上 下
15 / 69
第2章

2-3 ダリナの魔女見習い1 

しおりを挟む
 ヒロシとミサエさん、ダリナの3人はオカロダ町の冒険者ギルドでラウレルの葉とウルフベリーの実の採取の依頼を受け、アチヤ川の堤防の上で転移門を出してソタイン村の魔女の家に帰ってきていた。



「ダリナ、改めて紹介するよ、俺たちは神様から依頼を受けて遠い東の国からこのソタイン村に越してきたんだ」

「わかりました、それで、ヒロシさんもミサエさんも凄い魔法が使えるのですね」

「ダリナ、それは少し違うんだ」

「俺もミサエさんも最初は全く魔法が使えなくてゴブリンに襲われそうになったよ」
「でも、一昨日ギルドで冒険者中級講習を受けてから魔法が上手く使えるようになったんだ」

「へぇ~、ギルドの短期講習だけでよく使えるようになりましたね」
「そうだね、二日目の実技講習は本当に厳しかったよ」

「私はノーミ市の近くの獣人族の村から1年前に船で川を下ってきてオカロダ町に来たのです」
「両親は小さい頃に魔物に襲われて二人共亡くなったので叔母の家に預けられ1年前までは叔母家族と一緒に暮らしていたのですが、再び魔物が村を襲って叔父も叔母も亡くなってしまい、命からがら逃げてきたのです」

「そんな辛いことがあったなんて」

「じゃぁ、冒険者になったのは1年前からなの?」
「はい、最初の半年間は1階のスライムを専門で倒して緑の石を拾っていたのです」

「いつもは孤児仲間と一緒にゴブリンを倒していたのですが、お金の分配のことで仲間との喧嘩が絶えなかったのです」

「そうか、それで嫌になって一人で2階まで降りていったんだね」
「はい、そうです」

「ミサエさん、ダリナと一緒に先にお風呂に入ってきて」
「俺は今から二階にダリナの寝室を作るから」

「賢者、ダリナの寝室を最適化してくれ」
「了解です、共有スペースに2階女子トイレと洗面所を一緒に作りましょう」

 ヒロシはソタイン村の魔女の家が狭すぎるので具現化で風呂場を拡張して屋根の上にダリナ専用の寝室を増設することにした。屋根は緩く勾配を付けて丘屋根にしたのだった。増設したダリナの寝室はシングルベッドと小さなドレッサーを2つ作って、ドレッサーの一つはヒロシとミサエさんの寝室にも入れた。

「ヒロシさん、お先に」
「ミサエさん、二階に上がってダリナの部屋を確認してみて」

「ダリナ、どう、気にった?」
「ミサエさん、ここが私のお部屋ですか?」
「ええ、そうよ」

「ヒロシさんの錬金術って本当にすごいのですね」
「そうかも知れないわね」

「ダリナ、貴女何も持っていなかったわね」
「はい、食べるので精一杯で、ずっと着の身着のままでした」

「じゃぁ、いまから下着と魔女服を作るわね」
「えっ、ミサエさんも錬金術が使えるのですか?」
「ええそうよ」

 ミサエさんは、世界辞書の知識でダリナのためにリネンのシュミーズとドロワーズを何枚か具現化で作ってくれた。今後はミサエさんもダリナも同じ黒色の魔女服を作り、魔女帽子のリボンをミサエさんは紫色、ダリナはピンク色にしたのだった。

 ヒロシはミサエさんとダリナがお風呂に入っている間にキッチンで田舎パンをスライスして簡単なサンドイッチを作ったのだった。

「賢者、ダリナのレベルアップする方法を考えてくれ」

「ヒロシさん了解です」
「とりあえず、午後からはカブラ村の草原に移動してスライム退治を行いましょう」

 3人はサンドイッチの昼食後、転移門を使ってカブラ村の草原に移動してきた。

「ダリナ、スライムにレイピアを突き刺すのよ」
 ポヨン、プシュ、ポヨン、プシュ、ポヨン、プシュ、ポヨン、プシュ、ポヨン、プシュ、ポヨン、プシュ……ダリナは草原に立ってレイピアでスライムを次々と突き刺していった。

「ミサエさん、これはダンジョンでいつもやっていたので簡単です」
「ダリナ、気をつけて」

 ポヨン、プシュ、ポヨン、プシュ、ポヨン、プシュ、ポヨン、プシュ、ポヨン、プシュ、ポヨン、プシュ……

 ダリナはスライムを30匹倒して終了となった。
「ミサエさん、スライムの魔石は全部拾ったよ」
「ヒロシさん、ありがとう」

 ピコーン、ピコーン、ピコーン、ダリナは魔導ペンダントのお陰で一般人と比べてレベルと魔力量が10倍上がりやすくなっていた。レベルと魔力量が上ったことにより体に魔力酔いが少し起きふらついていた。

