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460話 従順な奴隷

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「リュシウム様、アポクリファル様、
いただきます!」

 元生贄の子供たちは二人の魔族に向かって食事の挨拶をすると
 自分達が調理した夕食を食べ始めた。

「しかしアポクリファル様、
人の幼子一同がわざわざワレの前に集まって毎度食事を取る必要は無いのでは?」

「何を言っとるんじゃリュシウムよ?
人間の社会では家族の食事は
家長の前に全員集って取るのが礼儀なんじゃ。
お主は名目的には此の竜穴ドラゴンホールの長なんだからのう」

「ですがワレは魔竜エビルドラゴン
魔素があれば生きていけるのですぞ。
そんな食事の必要が無いワレがここに居ても、
場の雰囲気を崩すのでは…?」

「そんなことを言ったら、
人造魔族ホムンクルスの仮初めの身体の儂も
魔力補給の霊薬ポーションを飲んでいれば
生命活動に支障は無いんじゃぞ。
だが子供わっぱたちが折角作ってくれた食事なんじゃ、
食べなかったら悪いじゃろ?
さあ、お前さんも食べるんじゃよ」

「ハ、ハア…」

 アポクリファルはスープが入った大皿を手に取ると
 リュシウムの巨大な舌へと傾けた。

「リュシウム様、おいしい?」

 ひとりの少女がリュシウムに料理の感想を問い掛けた。
 正直な所、魔竜エビルドラゴンであるリュシウムには
 種族のまるで違う人間の料理の味はまるで解らない。
 だが幼い手で一生懸命に作ってくれたのだ。
 その心には真心を持って答えなければなるまい。

「人の幼子たちよ。
ワレは竜故に人間の味覚はわからぬ。
だがオマエ達が一生懸命になって、
この料理を作ってくれたこと、
それは竜にも通じる最高の旨味としてワレに伝わったぞ…旨いッ」

 魔竜は目の前の少女に向けて
 嘘偽りのない言葉で答えた。






********






「しかしアポクリファル様。
何故この様に大勢の人の幼子達を
この竜穴ドラゴンホールに住まわせることに…?」

 夜遅く、子供たちが寝静まった頃。
 魔竜リュシウムは魔導将アポクリファルに
 常々思い抱いていた疑問を口にした。

「フォフォフォ…リュシウムよ、
それは至極簡単なことじゃよ。

儂ら魔族は人間共を倒し
この豊かな地上を手に入れることを至上の目的としておる。
だが人間は決して滅ぼしてはならない。
あくまで服従させて奴隷とする事が重要じゃ。

儂ら魔族は人間に比べて圧倒的に数が少ない。
首尾よく地上を手に入れたとしても、
儂らだけではその管理すらも立ちゆかんじゃろう。
つまり地上での労働力として人間共は必須という訳じゃ。
それもすぐに儂ら魔族に叛意してしまう様ではいかん。
儂ら魔族に従順で好意的な奴隷としなくてはな。

その為には儂らは人間という存在を
より良く知らなければならないんじゃ。

教会は儂らへの生贄として子供わっぱ達をどんどん送って来た。
これはまさに渡りに船。
この子供わっぱ達と共に暮らすことで、
人間共をどう扱えば従順な奴隷となってくれるかを
研究出来る又とない機会を得たと云うことじゃ」
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