気が付いたら偽勇者と偽聖女になっていた リカコとマリオと

にしのみつてる

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第6章

6-3 ようやく式典が終わった

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 3日後、モスコのクリミリ宮殿では厳かに式典が始まっていた。

「マリオ・ナミキ、リカコ・ナミキ、両名は前へ」
「ヒカル・ネモト、ミチル・ネモト、両名は前へ」

 マリオとリカコ、ヒカルとミチルの4人は前日のリハーサルのとおり皇帝の前に進み出て手前でひざまずいた。

「一同、面をあげよ」
 式事長の声がクリミリ宮殿に響いた。フョードル三世は優しい笑顔で4人を迎えた。

「マリオ・ナミキ、リカコ・ナミキ、此度の働きはロキシア国全体が豊かになり大義であった」
「マリオには魔導元帥の位を授ける」
「謹んでお受けいたします」

「ヒカル・ネモト、ミチル・ネモト、此度の働きはロキシア全体が豊かになり大義であった」
「ヒカルには魔導元帥の位を授ける」
「謹んでお受けいたします」


「続いて、アレクサンドル、イワノフ、両名は前へ」

「アレクサンドル・ドミトリエフ、此度の働きはロキシア国に大いなる貢献し大義であった」
「アレクサンドルには名誉ギルドマスターの位を授ける」
「謹んでお受けいたします」

「イワノフ・スキルダ、此度の働きはロキシア国に大いなる貢献し大義であった」
「イワノフには名誉ギルドマスターの位を授ける」
「謹んでお受けいたします」

「ユーリ・ミナコフは前へ」

「ユーリ・ミナコフ、此度の働きはロキシア国に大いなる貢献し大義であった」
「ユーリには特別ギルドマスターの位を授ける」
「謹んでお受けいたします」

「ゲラーシー・サルニコフは前へ」
「ゲラーシー・サルニコフ、此度の働きはロキシア国教育に大いなる発展に貢献し大義であった」
「ゲラーシーには名誉学園長の位を授ける」
「謹んでお受けいたします」

「以上で式典は終了する」
式事長が式典終了を告げたので招待者はクリミリ宮殿の食堂に移動したのだった。

クリミリ宮殿の大食堂はパーティ会場になっておりテーブルには色々なロキシア料理が並べられビュッフェ形式で自由に食べることが出来た。モスコの魔法学園の代表生徒と職員、ゲヌマヌイの冒険者ギルド職員、カバロスクの冒険者ギルド、マガサバの冒険者ギルド職員たちが特別招待されていた。

「マリオ、オクローシカは飲んだか?」

「イワノフさん、オクローシカってどれですか?」
「この冷たい香草スープのことだ」
「さっぱりしていて美味しいですね」

「リカコもどうぞ」
「ありがとうございます」

「リカコさん、このサラダさっぱりしていて美味しいです」
「ええ、いただくわ」

「ミチルたちはオリヴィエサラダは初めてね。マヨネーズを使った角切りのサラダのことよ」
「レジーナさん、マヨネーズがあるのですか?」

「ええ、普通に商店で手に入るわよ」

「リカコさん、だから懐かしいサラダの味だったのですね」
「ミチル、そうね」

「マリオさん、このカツ美味しいです」
「ヒカル、そうだな」

「マリオ、それはポジャルスキーだ」
「ゲラーシーさん、ポジャルスキーはチーズが入っているのですね」

「そうだ、俺の故郷の町が発祥地だ」
「そうなんですか?」

「マリオ、リカコ、ヒカル、ミチル、ロキシア料理は田舎料理として100年前までは見下されていたのよ」
「アナスタシアさん、どうしてですか?」

「それは、ロキシア国の貴族が高い給料を払ってガリア国から料理人を雇っていたからよ」
「初代フョードル様が農民奴隷制度を廃止して貴族を追い出してしてからはロキシア料理が公式な場所で提供されるようになったのよ」

「マリオさん、高校の世界史で習ったのと同じです」

「ヒカルもミチルも世界史を習ったのか?」
「はい」

「リカコは知っていたか?」
「私は私立だったから世界史は習わなかったわ」
「俺もだ」

「アレクサンドルさん、追い出された貴族たちはどうなったのですか?」
「多くはナトホカからコリレオ国に一時的に移住したと言われていたな」
「その後はどうなったのですか?」

「ガレオン船でイポニアに渡って貿易商として成功して再び貴族になっているらしいが、あまり表に出てこないか全く情報が伝わってこないのだよ」

「そうなんですね」

(マリオさん、『農奴解放令』はロキシア国のフョードル一世が行った改革です)
(多くの農民奴隷は追放された貴族と一緒にイポニアに渡っています。ですからロキシア国の人口は一時的に二千万人ほどコリレオ国とイポニアに農民と貴族が流出したのです)

(そうだったんだ)
 マリオはウリエルの解説でタートル市を追い出された訳が何となく繋がった感じがしたが、イポニアの領主全てがロキシアの元貴族なのかは確信が持てなかった。

「マリオ、どうした?飲みすぎたか?」
「いえ、ちょっと考え事をしていたのです」

「マリオ、リカコ、ヒカル、ミチル、明日はクリミリ宮殿の大聖堂を案内するよ」


(マリオさん、状態無効化と解毒を発動しましたのでウォッカでも酔いません)
(ウリエル、ありがとう、酔いが覚めていったよ)

 ヒカルとミチルもウォッカベースのカクテルで酔いつぶれそうになっていたが、ウリエルが瞬時に状態無効化と解毒を発動したので誰一人として倒れることは無かった。


(話終わり)
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