気が付いたら偽勇者と偽聖女になっていた リカコとマリオと

にしのみつてる

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第1章

1-2 初めての薬草採取

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「お二人に神の御加護がありますように」

 ナニサカ市の教会で司祭さんから教わり、マリオとリカコの二人は大通りを歩いて冒険者ギルドの扉をあけた。
 昼の鐘の後だったので冒険者たちは出かけているらしく、建物内は閑散としていた……

「こんにちは、今日はどのようなご用件でしょうか?」

「 あのー、教会の司祭様に聞いて冒険者登録をしたいのですが」
「では、申込み用紙にお名前をご記入下さい、分からない箇所は空白で結構です」
 
 受付のお姉さんは二人の顔と申込用紙に書いた名前を見ながら説明をしてくれた。

「お名前は、マリオ・ナミキ様ですね」
「種族は人族で問題ないし、年齢は20歳ですね」

「私達は遠い国から出てきたばかりで、右も左も分からない事ばかりなのです」
「教会の司祭様に教えていただき、こちらの冒険者ギルド様で仕事を斡旋していただけないか聞きに来たのです」

「そうでしたか……」
「奥様のお名前は、リカコ・ナミキ様ですね」
「種族は人族で問題ないし、年齢は20歳ですね」

 マリオとリカコは教会のときと同じように遠い国から出てきた村人の設定にした。

「ナニサカ市の冒険者ギルドでは現在、鉱石採掘と薬草採取の依頼は常設依頼として年中募集をしております。他にぶどう園の仕事、ワイン醸造所の仕事なども斡旋しております」

「お二人は最初の依頼として薬草採取の依頼から始てみませんか?」
「薬草採取はコツを覚えれば何方でも出来る依頼です」

「薬草採取の仕事をやらせて下さい」

「では、冒険者初級講習がありますので、無料ですので今から受講されませんか?」
「冒険者初級講習って何でしょうか?」

「ハイ、冒険者として生活していく上での初歩的な講習になります。ナニサカ市では強い魔物は一切出ませんが、初心者の内はダンジョンに潜らずに屋外活動が中心になりますので野外での生活術が主な講習内容になります」
「講習料は無料ですので何方でも参加できます」

「わかりました よろしくお願いします」

 受付のお姉さんの説明が一通り終わったので二人は別館の教室に案内された。受講者はマリオとリカコの他に数組の少年と少女が座っていた。

「それでは冒険者初級講習を始めます」
「私は講師を務めるサーシャと申します」


 サーシャ先生の挨拶で授業が始まった。冒険者初級講習とは、この世界での一般的な生活やルールついての講義に始まって、冒険者のレベルに応じた依頼の受け方、屋外活動する上でのキャンプ方法のやり方、緊急時の怪我の対処方法や野生動物から身を守る方法までサバイバル術を教えてもらえた。

 それとこの世界では日々の生活も魔法が主になるので生活魔法の復習が繰り返し行われた。冒険者中級講習を受ければ攻撃魔法を教えてもらえるとの事だった。

 最後に狩猟用ナイフを使ったスライムとゴブリンの倒し方を教わり、冒険者初級講習は夕方に終了したのだった。

「では、これで冒険者初級講習を終了します。皆様、お疲れさまでした」
「サーシャ先生、ありがとうございました」

「マリオさん、仕事を受けるのは明日の朝からにして家に帰りましょうよ」
「そうだね、お腹も空いているし。帰りにお店で何か食べて帰ろうか」

「マリオさん、こっちの世界のお金って持っているの?」
「あっ、革袋が出てきた。リカコ、お金が入っているよ」

 二人は「オタク焼き」の店に入った。オタク焼きとは、お好み焼きの事だが、先の勇者と聖女が伝えたナニサカ市の名物だと教えてもらった。マリオはエールという、ビールに似た飲み物を注文したし、リカコはスパークリングワインを飲んでいた。腹も膨れたし、少し酒に酔ってしまったので二人で家に戻ってきた。

 マリオとリカコは濃厚な口付けを交わした後で、お互いの秘部を堪能していた。マリオの息子が爆発を起こしそうになり、リカコの蜜壺も既に洪水が起きていたので、二人で深く結合をしてそのまま頂点へと昇り詰めていたのだった。


 マリオとリカコの二人が転生して2日目、朝の鐘が鳴った……

 異世界についての何も予備知識が無いまま転生した二人だったが、無事に1日が過ぎていったのだった。

 まず、時間についてだが、この国の人達は鐘の音で生活していると昨日ギルドの初心者講習で教わった。
 朝の鐘、午前の鐘、昼の鐘、午後の鐘、夜の鐘、就寝の鐘と3時間おきに鐘が鳴らされるのだった。大まかな設定だが、時間に追われて生活する訳でもないので二人は馴染んでいくしかないと思った。

