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第1章
1-2 朝目覚めたら
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朝目覚めたら、見知らぬベッドで目を覚ました。
なぜか、久しぶりに愚息が異常に元気になって、体が軽く感じる。自慢じゃないが、還暦を過ぎても愚息には自信があったのだが、今朝の立ち上がりは異常に張りがあった。
「俺って、なんか変じゃない?」
自分に問いかけても答えてはくれない。寝室には鏡がないから、状況判断ができないが、愚息の反応からすると、どうやら自分の体が若返ったような気がしてきた。
「もしかして、これが異世界転生ってやつなのか?」
昨夜、生まれ変わるなら『帝王』になるだの、『オジサンが聖女だの』と、バカなことをつぶやきながら寝たが、それが転生に関係しているかは今のところ不明だ。
部屋の窓を開けて外を見ると、中世風の農村が広がっていた。一人で異世界に来てしまったなら、妻が心配しているだろうが、その考えは杞憂に終わった。服を着替え、階段を下りてキッチンに向かうと、メイド服姿の若い女性が忙しそうに魔導コンロでフライパンを使ってハムエッグを焼いていた。
「おはよう」
お互いに朝の挨拶を交わした瞬間、二人揃って「え~~~!!」と声をあげた。
この家には鏡がないので、自分がどんな姿になったのか分からなかった。お互いに顔を合わせるまで、自分が若返ったことに気づかなかった。
俺の服装は、いわゆる異世界の冒険者っぽい服装で、妻はメイド服を着ていた。なぜメイド服を着ているのかは分からないが、どうやら俺の好みに合わせてくれたのかもしれない。
木製のテーブルに座り、硬い田舎パンをかじりながら、ライトノベルを読んだことがない妻に、異世界の説明をしていた。
「普通なら、異世界に転生する前に神様が現れて、これから行く異世界のことや特殊能力について説明してくれるのが定番だけど」
「ねぇ、貴男、私たち二人とも死んでしまったの?」
「いや、死んだ覚えはないけどね~」
心配そうに聞いてくる妻に、二人とも死んだ記憶はないので、転生の理由が分からないままだった。
昨夜の出来事を思い出しながら…
「そう言えば、昨夜は違うドラッグストアで買い物してたよね」
「そう、そうだったわ」
「貴男が化粧品が高いって文句言ってたわね」
「あ!!それかも?」
「それって、何のことなの?」
アレ・ソレを言う癖は、妻の体が若返っても治っていないのかと少し残念に思ったが…
「つまりね、新しく買った化粧品が原因かもって思ったのよ」
実に妻らしい解釈だった。
「俺も寝る前に生まれ変わるなら帝王になるだの、オジサンが聖女だの訳の分からないことをつぶやいて寝たけど」
「帝王に聖女って、何か意味あるの?」
「俺の願望だったけど」
「ねぇ、コーヒーって、あるの?」と妻に言ったら、出てきたのは薬草茶だった。
「ポットには何が入ってるの?」
妻に聞いても答えてくれなかった。予めティーポットに入れて用意されていたらしい。そういえば、朝食で食べたハムエッグもフライパンと生卵とスライスしたハムが置いてあった。カップに注がれた薬草茶を二人でいただくことにした。味は、何とも形容しがたかったが、生姜風味でジャスミン茶の香りが優しく広がっていた。お茶が甘いので、少量の蜂蜜が入っているような感じがした。
なぜか妻の息づかいが少し荒くなり、トロンとした目でしきりに俺を見つめていた。そのうち、何十年ぶりに妻が愚息をしきりに触りだした。俺の愚息は先ほどから息を吹き返して、朝立ちマックスになっていたのだ。
ここから先は、お楽しみの『おせっせ』タイムになるわけだ。
自慢じゃないけど、俺は昔から早打ちマックだった。早漏が恥ずかしいことだとは思っていない。大事なのは、パートナーを満足させて喜ばせることだと思っていた。妻をお姫抱っこで抱え、二階の寝室に向かう。ベッドに入って愛を交わし始めると、しばらくすると、頭の中に別の女性の喘ぎ声がはっきりと聞こえてきた。
「えぇっ~」
トロンとしていた妻が急にビクッと飛び起き、正座をして周りをキョロキョロと見ている。
妻が離れたので、俺もベッドの上にあぐらをかいたままだが、まだ離れたくないので手をつないだままでいた。
「信心深き清き者たちよ」
頭の中で男女の声が神々しく、綺麗にハモって聞こえてきた。
光り輝くシルエットで、男と女の営みが見えているような感じだった。
「我らはこの世界の愛の営みを統べるプリアーポスとボナデアなり。この世界の男女の愛の営みが我らの糧となっておるのじゃ」
「見てのとおり、汝らの営みが我らに還流され、我らも先程から一つに溶け合って楽しんでおったところじゃ」
