上 下
22 / 42
第2章

2-11 コーリ山のオウルベア

しおりを挟む
 ヒナノとユカは手際よく昼食の準備をしてくれた。オムレツを食べながらヒナノがヨウスケに聞いてきた。

「ヨウスケ、ゴーレムの改造はどうだったの?」
「成功です、モトヤさんが2体作ったので全部で4体になりました」
「そうなの、よかったわね」

「但し、ゴーレムがとっさの攻撃を受けた場合に不安が有るのも確かだな」
 モトヤはヨウスケが作ったゴーレムがとっさの攻撃を受けた場合に判断が出来ないことを見抜いていた。

「ザドキエル、ゴーレムの核に適した鉱山を教えてくれ」
「モトヤさん、それならばタルソス市のコーリ山に行きませんか?」

水晶ロッククリスタルでゴーレムの触媒を作るのです」
「ロッククリスタルを触媒にすればゴーレムに魔力が通りやすくなりますので防御力と攻撃力が上がります」

「魔法の杖と同じ原理だな」
「その通りです」

「モトヤさん、コーリ山までは65キロ8分で飛べます」
「それから、コーリ山からマブロス金山へは20キロ3分です」

「水晶の他に金山が有るのか?」
「はい、初代タルソス王が開発した金山です」

「ヒナノ、ヨウスケ、ユカ、タルソス市の冒険者ギルドでマブロス金山の情報を集めよう」
「はい」

「ザドキエル、タルソス市の冒険者ギルドに飛んでくれ」
「はい、47キロ6分です」

 キャンピングカーはタルソス市の城に近い空き地に着陸をした。モトヤは直ぐにキャンピングカーを収納にしまった。

「ヒナノ、ヨウスケ、ユカ、短剣型魔導銃を帯剣していこう」

 4人は魔導士と魔女の格好してギルドに入ろうとしたが、ギルド手前で数人のチンピラに絡まれたのだった。

「お前らは目障りだ。さっさと金と女を置いて行きやがれ」

 チンピラのモレーノは部下に目配せをしたので部下たちは一斉に長剣でモトヤたちに切り掛かってきた。

「サモンゴーレム」
 モトヤとヨウスケはゴーレムをそれぞれ召喚した。

「1号、2号、悪党をやっつけろ」
「3号、4号、悪党をやっつけろ」
 ガコーン、ガコーン、ゴーレムたちは拳で合図して、悪党の前で壁を作った。

「親分、ゴーレムなんて聞いていませんぜ」
「ゴーレムなんてコケ脅しに決まっているだろ。お前たちの長剣で魔法使いを叩き斬れ」
「女は後で楽しもうぜ」

「親分、助けて」
 ガゴーン、ガゴーン、ビッ、ビッ、ガゴーン、ガゴーン、ビッ、ビッ、ゴーレムの短剣型魔道銃が決まってモレーノの部下たちは全員が気を失っていた。


 4人の部下は全て気を失ったのでモレーノ一人だけになっていた。

「まだ歯向かうのか」
「ヨウスケ、撃て」
ビー、 ビーッ、ヨウスケが撃った強めの電撃が当たり、モレーノは死にはしなかったがモレーノは白目をむいて完全に気絶していた。

「バインド」
 モトヤが拘束魔法でモレーノと部下たちを縛り上げ、巡回中の騎士に渡した。

「ヨウスケ、ユカ、大丈夫か」
「ええ、何ともありません」
「ヒナノも大丈夫だな」

「いきなりチンピラに絡まれるとはついていなかったな」
「そうね、短剣型魔導銃も全く牽制になっていなかったわよ」

「モトヤ、ゴーレムを連れたままギルドの中に入りましょう」
「そうだな」
 4体のゴーレームを連れた魔女と魔導師が入って来たので冒険者たちは驚いて受付の前を空けた。

