上 下
539 / 556

539話 激突する兄妹

しおりを挟む
「波あッー!!」

 俺は右手をかざした。
 手の平から気功波が放たれる。
 優羽花ゆうかは星剣を振るって気功波を打ち消した。

 だが俺はその隙に優羽花ゆうかの至近へと駆けた。

「やあっ!」

 優羽花ゆうかは振り下ろした剣をそのまま真横に薙いで
 接近する俺へとぶつける。
 俺は身体を限界まで低く屈めてその一刀を躱す。
 同時に星剣の刀身を蹴り上げて優羽花ゆうかの手から弾いた。

「あっ!?」

「どうする優羽花ゆうか
これで星剣に頼った戦い方は出来ないぞ!」

 俺は右手をかざし再度気功波を放つ。
 だが優羽花ゆうかは自身を中心に球状のバリアフィールドを形成して
 俺の気功波を霧散させた。

「この強い魔力のバリアは…
正式な気士術きしじゅつでも無く、
貯めも無い気功波では通じないか?」

「エクシオン!」

 優羽花ゆうかが自身の専用武器の名を叫ぶ。
 次の瞬間、
 俺に蹴りだされて遠くに飛ばされた筈の星剣エクシオンが
 凄まじい速度で飛来して優羽花ゆうかの右手に収まった。
 
「お兄い!」

 優羽花ゆうかが俺に向かい星剣を振るう。

地ノ宮流気士術ちのみやりゅうきしじゅつ・三の型・改、金剛力士こんごうりきし!」

 俺は全身を気で覆うと、
 防御力を金剛ダイヤモンド並に引き上げて優羽花ゆうかを迎え撃った。

 音速の剣術と音速の格闘術がぶつかり合い火花を散らす。

 優羽花ゆうかが振るう星剣の速度は先程よりも上がっている。
 だがそれでも、俺の手数の方が上。
 拳の怒涛の連撃が優羽花ゆうかへと向かう。
 我が妹は星剣でその全てを弾こうとするが、
 幾つかを受け損なって星剣の構えがブレた。

地ノ宮流気士術ちのみやりゅうきしじゅつ・一の型、雷迅らいじん!」

 その隙を逃さず俺は雷撃状の気をまとった正拳突きを放った。
 不完全な構えの優羽花ゆうかは星剣で防ぐことも敵わず、
 大きく後ろへと跳ね飛ばされて凄まじい速度で地面に激突した。

「…今のはいい一撃だったろ?
優羽花ゆうか!」

「こ、このぉ…」

 地面に激突した衝撃はかなりのものだったと思うが、
 優羽花ゆうかは気にすることなくムクリと起き上がった。
 流石は光の勇者、この程度では倒れないか。

「お兄!
あたしもポーラさんやミリィさんや姫騎士団プリンセスナイツの皆みたいに、
少しは優しくしたらどうなのよ!」

 優羽花ゆうかは怒りの形相で俺を睨みつけながら叫んだ。
しおりを挟む

処理中です...