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488話 竜穴の三者
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グリンジスの街の郊外に広がる大森林。
その最奥の森の終わりにある小山。
麓には竜穴と名付けられた広大な洞窟が広がっていた。
竜穴の中央空間。
其処は洞窟の主たる
魔竜リュシウムの住処であり、
彼への謁見の間でもあった。
此処で三人の男達と其の従者たちが、
魔竜リュシウムに謁見すべく
首を長くして今か今かと待ちわびていた。
ひとりは貴族派の筆頭でこの地グリンジスの領主でもあるゴルザベス。
ひとりは「商会」のトップ、商会長バイアン。
ひとりは聖王国に絶大な影響を持つ宗教団体
「教会」のトップである教会長クリスト。
「しかし…ゴルザベス殿も
リュシウム様とお会いされていたとは思いもしませんでしたぞ?」
「ふん、それはこっちの台詞だ。
目ざとい商人め、
貴様こそどうやってリュシウム様が
この地に降臨されたのを知ったのだ?
このグリンジスは私の領地なのだから、
何か事が起きれば我が耳に届くのは当然。
強大な御力を持たれる御方がこの地に住まわれたとなれば、
ご機嫌を伺うのは当然であろう」
「いえいえゴルザベス殿、
このバイアンは我等の商会のネットワークで
偶然知っただけでございます。
そしてこの地上では希少な存在である魔族のリュシウム様相手に
少々商売をさせて頂いているだけでございますよ。
むしろ私にとっては、
魔を清め祓う教会の長であるクリスト殿が
リュシウム様にお会いになられていた事が意外でしたぞ?
そして流石は教会のネットワーク。
我が商会同様にリュシウム様の存在を
いち早くお知りになっていたと言う訳ですな?」
「我等教会は
敬虔たる信者同士の繋がりがたまたま、
リュシウム殿の情報をもたらしただけのこと。
そして教会は本来戦いは好まぬのですじゃ…。
例え相手が魔なる存在とて話せば解るということ。
私はその教会の教えを実践したまでのことですじゃ」
「はっはっはっ、流石は教会長、
我が卑しい商人めにはわからない高潔なお言葉ですな」
「ふん…白々しく言いおるわ教会のタヌキ爺が」
「お三方たち、
随分とお待たせして申し訳無いですのう」
「これはこれは、アポクリファル様。
我々は一向に構いませぬ。
あなたの主であるリュシウム様は、
まだしばらく地上には戻られぬ感じでございますか?」
「フォフォフォ…
そろそろ魔界からお帰りになられる頃合いじゃ。
ではちょいとお迎えに上がりましょう」
アポクリファルは空間移動の魔法で
中央空間から消え失せた。
その最奥の森の終わりにある小山。
麓には竜穴と名付けられた広大な洞窟が広がっていた。
竜穴の中央空間。
其処は洞窟の主たる
魔竜リュシウムの住処であり、
彼への謁見の間でもあった。
此処で三人の男達と其の従者たちが、
魔竜リュシウムに謁見すべく
首を長くして今か今かと待ちわびていた。
ひとりは貴族派の筆頭でこの地グリンジスの領主でもあるゴルザベス。
ひとりは「商会」のトップ、商会長バイアン。
ひとりは聖王国に絶大な影響を持つ宗教団体
「教会」のトップである教会長クリスト。
「しかし…ゴルザベス殿も
リュシウム様とお会いされていたとは思いもしませんでしたぞ?」
「ふん、それはこっちの台詞だ。
目ざとい商人め、
貴様こそどうやってリュシウム様が
この地に降臨されたのを知ったのだ?
このグリンジスは私の領地なのだから、
何か事が起きれば我が耳に届くのは当然。
強大な御力を持たれる御方がこの地に住まわれたとなれば、
ご機嫌を伺うのは当然であろう」
「いえいえゴルザベス殿、
このバイアンは我等の商会のネットワークで
偶然知っただけでございます。
そしてこの地上では希少な存在である魔族のリュシウム様相手に
少々商売をさせて頂いているだけでございますよ。
むしろ私にとっては、
魔を清め祓う教会の長であるクリスト殿が
リュシウム様にお会いになられていた事が意外でしたぞ?
そして流石は教会のネットワーク。
我が商会同様にリュシウム様の存在を
いち早くお知りになっていたと言う訳ですな?」
「我等教会は
敬虔たる信者同士の繋がりがたまたま、
リュシウム殿の情報をもたらしただけのこと。
そして教会は本来戦いは好まぬのですじゃ…。
例え相手が魔なる存在とて話せば解るということ。
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「はっはっはっ、流石は教会長、
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「これはこれは、アポクリファル様。
我々は一向に構いませぬ。
あなたの主であるリュシウム様は、
まだしばらく地上には戻られぬ感じでございますか?」
「フォフォフォ…
そろそろ魔界からお帰りになられる頃合いじゃ。
ではちょいとお迎えに上がりましょう」
アポクリファルは空間移動の魔法で
中央空間から消え失せた。
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