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第3章

3-9 ココニク魔導具工房の手伝い2

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「ミサエさん、ダリナさん、すまないが先に下級ポーションを作ってくれないか」
「今まで作れなかった分を一気に増やしたいのでね」

「エレーナさん、やってみますね」

「ダリナ、薬師の大鍋を2つ用意して」
「ミサエさん、これですか?」

 ダリナはマンドラゴラポーションを作ったときの大鍋を収納から2つ出してきた。

「驚いた、あんた達、収納魔法を使えるのかい?」
「はい、レベルが上ったので使えるようになりました」

「ダリナ、大鍋をきれいに洗ったら、魔力水を満たすのよ、見ていて」
 ミサエさんは薬師の大鍋に魔力水を満たして見せた。

「次はダリナよ、やってみて」
「はい」
 ダリナも直ぐに魔力水を満たした。

「へぇ、驚いた、あんた達、魔力は大丈夫なのかい?」
「はい、何ともありません」

「普通の子はこんな大きな鍋に魔力水を満たすなんて到底出来ないのだよ」
「モスコの魔法学園でも半分は魔力水が満たせなくて脱落していくのだよ」

「ダリナ、薬草を洗ったら大鍋にマグワートとアロイとハターニアを入れるのよ」
「はい」

「準備が出来たら『サンクチュアリー』よ」
「サンクチュアリ」

「こりゃ驚いた、ミサエさんは一発で作るんだね」
「普通は抽出イズリカット浄化アチシーニ
「そして、最後に固定イスプラベノと3回呪文を唱えて1本のポーションが出来上がるのよ」
「これがモスコの魔法学園で習うポーションの基本だよ」

「アダム、この子たちの魔力量はモスコの大魔女の10倍以上かも知れないわ」
「そうなのか?」
「ええ、とんでもない魔力量を持っている事だけは確かよ」

「鑑定」
 エレーナさんは下級ポーションを鑑定した

◇ ◇ ◇ ◇

下級ポーション
外傷(切り傷、咬傷、擦り傷)を回復する
解熱、下毒作用がある
怪我により失われた体力を半分回復する
但し、骨折、欠損は回復できない
味は苦くてかなり飲みにくい

◇ ◇ ◇ ◇

「アダム、本物の下級ポーションよ」
「もう出来たのか?」

「ヒロシさん、サブロー、ポーションの小瓶を作って」

「サブロー、具現化でそれぞれ100本ずつ作ろう」
「はい」

 ポーションの小瓶は200本が一瞬で出来上がった。ミサエさんとダリナは下級ポーションを小瓶に移し替えたのだった。

「はぁ、驚いた、普通は熟練の魔女でも下級ポーションは1日で10本作ればいいほうだよ」

「ダリナ、次は中級ポーションよ」
「先に大鍋に魔力水を満たすけど、魔力は少し強めに流すのよ、見ていて」
 ミサエさんは魔力水を直ぐに満たし、大鍋が薄っすら光った。

「ミサエさん、やってみます」
 ダリナは大鍋に魔力水を直ぐに満たし、大鍋が薄っすら光った。

「準備が出来たら、アロイ、ラベンダー、ユペリコ草を大鍋に入れて『サンクチュアリ』よ」
「はい」
「サンクチュアリ」
 大鍋は一瞬光って直ぐに元の黒色に戻った。

「鑑定」
◇ ◇ ◇ ◇

中級ポーション
外傷(切り傷、咬傷、擦り傷)を全回復する
解熱、下毒作用がある
怪我により失われた体力を全回復する
骨折、一部欠損を回復出来る
味は爽やかな味でかなり飲みやすい

◇ ◇ ◇ ◇

「アダム、間違いないよ、ミサエさんとダリナさんが作ったのは本物の中級ポーションだよ」
 ミサエさんとダリナは中級ポーションを小瓶に移し替え100本を作ったのだった。

「それにしても、一瞬でポーションを200本も作るなんて、ミサエさんもダリナさんも大魔女だよ」
「大したもんだ」

「大したことはありません」
「ありがとうございます」


「ヒロシさん、腰の短剣を見せてくれないか?」
「ええ、どうぞ」

「エレーナ、どう思う」
「アダム、これは、雷魔法の魔剣よ」

「そうなのか」
「前にヒロシとミサエさんが店に来たときに鑑定したから間違いないわ」

「アダム、オカロダ町の冒険者は全員が長剣使いなので売れないわよ」
「サブロー、レイピアを出してくれ」

「アダムさん、このレイピアでは駄目でしょうか?」
「ヒロシさん、ちょっとイメージが違うな」

(ヒロシさん、魔石交換型のサーベルを具現化しまよう)
(アダムさんはロキシアのサーベルを望まれています)

 ヒロシは魔石を交換できるように改良したロキシアのサーベルを具現化で作った。

「アダムさん、風属性の魔石はありますか?」
「ああ、この小さな石だ」

ヒロシは風属性の魔石をサーベルにはめ込み、全員が店の裏の土手に出てヒロシの実演を見守った。

「ウインドカッター」
 旋風が巻き起こって土手の草が刈られた。次にアダムさんが同じようにウインドカッターで試し切りをしてサーベル実力は証明された。


「ヒロシさん、このサーベルだよ、こんな剣が欲しかったんだ」
「エレーナ、これならケトマスとナニサカで売れるな」

「そうね、魔石交換式の魔剣は珍しいはずよ」

「ヒロシさん、このアイディアを売ってくれないか?」
「ええ、いいですよ」

 この後、店内に戻って全員で話し合った。下級ポーション200本と中級ポーション200本はエレーナさんが責任を持って販売することにして、定価の3割がミサエさんとダリナの口座にそれぞれ振り込まれる事で合意した。

 ヒロシが作った魔石交換式の魔剣はパテント料として剣1本に付き金貨2枚のパテント料がヒロシの口座に振り込まれる事で支払うことで合意した。

「ヒロシさん、僕も考えたっす」
「サブローどうした?」

「この魔物検知鈴です」

 サブローは小さな鈴の中にスライムの魔石を入れて魔物が近づくと音が鳴るようにした。

「サブローよく考えたな」
「えへ、ダリナさんからヒントをもらったのです」

「エレーナ、これなら一般の人にも売れるな」
「そうね、商業ギルドで商業神に奉納しましょう」
「そうすれば、3年間は独占販売が可能よ」

「そうだな、大量に作れば1つ銀貨5枚程度で売れるな」
「そうね」


 この後、サブローは世界辞書の知識を借りて光る魔石を入れた四角い小型ランタンを具現化で作った。透明なガラスをはめ込み光る魔石の光源を前に光らせる構造にしたのだった。光る魔石はヒロシが収納に持っていたので10キロほど素材としてアダムさんに買ってもらった。

「サブローさん、このランタンなら冒険の邪魔にならないな」
「これも、アイディアとしてうちで独占販売をさせてもらうよ」


「ヒロシさん、ミサエさん、サブローさん、ダリナさん、本当にありがとう、助かったよ」
「これで今月の売上は確実に上がるはずだ」

 こうしてココニク魔導具工房の手伝いは終わった。4人はアダムさんとエレーナさんから王都ケトマスに行くことを強く勧められたので王都へ行くことを決めたのだった。

「ヒロシさん、エレーナが食事を用意してくれたので食べていってくれ」

「アダムさん、ありがとうございます」

(話終わり)

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