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第1章

1-4 村のマルシェに行ってみた

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 転生して2日目の朝、ヒロシとミサエさんは鐘の音で目覚めた……

 昨日、ハンナさんからソタイン村の人たちは鐘の音で生活をしているのだと詳しく教えてもらった。

 村の鐘は生活に合わせて1日に6回鳴らされる。朝の鐘、午前の鐘、昼の鐘、午後の鐘、夕方の鐘、就寝の鐘の6回なので、約3時間ごとに鐘が鳴るのだとヒロシとミサエさんは頭で理解した。

 ヒロシはお腹が空いていたので直ぐにでも朝食を食べたかったが、昨日は朝食の材料が既に準備されていたけれど、魔女の家には冷蔵庫は無いので食料品の買い置きを全くしていない事に今頃気付いたのだった。

「ミサエさん、やっちゃった~」
「ヒロシさん、朝から大声を出してどうしたの?」

「ミサエさん、昨日、田舎パンを買うのを忘れていたの」

 さっさと着替えてミサエさんと二人で村のお店に行こうと思ったのがまずかった。この村にはパン屋さんが一軒も無かったのだ。

 ソタイン村のパンは普通のパン屋で売っているパンとは全く訳が違っていたのだった。パン焼き釜は村の共有施設らしく、村の女性たちが交代で田舎パンを焼いていたのだった。前日の夕方にパン種の仕込みはすると思うのだが、石窯は交代制で火の番をしているのだろう。村の女性達に必死で頼み込んで、今後も定期的に銅貨5枚で籠に一杯のパンを分けてもらえるよう交渉をしたのだった。

 牛乳屋さんは個人商店なので、朝早くから開いていたし、こちらは何の問題も無かった。牛乳を入れる容器を持っていないので、雑貨店で小さな牛乳缶を銅貨5枚で購入した。少々高いと思ったが、使い捨て容器ではないので仕方ないと思ったのだ。搾りたての牛乳は小さな牛乳缶に入れてもらって銅貨1枚だったのでかなり良心的な値段だと思った。

 食料品店で、新鮮な卵と野菜、チーズを購入したので、朝食はオッケーだろう。ヒロシは、ステータス欄に「収納」と書かれていた事を思い出したので、購入した食材を一旦収納したのだった。

 ソタイン村は本当に何もない村だと思った。人口は3000人程度だと思うが、大きな街から余りにも離れすぎていた。この先にも小さな里が幾つも有るそうだが、人と人の交流は余り無いように感じたのだ。

 村では唯一、ギルドの食堂が酒場を兼ねていて、酒類の提供がされていたのだった。ギルドの食堂だけが村人たちのコミュニケーションの場になっていると容易に想像がつくのだった。

 家に帰る道すがら、今日と明日は市場マルシェが立つようなので二人で行ってみようと思った。今後は村人と同じような服を着ていたほうが怪しまれないと思ったからだ。

 マルシェは村の広場で開かれていた。まだ、準備中らしく人の出入りもまばらだった。
 多くの商人たちはオカロダ町から来ていたが、中には遠くキント市から来ている商人もいるとの事だった。
 ソタイン村から、オカロダ町に行くには乗り合い馬車で3時間ほどで行けるらしい。そこで馬車を乗り換えキント市に行くのに、5時間かかるそうだ。

 午前の鐘が鳴ったのでマルシェは村人で溢れかえっていた。ヒロシとミサエさんは中古衣料店のテントで、村人の服を物色していた。ミサエさんの服は地味な灰色の服を購入した。ヒロシは灰色のシャツと黒のズボンに黒の薄いベストの組み合わせだ。

 お昼前になったので、家に戻ることにした。野菜サラダとパンを食べながら、今後の生活について二人で話し合った。

二人で意見を出し合いながら、『自給自足の生活になる』ので家の裏の空き地に薬師としてハーブ園を作ってみようと言うことで二人の意見はまとまった。

「村の生活に慣れるまでは様子を見ようよ」
 全く仕事をしない訳では無い。目的が決まるまで二人で行動は控えようと決めたのだ。

「分からない事は神様に聞く」
神様にこれからの目的を教えてもらえるかも知れないので分からない事は積極的に神様に聞く事にした。

 ◇ ◇ ◇ ◇

 昼食後、ヒロシとミサエさんは家の裏の空き地に二人で立っていた。ヒロシは「畑になあれ」って、心で念じてみたが何も起こらなかった。

「ミサエさんはどう?」
「ヒール」……ミサエさんの体が光るだけで畑は何も変化がなかった。

 ヒロシは頭の中でトラクターが畑を耕しているイメージーをしてみた。目を瞑って頭の中でトラクターのエンジン音がグゴーン、グワーンって、何度も何度も響いていた。畑の大きさは、最初は10メートル四方でいいだろう。

「ヒロシさん、畑よ、畑が出来たのよ」
「うわぉ~、本当に出来た」

「ヒロシさん、良かったね」
 キッチンに戻って、ミサエさんの唇に優しく口付けをしていたときだった。

「ミサエさん、ハーブって育てるのって難しかったよね?」
「直ぐ枯れるし……テヘ♡♡♡」

 ミサエさんは直ぐに雑貨店で購入したグリモワールを開いたが、薬草ハーブの育て方は書いてなかったのだ。

「ミサエさん、焦らずのんびり暮らしましょう」

 午後の鐘が鳴った

「夕食の準備をしようか?」

「ミサエさん、お肉はどう?」
「ええ、食品店に行ってみましょうよ」

 
 食品店には肉が売られてはいたが、冷蔵庫が無いので長期保存は出来ない。当然、消費する分だけ店で捌かれるのだった。もっとも、狩人になって、自分で獲物を狩ってくる手も有るが、村で見かけるのは牛と豚と鶏だったのだ。

 最悪の場合は、毎日卵焼きでも良いのだが、じゃがいも、人参、玉ねぎを多めに買って、鶏肉が手に入ったので1羽購入した。二人では多すぎるが、収納しておけば腐ることは無いはずだ。

 鶏肉の味付けは塩だけだったが、朝購入したチーズを溶かしたら、いい塩梅に鶏肉が焼けたのだった。付け合せは、人参、玉ねぎだ。田舎パンを薄くスライスして食べた。

 風呂は前日に具現化で作ってはみたが、今風のユニットバスを作る事はヒロシにはレベルが高すぎて無理だった。

 多分、一般の人達は風呂には入らないし、桶に水を汲んで浴びる程度だと二人で想像したのだった。

 ついでにトイレ事情も書くと、シャワー付き水洗トイレはレベルが高すぎてヒロシでは具現化が無理だった。洋式トイレを具現化して、既存の木箱トイレと置き換える事でミサエさんに許してもらったのだった。

「ヒロシさん、神様に快適に暮らす方法を聞いてみない?」
「うん、でも教えてもらえるかなぁ?」
「そうねぇ~」

(話終わり)
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