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470話 合体魔法

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 天空そらを高速で飛行する二条の光。
 光が進む地平の先に城下町が見えた。
 それと同時に二つの光は高度を下げる。
 そして小高い大地の端の切り立った崖の部分に着陸した。

 二つの光の正体は無属性高速飛行魔法、
 高速飛翔ハイウィングを起動する際に生じる魔力の光である。

 二つの光が霧散し、それぞれの中から
 鳴鐘 慧河なるがね けいがと光の精霊ヒカリ、
 姫騎士団プリンセスナイツのイロハとツツジが姿を現した。

「ケイガ兄様。
これ以上街に近付くと魔法探知に引っかかる恐れがありますわ。
ですから此処からは地上からグリンジスの街へ向かいましょう」

「ああ、了解だイロハ。
しかし鍛錬を始めてから早ひと月、
イロハもツツジも既に高速飛行魔法を使える魔力数値まで上げて居たんだなあ」

「…ううん、兄様…
…ツツジ達はまだ、その数値まで至っていません…」

 ツツジは首を横に振りながら言葉を返す。

「…えっ?
でもさっき二人とも確かに高速飛行魔法・高速飛翔ハイウィング
展開していたじゃないか?」

 俺は見通しの眼鏡スカウターレンズを起動させて二人の魔力数値を計測する。
 眼鏡にはイロハの魔力数値が95、
 ツツジの魔力数値が87と映し出された。

「あれ…高速飛行魔法に必要な魔力数値は180以上の筈…
それだとさっきの高速飛翔ハイウィングは一体どういう…?」

「兄様、これはミリフィア様が
古の文献より研究されて実用化させた”合体魔法”というものですわ。
これは魔力の少ない者同士が力を合わせて、
一人だけでは使用できなかった
強力な魔法を使うことが可能という魔法技術なのですのよ!」

「…ツツジとイロハは単体では高速飛行魔法が使用できません…
…でも、魔力を合わせて魔力数値180以上なので…
…合体魔法でなら高速飛行魔法が使用できます…。
…現在の姫騎士団プリンセスナイツは全員、
二人掛かりでなら高速飛行魔法を使える状態…です」

「なるほどなあ…合体魔法かあ。
流石はミリィ、聖王国一の魔法学者は伊達じゃないな。
しかし…高速飛行魔法はどうしてこんなにも高い魔力数値が必要なんだろうな?
俺としては攻撃魔法の方が高い魔力数値が必要な気がするんだけどな」

「兄様、ミリフィア様がおっしゃるには
高速飛行魔法・高速飛翔ハイウィングの魔法原理は
単に爆発的に魔法力を放出して無理やりに飛んでいるだけだから
とてつもなく魔力効率が悪い。
だから単純シンプルに人ひとりを高速で飛ばせるだけの高い魔力が必要になるとの事ですわ」

「なるほど…そういうことか」

 単純に破壊をもたらす攻撃魔法より
 汎用性があり便利な高速飛行魔法のほうが魔力効率が悪いとは…
 いや、元の世界の”科学”も案外そう言う事はあるのかも知れないなあと、俺は思った。
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