厳かなプリアーポス様とボナデア様の声が綺麗にハモりながら頭の中で響いていた。
「汝らは名前を忘れておるので、先に『ステータス』と唱えるのじゃ」
「ステータス」
目の前に小さな画面が現れ、二人のステータスが表示された。
【名前】ヒロシ・ミラタ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】帝王
【スキル】
プリアーポス神の加護
具現化 転移
【LV】5
【MP】10000
【名前】ミサエ・ミラタ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】聖女
【スキル】
ボナデア神の加護
製薬 回復
【LV】5
【MP】10000
「汝らはこの世界の代表に選ばれし者として、我らがこの世界に精神体のコピーを移転させ、この世界で肉体を与えたのじゃ。心配せずとも、元の世界の神との約束で肉体と精神体は生きておるのじゃ」
プリアーポス様とボナデア様は、俺たちが異世界に転生した経緯を簡単に説明してくれた。
「ミサエさん、ステータスって、こっちの定番だよね」
ヒロシはステータス表示のことをミサエに説明したが、自分の名前がアニメのお父さんと同じ「ヒロシ」だったことに驚いた。
ミサエもステータスを表示すると、アニメのお母さんと同じ名前の「ミサエ」だった。
「あの~、神様~、もう少しいい名前がなかったんですか~?」
「読者にわかりやすい名前であるから文句を言うでないのじゃ」
神様にピシャっと言われたので、名前には素直に従うことにした。
「こちらの世界でチートなスキルとかは初めから授けていただけるのでしょうか?」
最近、異世界転生ものを読んでいたヒロシは、神様たちに聞いてみた。
「特殊能力(チート)の付与は、我らの神託(ミッション)達成と、汝らの愛の営みが加味されて付与されるのである」
プリアーポス様からピシャリと言われたので、二人でこれから神託を頑張って達成していこうと思った。
「ヒロシさん、『帝王』って、何の帝王なの?」
「ミサエさん、帝王としか書いてないよ」
称号欄には、予想通り「帝王」としか書かれていなかった。
「ミサエさんは称号欄に何て書いてあるの?」
「聖女になっているのよ」
「はぁ~、やっぱりなぁ」
「年齢が20歳になってラッキー」
ミサエさんは若返ったので、妙にルンルンとした気分だった。
(話終わり)
なぜか、久しぶりに愚息が異常に元気になって、体が軽く感じる。自慢じゃないが、還暦を過ぎても愚息には自信があったのだが、今朝の立ち上がりは異常に張りがあった。
「俺って、なんか変じゃない?」
自分に問いかけても答えてはくれない。寝室には鏡がないから、状況判断ができないが、愚息の反応からすると、どうやら自分の体が若返ったような気がしてきた。
「もしかして、これが異世界転生ってやつなのか?」
昨夜、生まれ変わるなら『帝王』になるだの、『オジサンが聖女だの』と、バカなことをつぶやきながら寝たが、それが転生に関係しているかは今のところ不明だ。
部屋の窓を開けて外を見ると、中世風の農村が広がっていた。一人で異世界に来てしまったなら、妻が心配しているだろうが、その考えは杞憂に終わった。服を着替え、階段を下りてキッチンに向かうと、メイド服姿の若い女性が忙しそうに魔導コンロでフライパンを使ってハムエッグを焼いていた。
「おはよう」
お互いに朝の挨拶を交わした瞬間、二人揃って「え~~~!!」と声をあげた。
この家には鏡がないので、自分がどんな姿になったのか分からなかった。お互いに顔を合わせるまで、自分が若返ったことに気づかなかった。
俺の服装は、いわゆる異世界の冒険者っぽい服装で、妻はメイド服を着ていた。なぜメイド服を着ているのかは分からないが、どうやら俺の好みに合わせてくれたのかもしれない。
木製のテーブルに座り、硬い田舎パンをかじりながら、ライトノベルを読んだことがない妻に、異世界の説明をしていた。
「普通なら、異世界に転生する前に神様が現れて、これから行く異世界のことや特殊能力について説明してくれるのが定番だけど」
「ねぇ、貴男、私たち二人とも死んでしまったの?」
「いや、死んだ覚えはないけどね~」
心配そうに聞いてくる妻に、二人とも死んだ記憶はないので、転生の理由が分からないままだった。
昨夜の出来事を思い出しながら…
「そう言えば、昨夜は違うドラッグストアで買い物してたよね」
「そう、そうだったわ」
「貴男が化粧品が高いって文句言ってたわね」
「あ!!それかも?」
「それって、何のことなの?」
アレ・ソレを言う癖は、妻の体が若返っても治っていないのかと少し残念に思ったが…
