気が付いたら偽勇者と偽聖女になっていた リカコとマリオと

にしのみつてる

文字の大きさ
上 下
13 / 63
第2章

2-2 エラフィ鍋とキマイラ退治

しおりを挟む
「まもなくエラポリ市に着陸します」
「ウリエル、山の麓で降ろしてくれ」

「マリオさん、了解しました。結界は常時発動していますが、着陸後は直ぐにキャンピングカーを収納してして下さい」

「ところで、俺たちはエラポリ市で何をするんだろうね。神様から具体的な神託も出ていないし」
「そうよ、神様は『我らに知らせるのじゃ』だけだったわよ」

「こういう時は神様に直接聞いてみようよ」

「バッカス様、アリアドネ様、聞こえていますか?」
「マリオとリカコか、見えておるのじゃ」
「えっ、見えているって、タブレットで見ていらっしゃるのですか?」

「そうじゃ、タブレットはゼウス様とヘーラ様の許可が出たので、今回のバージョンアップで神界と常時通信が出来るようにテレビ電話の機能が付いたのじゃ」

「では、エラポリ市での具体的な活動をお教え下さい」

「1つ目は神殿の有無を確かめて欲しかったのじゃ」
「2つ目は勇者、聖女の有無じゃ」

「2つ共問題が無ければ、ここに我らの分院を建てるのじゃが、オリンポスの神々が他神の領地に足を踏み入れることは神界の規則で固く禁じられておるので汝らにお願いしたのじゃ」

「それから、ヘーラ様の強い希望でスイーツを探すのも今回の大事な仕事なので必ず報告するのじゃ」
「分かりました。スイーツ探しはリカコが責任を持って担当いたします」

 こうして神様との通信が終わったのでマリオとリカコの二人はエラポリ市の山の麓に降り立っていた。二人は市内に続く大通りを歩いていたが、観光客も多かったがエラポリ市は他の街と少し様子が違っていたのだった。

「マリオさん鹿よ、鹿」
 エラポリ市はエラフィが聖獣として市民から大切にされていて、普通に市民と一緒に暮らしていたのだった。
「マリオさん、小鹿って可愛いよね」

「マリオさん、お味噌と醤油があるわ」
「うん、そうだね」

「あと、お米も売ってるね、鶏肉と卵も買っていこうよ」
「そうだね」

 今日のリカコは妙にはしゃいでいるとマリオは思った。大通りの食料品店に入って自分達が知っている食材を買い込んだついでに店の主人にエラフィのいわれを聞いてみた。

 エラポリ市の言われはエルフの祖神が2000年前に白いエラフィに乗って降臨されたが、国譲りの戦いでガイアに負けてしまったそうでエルフの祖神は東方の国に隠遁されたと教えてくれた。この時にエルフの祖神は味噌、醤油の作り方を村人たちに伝えたのでエラポリ市の味噌と醤油作りが始まったのだと店の主人は自慢して教えてくれた。

「じゃぁ、エラポリ市には教会は無いのでしょうか?」
「昔は有ったかも知れないが、ご覧のように鹿が有名なだけだよ」

「リカコ、冒険者ギルドに行って他にも話を聞いてみようよ」
「ええ、そうしましょう」

「エラポリ市の冒険者ギルドにようこそ」
「ご用件は何でしょうか?」

「私どもはナニサカ市から来たのですが、こちらでも仕事とか出来るのでしょうか?」
「はい、仕事の依頼は多数出ておりますが、その前にお二人のステータスを拝見させていただいてもよろしでしょうか?」

「ええ、構いませんよ」
「それでは、お二人共、手を魔力測定盤の上に乗せていただけますか」

◇ ◇ ◇ ◇

【名前】マリオ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】勇者
【スキル】
 秘匿
【LV】45
【MP】****

【名前】リカコ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】聖女
【スキル】
 秘匿
【LV】45
【MP】****

◇ ◇ ◇ ◇

「ギルマス! ナニサカ市の勇者様と聖女様が来られました」
「おお、そうか、じゃぁ、あの案件がお願いできるな」
「ええ、そうですね」

 ギルドマスターの話によると、山村集落にキマイラが住み着いて村人たちが困っているとの事だった。集落の名前はオラチョリオ村と教えてもらった。エラポリ市からオラチョリオ村に行くにはバラカシ町まで乗り合い馬車で半日かけて南下してそこから馬車を乗り換えて半日との事だった。

「分かりました。今から行ってきます」
「マリオさん、難しそうな仕事を引き受けたけど、本当に大丈夫なの?」
「うん、キャンピングカーで飛んで行って、さっさと済ませようよ」