「お怪我は無かったでしょうか?」
「ここのギルドはまだ用心棒にチンピラを囲っているのか?」

「そんな事は絶対にありません、ギルドの前で冒険者が勝手に暴れただけです」
 受付嬢は必死に言い訳をしていたがモトヤたちは完全に無視をしていた。

「ジェシカちゃん、赤のリボンと青のリボンって、イチカ市ではかなり有名な赤の魔女と青の魔導師だぞ」
「イチカ市のダンジョン前でお尋ね者を一発で懲らしめたって話だぞ」

「アランさん、それは本当の話なの」
「従兄弟のマークから聞いた話だから本当だよ」

 アランの話を聞き、受付嬢のジェシカは態度を改めてモトヤたち4人に対して改めて丁寧な対応をした。

「赤の魔女様、青の魔導師様、とんだ失礼をしました」
「本日はどの様なご用件でしょうか?」

「鉱石採取の依頼がないか確認をしに来たのだ」
「それならば後ろの掲示板で依頼を選んでください」

「モトヤ、この依頼の事でしょ」
 『Bランク:コーリ山のロッククリスタル採取』ヒナノは依頼ボードに貼ってあった依頼書を風魔法で剥がしてモトヤに手渡した。

「では受付をさせていただきます、期限は10日間でロッククリスタルは2キロ以上を採取してください」
「ヒナノ、ヨウスケ、ユカ、行こうか」
「はい」

 コーリ山の近くまではキャンピングカーで飛べたが、最後は四輪バギーを作って移動することにした。ヒナノとユカは対アンデッドに備えてマンドラゴラポーションの在庫を確認してもらった。