 マリオとリカコは朝から冒険者ギルドに行って、常設の薬草採取の依頼を二人で受けることにした。朝食を食べていないので、冒険者ギルド内に併設さている食堂で卵サンドを注文したのだった。

 この世界のお金は全て硬貨なので、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨の四種類があって、小鉄貨は10円、鉄貨は100円、銅貨が1000円、銀貨は10000円、金貨は100000円に相当すると二人で確信したのだった。

 常時依頼が出ている薬草採取の内容はヨモギに似たマグワートの採取だった。他にもクコの実に似たウルフベーリーの採取も常設依頼ではあったが市内から少し離れた場所だそうだ。

 マグワートが何に効くのか効能は教えてもらえなかったが、何かの薬の材料だろうと思った。マグワート10本で1束の買取価格は鉄貨1枚なので、元の世界の100円くらいの価値しか無いので随分と安い依頼だと思った。

 ナニサカ市の中心部には幾つもの運河が流れており、両岸は堤防が築かれていた。荷物を運搬する小型船がゆっくりと行き来していた。冒険者ギルドで教わったとおり、堤防にはマグワートが一面に自生していて直ぐに採取場所だと分かった。


「リカコ、もう一度ステータスを開いてみて」
「マリオさん、何でなの?」
「昨夜の”おせっせ”で神様からスキルをもらえたと思ったの」
「へえ、そうなのね」

◇ ◇ ◇ ◇

【名前】マリオ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】
【スキル】
 バッカス神の加護
 創作 収納 
【LV】5
【MP】5000

【名前】リカコ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】
【スキル】
 アリアドネ神の加護
 創薬 鑑定
【LV】5
【MP】5000

◇ ◇ ◇ ◇

「ほらね、『収納』が増えたよ」
「私も『鑑定』が増えているわ」

「そう思ったんだ、だって、マグワートの束って、あまりにも安いし一人ではほんの少しの束しか運べないものね」

「そうよね、だからマグワートの採取は人気が無いのね」
「うん、分かったわ」
 リカコは一人で納得していた。

「リカコ、試しに、その紫の花に向かって、『鑑定』って言ってみて」

「ええ、『鑑定』ね」
「鑑定」
--------------------------------------
シスル:紫色の花
解毒作用がある薬草
--------------------------------------
「マリオさん、『シスル』って薬草の名前が表示されているよ」
 シスルはアザミに似た花だった。リカコの鑑定で薬草と分かったので採取することにした。

「リカコ、『鑑定』って便利だね」
 マリオとリカコはまだ日の高いうちに、マグワートを100束、シスルを50束収穫したのだった。

 受付でマグワートの収穫が終わったことを告げて、収納から出したら、受付のお姉さんたちが驚いていた。ついでにシスルも収穫してきたので、こちらも買い取ってもらえた。

 シスルは1束が銀貨1枚なので、50束で金貨5枚になった……元の世界の価値で50万円くらいだろうと思ったが、実際はマリオたちが思っている価値よりも物価はもっと安かったのだった。

 マグワートは100束採取してきたので、こちらも銀貨1枚になった。
 受付で金貨5枚と銀貨1枚をもらって、二人はごきげんだったのだ。

 ギルドからの帰り道、頭の中で「ピコーン」と音がして、「『ステータス』と唱えるのじゃ」と神様の声が響いてきた。

◇ ◇ ◇ ◇

【名前】マリオ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】
【スキル】
 バッカス神の加護
 創作 収納 
【LV】6
【MP】6000


【名前】リカコ・ナミキ
【種族】人族
【年齢】20
【称号】
【スキル】
 アリアドネ神の加護
 創薬 鑑定
【LV】6
【MP】6000

◇ ◇ ◇ ◇

「リカコ、依頼が完了しても【LV】レベルが上がるみたいだよ」
「そうね、私のレベルも上がったわ」

「リカコ、明日も仕事を探そうか」
「ええ、そうしましょうよ」

 マリオとリカコが住んでいる家は通りに面して建てられていたので、かなり狭い家だった。同じような形の家が何軒も並んでいるのでアパートだと思ったのだった。当然だか風呂は贅沢品なのでどの家にも無かった。一般庶民は桶に水を汲んで体を拭くのが常識だった。通りに面して食べ物屋が並んでいるので、マリオとリカコは家の中で料理を作ることは無かった。

(話終わり)

--------------------------------------
この世界の通貨はこんな感じだった。

通貨単位 G《ギル》通貨は全世界共通
 
 小鉄貨    1G       10円
 鉄貨    10G      100円
 銅貨   100G     1000円
 銀貨  1000G    10000円
 金貨 10000G   100000円
白金貨 1000000G    1千万円

※ 通貨の価値は全作品をとおして同じとします

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