 マリオは森の中でキャンピングカーを出して、二人は乗り込んだ。

「ウリエル、オラチョリオ村までお願いします」
「了解しました。オラチョリオ村まではおよそ10分の飛行です」

 オラチョリオ村は山間に出来た小さな集落だったので、キャンピングカーで走行するには道が狭くて不都合だった。

「ウリエル、小さな乗り物は作れないかなぁ?」
「それでは、世界辞書の中に四輪バギーのお手本が有りますので、今から作りましょう」

 マリオはリカコにペニスを握ってもらい、タブレットの画面を見ながら創造で四輪バギー作った。出来上がった四輪バギーはタイヤが付いていないので浮上して走行するとウリエルが教えてくれた。

「リカコしっかりつかまってね」
「ええ、大丈夫よ」

 マリオは四輪バギーで村の中を闇雲に走り回るよりも、ウリエルの探索機能を使って魔物がいる場所を特定して魔物が潜んでいる洞窟は2箇所に絞られたのだった。

「よし、こっちにしようよ」
バギーは洞窟の中も浮上したまま走れるので、マリオたちの移動速度は格段に向上していた。

「マリオさん、前方に赤い点、停まって」
 ショットガンの暗視スコープを覗くと、洞窟の奥ではキマイラが待ち構えていた。

「サンダーボルト」
 ズダーン、キマイラは雷撃に当たって死んだ。

「リカコ、まだ光っている?」
「いいえ、大丈夫よ」
 マリオとリカコは恐る恐る、洞窟の奥に行き、キマイラを3体を収納した。

「もう一つの洞窟も退治しないといけないね」
「ええ、そうしましょう」

 もう一つの洞窟にはキマイラはいなかったが、代わりにオークが20体ほどいた。ショットガンでオークは全て倒してきたので収納にしまった。

「ウリエル、他に魔物は居るかい?」
「今の所は気配はありません」

 マリオは転移門を出して、冒険者ギルドの裏に転移した。

 受付にってオラチョリオ村の魔物を倒した事を伝えて、倉庫へ案内されたのだった。

「お前ら、もう帰ってきたのか?」
「ええ、転移魔法を使ったからです」

「はぁ?」
「お前たち、失われた古代魔法を使えるのか?」

「はい、神様に許可をもらったので転移門は自分たちで作ったのです」

 マリオは収納からキマイラを3体とオークが20体を収納から出してきた。

「こんな化け物が3体もいたのか?」
「それと、オークの20体だ」

「魔物は全てうちで買い取るが、別で報奨金が出ると思うので1週間後に来てくれ」
「お前らは伊達に勇者と聖女を名乗っている訳でも無いし、実力は本物のようだな」
「ありがとう」

「マスター、勇者と聖女は、エラポリ市にいるのですか?」
「いないよ、Cランク冒険者のカップルは、『自称、カズラダンジョンの勇者と聖女』と名乗ってダンジョン内で英雄気取りをしている輩だよ」

「分かりました。実はエラポリ市の勇者と聖女を調べるようにバッカス様とアリアドネ様から神託が下りていたのです」

「そうだったのか、このエラポリ市には勇者も聖女は一人もいないよ」
「Cランク冒険者のグループが数組いるだけだ」

「それから教会は有るのでしょうか?」
「2000年前にはエルフの祖神を祀る建物が有ったそうだが、今は無いな」

「ありがとうございます」
こうして、オラチョリオ村の魔物退治は余分だったが、2つの神託は終わったので、残るはスイーツ探しだけだった。


「マリオさん、エラフィ鍋って看板が出ているよ」
「本当だね、お鍋に鹿の絵が描いてあるね」

 二人はエラフィ鍋の店に入った。元はエルフ鍋と言っていたが、豆腐ときのこを牛乳と味噌で味付けした鍋の事だったが、商売上手な店主が名称を変更して人気になったと教えてもらった。

「マリオさん、エラフィ鍋って美味しいね」
「うん、美味しいです」


「デザートのきな粉団子です」
店員さんは、食事の後で、小皿に盛った きな粉団子を出してくれた。


「素朴な味でほっこり美味しいと思うのよ」
「リカコ、『ほっこり』って、何なの」

「ゆったりとか、温かい感じだと思うわ」
「ふ~ん、癒やされるって事と同じだね」

 マリオとリカコはお茶を頂いで午後の一時を楽しんだのだった。

(話終わり)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

特技は有効利用しよう。

庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。 …………。 どうしてくれよう……。 婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。 この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】どうやら魔森に捨てられていた忌子は聖女だったようです

山葵
ファンタジー
昔、双子は不吉と言われ後に産まれた者は捨てられたり、殺されたり、こっそりと里子に出されていた。 今は、その考えも消えつつある。 けれど貴族の中には昔の迷信に捕らわれ、未だに双子は家系を滅ぼす忌子と信じる者もいる。 今年、ダーウィン侯爵家に双子が産まれた。 ダーウィン侯爵家は迷信を信じ、後から産まれたばかりの子を馭者に指示し魔森へと捨てた。

処理中です...