「つまりね、新しく買った化粧品が原因かもって思ったのよ」
実に妻らしい解釈だった。
「俺も寝る前に生まれ変わるなら帝王になるだの、オジサンが聖女だの訳の分からないことをつぶやいて寝たけど」
「帝王に聖女って、何か意味あるの?」
「俺の願望だったけど」
「ねぇ、コーヒーって、あるの?」と妻に言ったら、出てきたのは薬草茶だった。
「ポットには何が入ってるの?」
妻に聞いても答えてくれなかった。予めティーポットに入れて用意されていたらしい。そういえば、朝食で食べたハムエッグもフライパンと生卵とスライスしたハムが置いてあった。カップに注がれた薬草茶を二人でいただくことにした。味は、何とも形容しがたかったが、生姜風味でジャスミン茶の香りが優しく広がっていた。お茶が甘いので、少量の蜂蜜が入っているような感じがした。
なぜか妻の息づかいが少し荒くなり、トロンとした目でしきりに俺を見つめていた。そのうち、何十年ぶりに妻が愚息をしきりに触りだした。俺の愚息は先ほどから息を吹き返して、朝立ちマックスになっていたのだ。
ここから先は、お楽しみの『おせっせ』タイムになるわけだ。
自慢じゃないけど、俺は昔から早打ちマックだった。早漏が恥ずかしいことだとは思っていない。大事なのは、パートナーを満足させて喜ばせることだと思っていた。妻をお姫抱っこで抱え、二階の寝室に向かう。ベッドに入って愛を交わし始めると、しばらくすると、頭の中に別の女性の喘ぎ声がはっきりと聞こえてきた。
「えぇっ~」
トロンとしていた妻が急にビクッと飛び起き、正座をして周りをキョロキョロと見ている。
妻が離れたので、俺もベッドの上にあぐらをかいたままだが、まだ離れたくないので手をつないだままでいた。
「信心深き清き者たちよ」
頭の中で男女の声が神々しく、綺麗にハモって聞こえてきた。
光り輝くシルエットで、男と女の営みが見えているような感じだった。
「我らはこの世界の愛の営みを統べるプリアーポスとボナデアなり。この世界の男女の愛の営みが我らの糧となっておるのじゃ」
「見てのとおり、汝らの営みが我らに還流され、我らも先程から一つに溶け合って楽しんでおったところじゃ」
厳かなプリアーポス様とボナデア様の声が綺麗にハモりながら頭の中で響いていた。
「汝らは名前を忘れておるので、先に『ステータス』と唱えるのじゃ」
「ステータス」
目の前に小さな画面が現れ、二人のステータスが表示された。
【名前】ヒロシ・ミラタ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】帝王
【スキル】
プリアーポス神の加護
具現化 転移
【LV】5
【MP】10000
【名前】ミサエ・ミラタ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】聖女
【スキル】
ボナデア神の加護
製薬 回復
【LV】5
【MP】10000
「汝らはこの世界の代表に選ばれし者として、我らがこの世界に精神体のコピーを移転させ、この世界で肉体を与えたのじゃ。心配せずとも、元の世界の神との約束で肉体と精神体は生きておるのじゃ」
プリアーポス様とボナデア様は、俺たちが異世界に転生した経緯を簡単に説明してくれた。
「ミサエさん、ステータスって、こっちの定番だよね」
ヒロシはステータス表示のことをミサエに説明したが、自分の名前がアニメのお父さんと同じ「ヒロシ」だったことに驚いた。
ミサエもステータスを表示すると、アニメのお母さんと同じ名前の「ミサエ」だった。
「あの~、神様~、もう少しいい名前がなかったんですか~?」
「読者にわかりやすい名前であるから文句を言うでないのじゃ」
神様にピシャっと言われたので、名前には素直に従うことにした。
「こちらの世界でチートなスキルとかは初めから授けていただけるのでしょうか?」
最近、異世界転生ものを読んでいたヒロシは、神様たちに聞いてみた。
「特殊能力(チート)の付与は、我らの神託(ミッション)達成と、汝らの愛の営みが加味されて付与されるのである」
プリアーポス様からピシャリと言われたので、二人でこれから神託を頑張って達成していこうと思った。
「ヒロシさん、『帝王』って、何の帝王なの?」
「ミサエさん、帝王としか書いてないよ」
称号欄には、予想通り「帝王」としか書かれていなかった。
「ミサエさんは称号欄に何て書いてあるの?」
「聖女になっているのよ」
「はぁ~、やっぱりなぁ」
「年齢が20歳になってラッキー」
ミサエさんは若返ったので、妙にルンルンとした気分だった。
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