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第4章

4-2 私刑になりそうになった

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 ド~ンド~ンド~ン、ゴーンゴーンゴーン、チキチキ、チキチキ、チキチキ、ド~ンド~ンド~ン、ゴーンゴーンゴーン、チキチキ、チキチキ、チキチキ、何処かで祭りの太鼓と鐘のなる音が響いていた。

 毎年、夏が近づくと町の住民は大人も子どもも祭りの準備で大忙しだった。


 50年ほど前からイポニアの若者たちは15歳になると各町のクラン自警団に強制加入させられた。

 悪い言い方をすれば、奉仕という活動名目で若者に無償で働かせたのだった。奉仕活動が終われば教会主催の直会が行われ酒と食事が振る舞われた。要はただ酒を提供する代わりに無償の労働力を確保していたのである。


 オカロダ町に於いても勇者と聖女のマリティレスを先頭にクラン自警団として各町内に組織されていた。

 クラン自警団の主な仕事は普段の冒険者活動の他に町の警護、美化活動、祭りの運営など多義にわたっていた。オカロダ町とその近隣の村々ではでは毎年夏になるとペトラ祭りが開催され、ペトラ祭りでの露店等の運営は重要な活動資金となっていた。

 ペトラ祭りとは市民がアチヤ川の河原で小石を拾って教会の神殿前広場に奉納する神事の事で毎年行われていた。神事の後は踊りの輪が出来て食事と酒が市民に振る舞われたので大勢の参拝者でオカロダ町の二つの教会は賑わっていた。

 二つの教会の警備を担当するのは勇者と聖女のグループ・マリティレスの重要な仕事であって祭りの運営、屋台の運営等も冒険者が参加していた。祭りの中で勇者と聖女は領主から功績を讃えられ、報奨金は全て町民に還元されるので町民からは絶大な支持を受けていたのだった。

 ド~ンド~ンド~ン、ゴーンゴーンゴーン、チキチキ、チキチキ、チキチキ、ド~ンド~ンド~ン、ゴーンゴーンゴーン、チキチキ、チキチキ、チキチキ、何処かで祭りの太鼓と鐘のなる音が響いていた。


「ヒロシ、ミサエ、ダリナ、サブローは目立ちすぎたから私刑だ」
「領主から4人の逮捕状を取ってきたわ」
「明日は騎士団と一緒にソタイン村に4人を捕まえに行こう」

 ヒロシはオカロダ町の4人の勇者と聖女、数十人の騎士団に囲まれていた。

「キント市の冒険者ギルドはお前達4人をAランクにしたようだが、それは間違いだ」
「オカロダ町にAランクの冒険者がいると俺たちの仕事が無くなるのでね」

「そういう訳で、4人には死んでもらうさ」
「そうよ、巨乳ババアと獣耳娘は死ねばいいのよ」

「勇者と聖女は今後も俺たち4人だけでいいのさ」


 場面が変わって、オカロダ町の広場で裁判長から4人に判決が言い渡されるところであった。

「これより判決を申し渡す」
「ソタイン村のヒロシ、ミサエ夫婦、ダリナ、サブローの4名は偽勇者、偽聖女としてオカロダ町の領主及びイポニア国王を欺き冒とくした罪により私刑とする」

「違うんだ、悪いのは貴族と教会なんだ」
「俺は嵌めれていたんだ」

 ヒロシ、ミサエ、ダリナ、サブローの4名は両手を後ろに縛られ断頭台の前に立たされた。
「ヒロシと3人の首をおとせ」
 ジャキーン、ゴトン、ヒロシは板の上にうつ伏せに寝かされ断首されたヒロシの首は籠で受けられた。ジャキーン、ゴトン、ジャキーン、ゴトン、ジャキーン、ゴトン、同じようにミサエさん、ダリナ、サブローも断頭台の餌食となった。4人の首と死体はザリットたちが直ぐに片付け献花台が設置された。

