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514話 二人一組

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「クリスト教会長、
ゴルザベス様御一行の動きが急停止しました。
もしかして聖王都の手の者に捕縛されてしまったのでは…?」

 クリストに付き従っている教会騎士の一人が見通しの眼鏡スカウターレンズ
 全く動かなくなったゴルザベス達の魔力反応を
 確認しながら話し掛けた。

「さ、流石に追手が早すぎる気がしませんかのう?
いや…かつて私を瞬時に捕縛した
姫騎士団プリンセスナイツなら…
もしかすれば…?」

 クリストがポーラ姫直属の女性精鋭騎士団の名を口にしたと同時に、
 二人の女騎士が眼前に立ち塞がった。

「はーい、お爺さんと教会騎士さん達ー。
残念ですけどー、
この先は通行止めですよー」

「止まるが良い、です!」

 姫騎士団プリンセスナイツのカエデ、モミジが
 剣を抜刀しながらクリスト達に停止を促した。

「「「光球ライトボウル!!!」」」

 教会騎士たちは一斉に光属性攻撃魔法を放った。
 多勢に無勢で強引に押し通る腹積もりである。

「おっとー?
これは危ないですねー」

 間延した口調と裏腹に、
 俊足で駆けて
 自身に向かって飛来する光の球を
 全て回避して見せるカエデ。

 対してモミジは岩陰に隠れて
 攻撃魔法の着弾ルートから退避すると
 腰に付けているポシェットから
 おりぎりを取り出して食べ始めた。

「聖王都ホウリイから飛行魔法でひとっ飛び…
モジミはお腹が空いたので、
ここで一度栄養を補給するです。
カエデ副団長、
この場はしばらくお任せするですよ」

「ええー?
仕方が無いですねー、
お腹が膨れたらすぐに手伝ってくださいよー?」

「了解、です」

 カエデは剣の刃を返すと教会騎士たちへと突貫した。





********




「あわわ…何と言う事ですじゃ…
我が教会が誇る教会騎士が全滅ですと…?
ものの3分も経たずに?
ば、化け物かのう…?」

「女の子に化け物とは失礼ですよー?
それじゃー、
お爺さんも覚悟して下さいねー?」

 カエデは姫騎士団プリンセスナイツで一、二位俊足で突貫、
 魔法に長けたクリスト教会長の口を封じる為に”のど輪”を繰り出した。

 だがカエデがクリストの首を掴んだその瞬間、
 そのしわだらけの老人の首ごと、姿が掻き消えた。

「これはー?
光の幻惑魔法『偏光幻ポラゼーション』ー!?」

「はぁはぁ…
幾ら教会騎士を圧倒するほどに魔力数値が高くても…
この様な搦め手を使うことが出来れば、
逃げることは容易ということですじゃ!」

 クリストは身体強化魔法を使い、
 その老体からは想像もつかない俊足でグリンジスの森の中を駆け抜ける。
 身の纏う豪華なローブは木の枝等に当たって既にボロボロだが、
 彼は全く気にすることなく全力疾走。
 命あっての、いやここは自由あっての物種という奴である。
 そんな形振り構わないクリストの目に森の出口が見えて来た。

「あと少し…ですじゃ!」

 そう言葉を口にしたクリスト教会長の背後から凄まじい衝撃が襲った。
 教会長はそのままの勢いで前方向に吹っ飛んで、
 そのままの勢いで森の外へと飛び出して…
 森が切れた先の草原に墜落した。

「望み通り森の外には
出れたみたいですけど…
これまで、です」

 凄い勢いで地面に激突し、
 全く動けなくなったクリストの背後に
 モミジが追い付いて来た。
 クリストの後ろ手をロープで固く縛る。
 そして魔法が唱えられない様に
 その口に猿轡さるぐつわをはめ込んだ。

姫騎士団プリンセスナイツ
敵地での行動は最低でも二人一組が基本。
例え一人が出し抜かれても…
もう一人が補えば良い、です!」

 モミジは完全に無力化したクリストに向かって勝利のVサインをした。
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