「ダリナ、少し休みましょう」

 ミサエさんは収納から温かいお茶を出してダリナに飲ませた。ヒロシはダリナが倒したスライムの魔石を全て集めてくれた。

「ミサエさん、もう大丈夫です」
「ミサエさん、ダリナ、ソタイン村の商業ギルドに行こうよ」
「ええ、そうしましょう」

 3人は転移門で魔女の家に戻ってからソタイン村の商業ギルドに歩いていった。

「こんにちは、スライムの魔石の買い取りお願いします」
 ダリナはスライムの魔石をカウンターに並べた

「スライムの魔石は1個が銅貨1枚になりますので、30個で銀貨3枚です」
「ありがとう」

 ヒロシとミサエさんとダリナの3人は魔導師と魔女の格好で村の中心部を歩いていた。

「ダリナ、ここがソタイン村の雑貨店よ」
「いらっしゃい」

「ヒロシさん、ミサエさん、今日はお仕事かい?」
「はい、オカロダ町で弟子を取ったのでギルドに来たのです」

「ダリナです、よろしくお願いします」

「ヒロシさん、ミサエさん、お弟子さんにこの本はどうだろうね?」
「初級魔法便覧だ、この前買ってもらったグリモワールの入門書だよ」

「幾らなの?」

「はい、銀貨5枚です」
「じゃぁ、頂くわ」

「ダリナ、本は読めるよね」
「はい、大丈夫です」

 ヒロシとミサエさん、ダリナの3人は裏庭に来ていた。ヒロシはダリナの魔法練習用にギルドの攻撃案山子を真似て具現化で作ったのだった。

「ミサエさん、ダリナに攻撃魔法を教えようよ」
「ええ、ダリナ手を出して魔力を感じ取って」

「ミサエさん、何だか凄く温かいのがお腹に流れてきました」

「ダリナ、これがってことよ」

「次は、あの案山子に向かって水球ウォーターバレットよ」
「水の弾を頭でイメージしてぶつけるのよ」

「ウォーターバレット」
 ミサエさんは、両手杖を使ってダリナに魔法の見本を見せた。大きな水の弾が攻撃案山子にあたって弾け飛んだ。

「ミサエさん、やってみますね」
「ウォーターバレット」

 小さな水の弾が弾け飛んだ。
「ダリナ、もう少し杖で魔力を練るのよ」

「ウォーターバレット」
 バシューン、バスケットボール大の水球が攻撃案山子にあたって弾け飛んだ。

「ミサエさん、できました」

「ダリナ、次は雷魔法よ」
「雷も要領は同じで呪文は『サンダーバレット』よ」

「サンダーバレット」
 バリーン、ダリナのサンダーバレットが当たって、案山子は地面から抜けて倒れていた。

「ヒロシさん、どうだった?」

「賢者、ダリナのステータスを開示してくれ」
「了解です」

◇ ◇ ◇ ◇

【名前】ダリナ
【種族】獣人族
【年齢】15
【称号】魔女見習い
【スキル】
 全属性魔法 

【LV】11
【MP】21000
◇ ◇ ◇ ◇

「ミサエさん、この魔道具はギルドに有る魔力測定盤と同じなのですか?」
「意味は違うけど、ダリナの魔力を測っているよ」

「ヒロシさん、ダリナは全属性の魔法が使えるようになったね」
「ミサエさん、多分、凄いことになってる思うよ」

「そうね、魔導ブースターが底上げしてるからね」

「ダリナは魔女見習いになったのよ」
「えっ、そうなんですか?」

「そうよ、これからは私たちの弟子よ」
「本当ですか?」
「うれしいです」

(話終わり)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

わがまま令嬢の末路

遺灰
ファンタジー
清く正しく美しく、頑張って生きた先に待っていたのは断頭台でした。 悪役令嬢として死んだ私は、今度は自分勝手に我がままに生きると決めた。我慢なんてしないし、欲しいものは必ず手に入れてみせる。 あの薄暗い牢獄で夢見た未来も、あの子も必ずこの手にーーー。 *** これは悪役令嬢が人生をやり直すチャンスを手に入れ、自由を目指して生きる物語。彼女が辿り着くのは、地獄か天国か。例えどんな結末を迎えようとも、それを決めるのは彼女自身だ。 (※内容は小説家になろうに投稿されているものと同一)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)

青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。 ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。 さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。 青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...