上 下
487 / 556

487話 猪突猛進系

しおりを挟む
「はっ、これは…ケイガお兄様!
この先の魔族と思われる反応とは別に、
小さな魔力の反応が多数見受けられます。
これはもしかして…
魔族に我が聖王国の民が捕らわれているのでは…?」

 イクシア王子は自身が掛けている
 片眼鏡型オルクル・タイプ見通しの眼鏡スカウターレンズに映し出される
 細かな魔力反応を確認しながら俺に問い掛けた。

「ああ、その可能性は高い。
魔族ならば人間を人質にする等といった
外道な真似はしないだろうけど、
人間を巻き込んでしまう戦闘になると厄介だ…
だからここは慎重に」

「これは我が国民の危機…
一刻も猶予もありません!

ケイガ兄様、僕は先に行きます!
その魔族は倒さずに捕縛するなりして、
魔竜軍に属するかを問いただしましょう!
高速飛翔ハイウィング!!」

「ちょ、まっ」

 イクシア王子は俺が呼び止めるよりも先に、
 一筋の閃光となってまるでロケットの様に飛び去った。

「イクシア様は…
普段は打ち所の無いご立派な王子様なのですけれど、
深く考え無い所が多々ありますの…。

特に戦いとなると、
後先考えない所があるといいますか…」

「…猪突猛進…王子様…」

 イロハとツツジは小さくため息を突きながら言葉を述べる。

「そ、そうなのか…?」

 もしかして…脳筋系の王子様だとでも言うのか!?
 ますます優羽花ゆうかに似通っている気が…。

「と、とにかく!
イロハ、ツツジ。
とりあえず俺達も急ぎ王子の後を追うぞ!」

「ですわ!」

「…はい、兄様!」





********





 イクシア王子は高速飛行魔法・高速飛翔ハイウィング
 凄まじい速度で空を翔け抜けて大森林を越え、
 高い魔力反応がある小山の麓へと到着した。

 高速飛行魔法を解除して着地する王子。

 だが其処には三台の馬車が止まっていた。
 一台は貴族が乗る風の馬車。
 一台は教会の高司祭が乗る風の馬車。
 一台は大商人が乗る風の馬車。

 その形は三者三様ではあるが、
 どれもが豪華な造りの立派な馬車であった。

「これは…一体?」

「何者だ?
止まれ!」

 貴族風の馬車の側に居た兵士が
 イクシア王子に詰め寄った。
 しかしもう一人の兵士が王子の顔を見て青ざめて、
 詰め寄った兵士を押し留めた。

「…!?
おい待て、その御方は!」

「急にどうした?
俺達はゴルザベス様より
この先には誰も通さぬように命令されているんだぞ?」

「…君たちこそ何者だ?

僕はエクラント聖王国の第二王子イクシア。
この先に魔族と思わしき魔力反応があり、
その確認の為にやって来たのだが」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法剣の姫は、まもなく散る猛き花を愛しました。

sohko3
恋愛
レナは武勇の国グランティスに生まれた姫君。祖国を導く闘神である女王・エリシアのように強く気高い女性になりたいと憧れながら、勇気を出せずにいました。 グランティスの誇る剣闘場に現れたのは、生まれてから二十年しか健康体で生きられない最弱の神・傀儡竜、シホ。彼の目標は「オレが死ぬまでに最強の闘神であるエリシアを倒すこと」だと宣言します。 限られた命でありながら常に努力と鍛錬を重ねて剣闘場で勝ち進むシホを見守るレナは、密かに抱き続けていた「剣闘場史上初の女性剣闘士になりたい」という夢に向かって自分も努力したいと思い始め、その背中を押してくれたシホへの恋心を深めていきます。 シホの命が尽きるまでに、ふたりの夢は叶うのか? ふたりの愛は実るのか? 愛した人を喪ってしまう悲恋ですが、それでも愛するしかなかった深い想いと、情熱の恋愛バトルファンタジーです。(2/16完結)

弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也
ファンタジー
友人を庇った事からクラスではイジメの対象にされてしまう。 そんなある日、いきなり異世界へと召喚されてしまった。 クラス全員が一緒に召喚されるなんて悪夢としか思えなかった。 こんな嫌な連中と異世界なんて行きたく無い。 そう強く念じると、どこからか神の声が聞こえてきた。 そして、そこには自分とは全く別の姿の自分がいたのだった。 レベルは低いままだったが、あげればいい。 そう思っていたのに……。 一向に上がらない!? それどころか、見た目はどう見ても女の子? 果たして、この世界で生きていけるのだろうか?

主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。 ※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます ※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。

左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

妖刀使いがチートスキルをもって異世界放浪 ~生まれ持ったチートは最強!!~

創伽夢勾
ファンタジー
主人公の両親は事故によって死んだ。主人公は月影家に引き取られそこで剣の腕を磨いた。だがある日、謎の声によって両親の事故が意図的に行われたことを教えられる。  主人公は修行を続け、復讐のために道を踏み外しそうになった主人公は義父によって殺される。  死んだはずの主人公を待っていたのは、へんてこな神様だった。生まれながらにして黙示録というチートスキルを持っていた主人公は神様によって、異世界へと転移する。そこは魔物や魔法ありのファンタジー世界だった。そんな世界を主人公は黙示録と妖刀をもって冒険する。ただ、主人公が生まれ持ったチートは黙示録だけではなかった。 なろうで先行投稿している作品です。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...