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480話 大森林調査

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 この異世界エゾン・レイギスで
 すき焼きを食べることになろうとはなあ。
 …しかもオウミギュー、
 元の世界で言う所のA5黒毛和牛という奴である。

 俺が元の世界、日本でも
 なかなか味わう事は出来なかった
 高級すき焼きを腹いっぱい食べた俺は
 この上なく満足した。

 正確には元の世界の牛と異世界のギューという生物は
 生物種として違うのかもしれない。
 だが少なくとも肉の感触は、
 ほとんど同一のモノである。

 これは俺よりも過去に、
 この異世界に飛ばされてきた日本人が
 牛とそっくりの肉の感触を持った
 此の世界の生物を見つけて、
 オウミギューと名付けたのでは無いかと俺は推測している。


 それはそうと…
 俺はこの世界に来てからというもの、
 大人数の妹たちに囲まれるという生活を強いられ…もとい送っている。

 だが今現在、俺の周りにいる妹ははイロハとツツジのみ。
 元の世界での俺の妹は優羽花ゆうか静里菜せりなの二人だけ。
 つまり今の俺はエゾン・レイギスに
 飛ばされる前の状態に限りなく戻ったと言っても良い。

 俺は二人だけの妹と過ごすことに
 久し振りに気が休まった気がして…
 その反動で宿の床でぐっすりと眠りに着くことが出来た。
 
 そして朝日が昇った。


 宿の朝食は白いご飯と味噌汁、
 そして納豆に焼き魚…
 完璧な和食の朝食である。

 此処は本当に異世界なのか?
 まるで実家の様な安心感どころでは無い、
 本当に実家の様な朝食感なのである。

 俺は白いご飯にネバネバの豆をぶっ掛けると、
 米と柔らかい豆とネバネバのハーモニーを喜んで堪能する。

 このエクスラント聖王国には深く日本文化が浸透している事を
 俺は改めて実感した。


 朝食を終え外出の支度を整えた俺達を
 ちょうど出迎える様に、
 地協力員の馬車が宿の前に到着する。

 俺達は昨日決めた通り、
 グリンジスの街の郊外にある大森林へ向けて出発する。
 馬車は街の門を抜けると
 そのまま街道を進み、
 大きな木々が生い茂る巨大な森へとたどり着いた。

 俺は見通しの眼鏡スカウターレンズで森を探るが、
 今のところ高い魔力反応は感じられない。

「これは相当に広そうな森だなあ…。
三人固まって調査しても埒が明かないか。
手分けして探そうか?」

「そうですわねケイガ兄様。
森の中ならば人の目も気にすることはありませんし、
少し派手に動いても大丈夫ですわね?」

「…イロハ、
…あくまで潜入調査だから」

「わかってますわよツツジ!
魔力数値は抑えたまま、
気配も隠しつつ、
木々に隠れながら俊敏に…ですわね!」

 俺とイロハとツツジは弾ける様に跳んで
 それぞれ違う三方向へと散っていった。

 そして各々が掛けている見通しの眼鏡スカウターレンズ
 森の各地を見据えて、
 高い魔力数値の反応の有無を確認していった。
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