく挨拶をした。受講生はヒロシとミサエさんの他に6人の少年少女がいた。受講生の年齢はヒロシたちよりもかなり年下で12歳から15歳までの少年少女たちだった。少年少女たちははオカロダ町の近隣の村々から冒険者に憧れて稼ぎに出てきたと言っていた。
冒険者初級講習とは、一般的な社会生活やルールついての一般常識に始まり冒険者レベルに応じた依頼の受け方、屋外活動する上でのキャンプ方法、緊急時の怪我の対処方法や野生動物から身を守る方法までサバイバル術のイロハを教えてもらえた。それと、この世界では魔法が主になるので生活魔法の復習が繰り返し行われた。
生活魔法とは掃除《クリーン》灯火《ライト》清潔《ボデイ・クリーン》飲料水《ウォータ》などの普段の生活でも使える基本的な魔法だが応用すれば攻撃魔法に使えると教わった。ヒロシとミサエさんは世界辞書のインストールのお陰で生活魔法は既に習得が出来ていたのだった。
講習の最後に武器の扱い方を教わり、狩猟ナイフを使ったスライムとゴブリンの倒し方を教わって冒険者初級講習は夕方に終了したのだった。
「「「「エレーナ先生、ありがとうございました」」」」
7人の少年少女は一目散に帰って行ったが、エレーナ先生の話では冒険者ギルドに横に併設された未成年者向けの簡易宿泊所で男女別に寝泊まりしながら一流冒険者になるためのお金を稼いでいるらしかった。簡易宿泊所の料金は一泊が鉄貨5枚で2日以上の前払い制だった。
エレーナ先生がヒロシとミサエさんに教えてくれたのは、未成年の子どもでも冒険者初心者講習を受ければダンジョンの1階と2階までは潜ることが出来るのでそこで実力をつけると教わった。
◇ ◇ ◇ ◇
初日の初心者講習が終わったので二人は通りを歩いていた。オカロダの大通りはテンプル通りと呼ばれていて、東西の二つの教会へ続く大通りに沿って多くの店が立ち並んでいた。夕方になったので仕事帰りの職人と夕食を買い求める客で通りは賑っていた。
「ヒロシさん、ずいぶんとにぎやかだよね」
「そうだね、ソタイン村の100倍くらいにぎやかだよね」
「そうよね」
「ミサエさん、一緒に受講した子どもたちは何処で食事をしているのだろうね」
「そうね、想像だけど、まかない食のような安いご飯を提供するお店が宿泊所の近くに有るのと違うかしら」
「そうかも知れないね」
髭の酒蔵亭に戻った二人は食堂の空いている席に着いた。
「おい、聞いたか、ダニヤ村ダンジョンの1階で子どもが死んだそうだ」
「そうなのか、ダンジョンの1階はスライムとホーンラビットだけだろ」
「そのホーンラビットが突進して角が子どもの腹に刺さったのさ」
「そうだったのか、監視の職員に落ち度は無いらしいから気の毒としか言いようがないな」
「死んだ子どもには不憫だが運が無かったとしか言いようがないな」
「そうだな」
二人の冒険者はしんみりとエールを飲んでいた。
「そう言えば、オカロダ町に新しいグループが誕生するって噂だな」
「その話、詳しく教えてくれよ」
「ああ、ダニヤ村から来た男女2組のグループだそうだ」
「そうなのか」
「この話はまだ内密にな」
「ああ、分かっているよ」
ヒロシとミサエさんは隅のテーブルが空いていたので椅子に座って店内の様子を伺っていた。
「ヒロシさん、グループって何なの?」
「ミサエさん、急に聞かれても俺も分からないよ」
「そう言えば、昨日、壁際で大声で笑っていた男女二人がいたわね」
「そうだったかな」
「兄さんと姉さんたち、その話は人前では言っちゃいけないよ」
「ああ、壁に耳ありって言うからね」
「すみません、気をつけます」
「すみません、お二人にエール二つ」
「は~い」
「兄さん、たかったようで悪いな」
「いいえ、気にしないで下さい、俺たちソタイン村から出てきたので何も知らないので」
「それと、兄さんたち、ソタイン村から出てきた事も絶対に他人に言わないほうがいいな」
「人によっちゃ村人は差別対象になるからな」
「そうなんですか」
「分かりました、ご忠告ありがとうございます」
「いいってことよ、気にするな」
「すみません、お二人にエールおかわり二つ」
「は~い」
エールのおかわりで饒舌になった冒険者のアレクとエドマンは2年前に王都ケトマスからキント市に流れてきて1年前にオカロダ町に着いたと教えてくれた。来月にはナニサカ市に移ると教えてくれたのだった。
「兄さんと姉さんも早いこと他の町に引っ越しをしたほうがいいかもな」
「ここでは壁に耳が有るから迂闊な事は言えないし余所者には優しくない町だからさ」
「まぁ、そういう事だ」
「エールごちそうさん」
客室に戻る前にアレクとエドマンが教えてくれたのは、オカロダ町ではクランが幅を利かせているのでクランを批判するような言動は影で冒険者が制裁を受けても誰も文句は言えなかったのだった。クランに属していない他所から来た冒険者は一律亜人として見なされ、実力を低く見られ彼らの軽蔑対象となっていた。
クランも含めてイポニアの一般常識を何も知らないヒロシとミサエさんはオカロダ町独特の貴族主義を冒険者のアレクとエドマンから教わったのだった。
(話終わり)
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追記: 冒険者レベルの目安
LV1~ Fランク冒険者(木チップ)見習い:冒険者初級講座を受講後、主に12歳から15歳までの子どもがダンジョンの1階と2階に潜ることが出来る ※冒険者初級講座は誰でも無料で受講可能である。
LV10 Eランク冒険者(石ストーン)初心者の冒険者:冒険者中級者講習を受ける事が出来る。
LV15 Dランク冒険者(鉄アイアン)一人前の冒険者
LV25 Cランク冒険者(銅カッパー)ベテランの冒険者
LV35 Bランク冒険者(銀シルバー)昇級条件は盗賊の討伐が必須
LV45 Aランク冒険者(金ゴールド)昇級条件は盗賊の討伐と高位ランクの魔物の討伐が必須
LV70 Sランク冒険者 (白金ミスリル)
LV99 SSランク冒険者
※この世界の子どもたちは孤児救済の措置として12歳から冒険者ギルドに登録ができる。15歳になると成人として扱われ、飲酒、結婚が出来る。
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