「モトヤ、マンドラゴラポーションは大丈夫よ」
 キャンピングカーは市内を外れ、コーリ山への山道を走っていた。湖の近くで休憩をした。

「ヨウスケ、魔物の反応よ、止まって」

『ザドキエル、魔物の種類を教えてくれ」
「魔物はフォレストウルフの群れです、囲まれると厄介なので、ショットガンで倒しましょう」

「ヨウスケ、ショットガンの準備だ」
「はい」
 幸いにショットガンを撃つこと無くフォレストウルフの群れはモトヤ達から離れて行った。

「モトヤ、暗くなる前に今日はこの湖でキャンプにしましょうよ」
「そうだな、キャンピングカーを出して準備しよう」

 コーリ山近くの湖は静かだった。魔物の反応も無かったのでキャンプには最適の場所だった。

「モトヤさん、釣り竿を作りませんか?」
「そうだな」

 ヨウスケは具現化で釣り竿を2本作った。疑似餌ルアーを作り、モトヤに渡した。

「ユカ、リールをゆっくり巻いて魚を誘ってみて」

「キャッ、掛かった」
「ユカ、リールを巻き上げて」
 20センチほどの鱒に似たような魚が掛かった。

「ヒナノも投げてみろ」

「ええ」
「キャッ、掛かった」

 モトヤが取り込みを手伝ったので無事に取り込んだ。鱒に似た魚は二人で10匹ほど釣れた。

 ヨウスケがBBQコンロを用意して、ユカが鱒を捌いたのでシンプルに塩焼きにした。

「ヨウスケ、ユカ、鱒の塩焼きは美味しいな」
「そうですね、意外にいけますね」

 モトヤとヒナノはスパークリングワインを飲んでいたが、最近はヨウスケとユカもスパークリングワインが飲める様になっていた。

「ユカ、オーク肉はまだ有った?」
「ヒナノさん、パーべキューにしますか?」

「お願いするわ」
 ユカがオーク肉を串焼きにしてくれた。

◇ ◇ ◇ ◇

 翌朝……
 ピピピ、ピピピ、ピピピ、モトヤとヒナノの二人はタブレットのアラーム音で目覚めた。

「モトヤおはよう」
「ヒナノおはよう」
 二人は朝の口づけを交わすと身支度を整えた。

「モトヤさん、ヒナノさんおはようございます」
「ヨウスケ、ユカ、おはよう」

 ヒナノとユカはいつもの様に朝食の用意をしてくれた。

「モトヤさん、この先の移動はどうしますか?」

「他の冒険者がいると厄介だが、キャンピングカーで行けるとこまで行ってそれからは徒歩で移動だな」
「そうですね」

 ヨウスケは、ザドキエルの提案で具現化でドローンを作った。ドローンで冒険者がいないか偵察をしたが、周りには誰もいなかった。


「まもなくコーリ山に到着します」

「ヨウスケ、谷にドローンを飛ばして冒険者がいないか確認をしてくれ」
「ヒナノ、魔物の反応はどうだ」

「モトヤ、赤い点が点いたり消えたりしているわ」

「ザドキエル、│隠密熊《オウルベア》と違うのか?」
「はい、オウルベアの可能性が有ります」

「四輪バギーで谷に降りてみょう」

「モトヤさん、ロッククリスタルです」

「ヨウスケ、ロッククリスタルを加工してゴーレムに装着だ」
「加工は切断カット磨きポリシングだ」

「カット、ポリシング」

「サモンゴーレム」
 ヨウスケはゴーレムを召喚してロッククリスタルの触媒を移植した。
「1号、2号、俺たちを守ってくれ」
 ガコーン、ガコーン、ガコーン、ガコーン、

「サモンゴーレム」
 モトヤもゴーレムを召喚してロッククリスタルの触媒を移植した。
「3号、4号、俺たちを守ってくれ」
 ガコーン、ガコーン、ガコーン、ガコーン、

「とりあえずはゴーレムの動きが軽くなったので触媒は成功だな」
「はい」

「ヨウスケ、ロッククリスタルを集めよう」
「ユカとヒナノも手伝ってくれ」

 ロッククリスタルは全部で10キロほど集めたが2キロだけを提出用に退けて、後は収納にしまった。

「キャンピングカーに戻ろう」
「「「はい」」」

「インベントゴーレム」
 ゴーレムはモトヤとヨウスケが収納をした。

「モトヤ、赤い点が近づいて来たわ」
「ヨウスケ、ゴーレムだ」

「サモンゴーレム」
 グワーン、何者かがゴーレムを引っ掻いたが、傷は付かなかった。

「1号、2号、オウルベアを倒してくれ」
ビッ、ビッ、ビッ、ビッ、

「モトヤさん、結界が切れて熊の魔物が出てきました」

「ヨウスケ、ショットガンで撃て」
ズダーン、ズダーン、オウルベアは倒れたのでモトヤが収納にしまった。

「ヒナノ、これで安心だな」

「そうね、Aランクのオウルベアがいたから命が惜しくて誰も来られなかった訳ね」
「そうだな」

「転移門でギルドに戻ろうか」
「「「は~い」」」

「ロッククリスタルを採取してきた」
「それではこちらの小樽に入れて下さい」
 モトヤはロッククリスタルを小樽に入れた。

「それから魔物を狩って来た、オウルベアだ」
 モトヤは収納からオウルベアを出そうとしたが、あまりの大きさに一度しまって倉庫に案内された。

「おい見ろよ、赤の魔女と青の魔導士の噂は本当だったのだな」
「ああ、見てるよ」

「オウルベアを狩ってくるなんてSランクの冒険者だよな」
「ああ、下手に絡むとゴーレムの餌食だ」
「そうだな」
 
 冒険者達の噂話が聞こえていたがモトヤ達は聞こえないふりをしていた。

「お前たち、本当にオウルベアを倒してくれたのだな」
「本当にありがとう、これでロッククリスタルの採取が捗るよ」
 ギルドマスターはモトヤ達に礼を言った

「ロッククリスタル2キロ200枚、オウルベア1体200枚、それと報奨金が100枚で全部で金貨500枚だ」
「ありがとう」
 モトヤは金貨の袋を収納にしまった。

「ヨウスケ、転移門で湖に移動しよう」
「はい」
 4人はタルソス市の冒険者ギルドからコーリ山の近くの湖に転移門で移動してきたのだった。

(話終わり)
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...