上 下
477 / 556

477話 貴族令嬢騎士の叫び

しおりを挟む
「ツツジ、ちょっとの間で良いですから…
あたくしに貴女の見通しの眼鏡スカウターレンズを貸して下さいまし!」

 イロハが突然にせきを切ったように声を荒げて、
 ツツジに見通しの眼鏡スカウターレンズ貸与たいよを要求した。

「…??
…わかったわ、イロハ。
…ど、どうぞ…」

 ツツジはイロハの剣幕に驚きの表情かおを浮かべながらも、
 自身が掛けている見通しの眼鏡スカウターレンズを外すとイロハに手渡した。

 イロハは受け取った眼鏡を掛けると俺に向き直り、
 自信たっぷりの謎のドヤ顔を見せた。

 …えっ?
 何でドヤ顔なんです??

「さあケイガ兄様!
眼鏡を掛けたあたくしに、
何か思うところは無くて!」

「お、思うところ…??
そ、そうだなあ…
イロハの頭が良くなった様に見える…とか?」

「そういう見た目のことじゃありませんわよケイガ兄様!」

「えっ、違うのか?
だったら…どういうことなんだ?」

「んもう!
いけずにも程がありますわよ兄様!
ほら…あたくしと兄様は今…
眼鏡を掛けた者同士…
お揃いじゃないですか…?」

 イロハは頬を赤らめながら言葉を述べた。

「ああ、確かに…そうなるなあ」

「…ええっ?」

「ん?」

「……」

「??」

「…ケイガ兄様…」

イロハは突然顔を強張らせると、
わなわなと全身を震わせた。

「どうしたイロハ?」

「ケイガ兄様あ!
これは明らかな妹格差ですわよおおーー!!」

 イロハの絶叫が。
 防音対策された馬車の窓に跳ね返り
 馬車内にこだました。

「きゅ、急にどうしたんだイロハ?
一体何が妹格差なんだ…?」

「先ほど兄様はツツジに”お揃い”と言われて明らかに動揺して、
その凛々しいお顔を緩まれたでは無いですか!
それなのに、
あたくしに”お揃い”と言われても…
全く動揺することなく、眉一つ動かさないなんて!
これが妹格差では無くてなんだと言うのですか!」

う、ああああああ…
俺はツツジに”お揃い”と言われてデレデレした顔を
妹たちに晒してしまって居たということか…。
兄として俺は恥ずかしかッ!
生きておられんごっ!

俺は湧き上がる羞恥感にさいやまれながら、
動揺振りを表情かおに出してしまっていた
自分の兄としての未熟さを猛省した。

「だけど…違うぞイロハ。
俺は君とツツジを妹格差何てしていない。
俺は妹たちを皆平等に思っている」

「では何故あたくしには何も反応無しなのですか!」

「それはなあ…
タイミングと言うか…
シチュエーションの違いというか…。

イロハ、少し考えて見てくれ?
自身たっぷりのドヤ顔で俺を見据えた後に
急に”お揃い”と言われても…
何も心にドキッとしないと、
そうは思わないか?」
しおりを挟む
script?guid=on
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

処理中です...