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534話 上限の鎖

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「うあっ!?」

「きゃあっ!?」

 慧河けいがたちの戦いの余波が荒れ狂う風と化して
 ポーラ姫とミリィの髪を乱れさせた。

「…これは凄いね!
この姫騎士団プリンセスナイツの稽古場はボクの結界魔法で強化されている。
生半可な力は全て打ち消されれてしまう筈だけれど、
ケイガ兄君様あにぎみさま、ディラム殿、ユウカの力が余りに大きすぎて、
結界では相殺しきれずに漏れ出でたという訳だね!

ボクたちと兄君様の力の差は更に開いていく気がするよ…
領域レベルが違うね」

「それはいけませんわミリィお姉様!

それではわたくしとケイガお兄様のふたりっきりで、
ドキドキイチャイチャ組手稽古の機会が
また遠のいてしまいますわ!」

「ポーラ!
君はまだそんなことを言っているのかい!?

ボクたちと兄君様あにぎみさま領域レベルの差は歴然だよ!
組手稽古は実力の近い者同士に適した修業方法だと、
ケイガ兄君様あにぎみさまは言っていたから…
もうボク達が組手修行をする余地は無いんじゃ無いかな?」

「そんなことはありませんわミリィお姉様!

お兄様は”気”を使った戦い方が主ですわ、
対してわたくしたちは魔法が主体です。

言わば異質の戦い方同士。
わたくしたちには攻撃魔法による
正面からの力のぶつけ合いの他にも、
多種多様な魔法による搦め手で
色々と戦い様が有りますの!」

「うーんそれはそうだけど…
身体能力や身体強度に大きく差が出てしまうと…ね?」

「それではわたくし達同士で組手をして、
強くなってケイガお兄様に追い付けば良いのですわ!

まずは魔力数値1000を目指しましょう、
ミリィお姉様!」

「せ、1000!?
随分と大きく出たものだねポーラは…?」

「そんなことはありませんわミリィお姉様!

わたくしの弟のイクシアは既に700以上です。
そしてわたくしたちエクスラント王族は、
500年前に大魔王を倒した
光の勇者の血を引いておりますの。

つまり今から魔力数値1000ぐらい超えても…
何ら不思議では無いという事なのです!」

「ポーラは昔からそういった自信は凄いよね!
そういう所が第一王位継承者の所以ゆえんと言うか…
心構えということなのかな?

でもその言葉は一理あるよね!
そもそも元々大魔王を倒したのは、
ボクたちの世界エゾン・レイギスに住まう人間だ。
ケイガ兄君様あにぎみさまたち異世界人じゃ無くなって、
魔族を上回る強さを身に着けても…
何らおかしくは無いよね?

というより…
いつの間にかボク達エゾン・レイギスの人間は、
自分達の上限に勝手に鎖を撒いて
縛っていたという事になるのかな…?」
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