上 下
547 / 556

547話 それは只の声

しおりを挟む
 ガルヴァーヴの其の巨大な竜の口が開いた。
 …来るっ!?

「ガアッ!!」

 魔竜将の咆哮と同時に”不可視の衝撃波”が俺たちに迫り来る。
 俺とディラムはその場から飛び退って衝撃波を回避した。
 先ほどまで俺達が居た場所は地面が大きく陥没する。

 俺とディラムは先程これをまともに喰らってしまい…
 一キロほど吹き飛ばされて、
 そのまま気を失ってしまったという訳である。

 しかし一度見た技なら何とか対処は可能、
 様は音が飛んでくる速度より速く反応して動けば良いだけである。

「うおおおおお!」

俺とディラムはガルヴァーヴの元へと駆ける。

「ガアアアッ!!」

 ガルヴァーヴの咆哮と共に発せられる
 ”不可視の衝撃波”の猛撃を躱しながら、
 俺とディラムは魔竜将との距離を詰めていく。

「しかし只の”声”だけで、
地面に大穴を空ける程の衝撃波を生み出すとは…
これが魔力数値24000という圧倒的な力が成せる技という訳か」

「ケイガよ。
これは攻撃技では無い。
我が主に取って見れば”呼吸”の様なモノだ。
これはあくまで手合わせ。
ガルヴァーヴ様は攻撃自体に加減はせぬが、
それでも我等を殺すつもりでは無いということの証左。
もし本気で来られるなら、
魔竜の息ブレスを使われて…
周囲の地形ごと全てを吹き飛ばすであろう」

「つまり…お前さんの主は、
これでも攻撃手段自体は
手加減してくれているということになるのか…?」

 でも魔力数値は24000まで上げているのに?
 手加減とは一体…うごご。
 魔族の考えは所詮人の身である俺には解らないということか。
 とにかく俺は全力で戦うしかない。
 魔竜将に取っては手合わせでも、
 俺からすれば何時死んでもおかしく無い程の力の差があるのだ。
 一切気は抜けないのである。

「波あッー!」

「はっ!」

 俺は右手をかざすと気功波を撃ち放った。
 続いてディラムも剣を振りかぶって魔力の斬撃波ざんげきはを放った。

 二つの攻撃波がガルヴァーヴに直撃する。
 だがその巨大な竜の身体には傷一つ付けることは敵わなかった。
 流石は魔力数値24000、
 この程度の攻撃なら避ける必要すら無いという事である。
 だがこれならどうだ、

地ノ宮流気士術ちのみやりゅうきしじゅつ・五の型、流星りゅうせい!」

魔光斬イーブルスラッシュ!」

 俺の両手のひらから放たれた気功波、
 魔族の騎士が振りかぶった剣から放たれた魔力の斬撃波ざんげきは
 重なってガルヴァーヴに直撃する。

 今の攻撃は先ほどの攻撃とはまるで違う。
 俺もディラムも正式な攻撃技として万全の態勢で力を練り上げて
 撃ち放ったものである。
 先の攻撃がただのグーパンなら、
 今の技はアニメや漫画で言う必殺技なのである。
 力の差があれど直撃すれば、
 ほんの少しでも足止めの効果はあるだろう。

 俺とディラムは攻撃の余波での土煙も利用して
 魔竜将との距離を一気に詰めた。
 そして俺は拳に気を、
 ディラムは剣に魔力を纏わせて魔竜を統べる長に接近戦を挑む。

 しかし次の瞬間、
 魔竜将の巨大な竜の身体から炎が吹き上がった。
 それは巨大な松明にくべられた火柱の様であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!

ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー] 特別賞受賞 書籍化決定!! 応援くださった皆様、ありがとうございます!! 望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。 そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。 神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。 そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。 これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、 たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

私は逃げます

恵葉
ファンタジー
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

呪配

真霜ナオ
ホラー
ある晩。いつものように夕食のデリバリーを利用した比嘉慧斗は、初めての誤配を経験する。 デリバリー専用アプリは、続けてある通知を送り付けてきた。 『比嘉慧斗様、死をお届けに向かっています』 その日から不可解な出来事に見舞われ始める慧斗は、高野來という美しい青年と衝撃的な出会い方をする。 不思議な力を持った來と共に死の呪いを解く方法を探す慧斗だが、周囲では連続怪死事件も起こっていて……? 「第7回ホラー・ミステリー小説大賞」オカルト賞を受賞しました!

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...