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453話 成立と目的と

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「しかしアポクリファル様、
まさか廃棄品として箱に仕舞ってあった失敗作の魔導具を
人間との交易品として使うとは…」

「咄嗟のことに対しては、上手い対応だったじゃろ?
人間の言葉で言うなら”りさいくるひん”という奴じゃな」

 バイアンとの交易は成立した。
 アポクリファルが求める魔導実験に必要な
 質の良い様々な資材をバイアンが用意して、
 アポクリファルが造った魔導具(失敗作)と交換するという
 物々交換の取引内容である。
 バイアン達はアポクリファルの要望に応えるべく
 街へと帰還していった。
 リュシウムはバイアンと結んだ取引の内容の感想を口にした。

「…ワレには容赦なく不平等な取引内容に見えました…
流石は大魔王様直属の高位魔族であられる
魔導将アポクリファル様…やり方がエグイッ…」

「…そうかのう?
これは人間側が儂ら魔族の技術を得られる
またとない好機なんじゃよ。
そしてバイアンはそれを独占できるかも知れん。
だとすれば安すぎるぐらいじゃよ?」

「…!?
アポクリファル様は
魔導具の作成技術を人間共に
読み取られることを予想されているのですかッ?」

「そりゃあそうじゃろう。
何しろ魔導具の現物を渡すのじゃからのう。
まあひとつふたつでは無理でも数が揃えば作成技術を解析されて、
いずれは人間側でも魔導具の複製が出来るようになるんじゃないかのう?」

「しかしそれでは人間共の戦力を強化する要因となってしまうのでは?」

「フォフォフォ…若き魔竜リュシウムよ。
生物とは敵が強ければ強い程に、
自身もより強く進化するものじゃ。
故に人間は今より強くなる必要がある。
儂ら魔族がより高みに進化するためにな。
もっとも人間が儂らの技術を読み取れるだけの
頭と技術があること前提になるがのう。

まあ見せてもらうとしようかのう、
かつての大戦から500年を経た人間の力というものをな」

 アポクリファルはそう言葉を述べると、
 宝箱の中からひとつの腕輪を取り出した。

「次はこれを交易品として渡してやろうかのう?」

「アポクリファル様!
それは魔力を抑制する効果の魔導具とは違うものではッ!?」

「そうさのうリュシウムよ。
これは魔力数値を20程上げる効果がある魔導具じゃのう。
魔力を下げるのも上げるのも広い目で見れば
魔力数値の操作という意味では同じ。
故に魔力を抑制する目的で作った魔導具の中には
この様に逆の効果を持った失敗品も出て来ることがある。
この程度の魔力の上昇値など
儂ら魔族にとっては大したモノでは無いが、
魔力の基本値が低い人間に取っては
大きな効果を持つモノになるじゃろうな」

 魔導将アポクリファルは、
 深淵を映し出すかのような闇色の瞳で腕輪を見つめながら呟いた。
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