「ソタイン村の偽勇者と偽聖女は処刑された」
「皆んな、飲んで喰って踊ってくれ」

「「「「「「オカロダの勇者と聖女万歳!!!」」」」」
「「「「「「マリティレス万歳!!!」」」」」

「「「「「ウォー!!!」」」」」

 ゴーンゴーンゴーン、チキチキ、ゴーンゴーンゴーン、チキチキ、ゴーンゴーンゴーン、チキチキ、チキチキ、チキチキ、アーヨーイヨイ、アーヨーイヨイ、アーヨーイヨイ、

 ゴーンゴーンゴーン、チキチキ、ゴーンゴーンゴーン、チキチキ、ゴーンゴーンゴーン、チキチキ、チキチキ、チキチキ、アーヨーイヨイ、アーヨーイヨイ、アーヨーイヨイ、

 4人の死体は直ぐに片付けられて市民には領主からタダ酒と料理が振る舞われ市民は踊りの輪が出来ていた。

 ヒロシさん、ヒロシさん、夢でうなされていたけど、どうしたの?」

「ミサエさん、やっぱりこの町はおかしいよ」
「俺たちは公開処刑でギロチンで俺たち4人の首が落とされたんだ」
「それでその後に処刑された広場で盆踊りが始まるのだよ」
「俺たち4人の死体は堤防で見た人たちによって片付けられて裸にされて薬の原料になるんだ」

「ヒロシさんが見た夢の話よね」

「ミサエさん、夢の話では有りません、ヒロシさんが見た夢は明日には現実に起こりうる事実です」
「ラファエル、ミサエさんにも分かるように詳しく説明をして」

 ラファエルはヒロシが見た夢をミサエさんに転送した。同様にダリナとサブローにもヒロシが見た夢を見させた。

 ミサエさんは余りにも恐ろしい光景に気を失いそうになったので慌ててヒロシが抱きかかえてマンドラゴラポーションを飲ませた。

「ミサエさん、ショックが強すぎたかも知れませんが、ヒロシさんが見た夢はアカシック・レコードシステムが見せている未来なのです」
「アカシック・レコードは各個人の情報が全て記録されていて過去、未来も記憶されているのです」

「アカシック・レコードシステムの改良が進んだおかげで腹黒い人たちの過去の行いが明るみに出てきたのです」
「既に神様たちはイポニアを離れたのでこの悪事については放置されます」

「ラファエル、明日私たちはマリティレスに捕まって殺されてしまうの?」
「そうです、ヒロシさんたち4人が目立つと、困る人たちが居るからです」

「ミサエさん、アダムさんとエレーナさんと飲みながら聞いた話は本当だったんだ」
「ヒロシさん今直ぐこの国から脱出しましょう」

「ラファエル、捕まる前に国外に脱出だ。準備を急いでくれ」
「ミサエさん、いいかな?」

「私はいいけど、サブローとダリナはどうするの?」
「そうだね、”おせっせ”で疲れて寝ているからラファエルに起こしてもらうよ」

「ラファエル、サブローとダリナを起こしてくれ」
「ヒロシさん、大丈夫です、ヒロシさんと同じ夢を見たのでもうすぐ起きてきますよ」


「ヒロシさん、ミサエさん、早く起きて下さい」
「俺たち、殺されます」
「裸にされて、薬の原料になるのです」

「ヒロシさん、ミサエさん、、今すぐ逃げましょう」
「アダムさんとエレーナさんが言っていた事は本当です」

「ミサエさ~ん、早く出発しましょう」
 サブローとダリナは既にキャンピングカーを出して乗り込んだのだった。

「ヒロシさん、サブローさんとダリナさんの準備はオッケーです」

「収納」
 ログハウスは収納され、元の空き地に戻った。ヒロシとミサエさんもキャンピングカーに乗り込み発進を待った。

「ラファエル、とりあえず目的地は任せるので今直ぐイポニアを離れてくれ」
「了解しました、サブローさんとダリナさんのキャンピングカーと連動シンクロして飛行を続けます」

 タブレットの画面には世界地図が表示され、飛行ルートが表示された。

(話終わり)


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 タイトルを死刑から私刑に変更しました。
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