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521話 魔族達の解散

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「それじゃあシノブさん。
捕縛したゴルザベスとクリストの護送もあるし、
一度聖王都に戻ることにしようか?

 黒川部長とバイアンの件は放置すると
 後々厄介なことになりかねないと俺は思う。

 聖王都でバイアンが亡命しそうな
 国の情報を聞き出して、
 急ぎ対応を決めよう」

「了解ですケイガ兄様」

「ええと…
俺たちはこれから聖王都に戻るけど、
あんたたちはどうする?」

 俺は魔竜将ガルヴァーヴ、
 魔導将アポクリファル、
 魔竜リュシウムの三人の魔族に問いかけた。

「そうさのう…
儂は此処で魔導実験の続きじゃな。
まだまだやらなければならない実験が
立て込んでおるからのう」

「じ、実験…?」

「異世界の人間の戦士よ、
アポクリファル様は
何よりも魔導の探求を重視される御方。
この地は魔導研究にはうってつけの場所なのだ。
故に研究が一段落する迄、
ここを動くことは無い。
そう言う事だ」

 魔竜リュシウムが
 アポクリファルの心情を代弁して答えた。

「フォフォフォ…お前さん、
儂の考えがよくわかって来きたのう?

「…アポクリファル様。
ワレは短い間ではありますが、
伊達に貴方の魔導実験助手はしておりませんぞ?」

「…のうガルヴァーヴ?
リュシウムはこのまま借り受けたままで良いかのう?
儂の実験の相手にリュシウムは
この上なく適任なんじゃよ」

「構わぬが…
魔竜エビルドラゴンは全てオレの可愛い眷属。
くれぐれも壊すなよ?」

「フォフォフォ…了解じゃ」

「つまり二人は此処に残るってことだな…
それじゃあ魔竜将、あんたは?」

「ナルガネ・ケイガ。
オレとしては出来ることなら
聖王都とやらも見てはいたかったが、
残念だが時間切れだ」

 ガルヴァーヴがそう言葉を返したと同時に
 彼の姿が消え始めた。

「こ、これは!?」

「今のオレは召喚契約をしたディラムによって、
その一部を召喚された存在だからな。

召喚獣や召喚竜は召喚主の命に従い
自分の一部をエネルギー体として
召喚先に転移し顕現する。
そして内包しているエネルギーで
召喚主の敵を攻撃する。
攻撃でエネルギーを全て使い果たすと
顕現するエネルギーも失って
元の場に戻る…召喚先からは消えるという訳だ。

だがあえて攻撃をせずに召喚先での顕現に
持っているエネルギーを全て使えば
しばらくの時間は
召喚先に留まることが出来るという訳だ。

だがそれも限界時間タイミリミットと言う訳だな。

我が副官ディラムよ、
魔界五軍将であるオレの召喚契約は特別なモノだ。
しばし時を空けなければ、
再度召喚することは叶うまい。

まあ貴様の実力ならば、
オレに頼らなくとも何も問題はあるまいよ」

「はっ、ガルヴァーヴ様」

「くくく…ナルガネ・ケイガよ。
次に会う時は貴様が、
今よりも遙かに腕を上げている事を
オレは期待しているぞ?」

 魔竜将ガルヴァーヴはそう言葉を残すと
 完全に消えていった。
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