上 下
448 / 556

448話 大貴族の答え

しおりを挟む
「魔導将アポクリファル様、
ワレは魔竜将ガルヴァーヴ様からアナタに貸し出された身、
今のワレはアナタがあるじ
アポクリファル様がそうなさりたいのなら、
ワレはこれ以上は申しませぬ。
貴方のご意思に従うのみ!」

 魔竜リシュシウムはアポクリファルに言葉を返すと
 眼下のゴルザベス達人間を再度見下ろして威圧的に言葉を放った。

「…良かろうゴルザベスとやら…
オマエ達がそれ程までにワレの下僕となりたいのなら、
その望み叶えてやろうッ!」

「ハハッードラゴン様!
このゴルザベス一同、
一身に仕えさせて頂きます!」

「…リュシウムだ。
それが我が名、
深く刻むが良い」

「おお…リュシウム様。
流石は強大な力を持つ高位魔族の御方は
名前の響きが違いますな!」

「…あからさまなお世辞は身を亡ぼすぞ人間…」

 自分を”高位魔族”と勘違いしている目の前の愚かな人間に
 リュシウムは侮蔑の目を向けた。
 何という…曇ったまなこであろうか。
 本当の高位魔族の方々はワレとは次元が違う。
 我が真のあるじたる魔竜将ガルヴァーヴ様の魔力数値は
 ワレの10倍以上は確実なのだからな。

「いえいえ、そんな事は」

 ゴルザベスは謙遜の言葉を返す。
 そんな舌が廻る男に対して魔竜は長い首をもたげると、
 ゴルザベス達の直上へと伸ばし大きく口を開けた。
 そのあぎとに並んだ鋭い牙が彼等に向けて鈍く輝いた。

「まあ多少の無礼は水に流してやろう。
だがワレの下僕となった以上、
裏切りだけは絶対に許さん…
それは深く心に留めておくことだなッ!」

 リュシウムはゴルザベス達を噛み砕かんとばかりに
 口を開閉させながら言葉を述べた。

「ハハッ…
肝に銘じておきます…」

 ゴルザベスとその配下の兵士たち一同はその場にひれ伏した。






********





「ゴルザベス様…
本当にあの様な恐ろしい
魔族の竜の配下となって宜しかったのですか?
私は何時焼き払われるか、
もしくは噛み殺されるか気が気でなく、
生きた心地がしませんでした…」

リュシウム達の洞窟を後にして
街への帰途に就くグリンジス軍の兵士長は、
主である領主ゴルザベスに問い掛けた。

「兵士長。
それは生まれながらの貴族である私と、
下人であるお前との見る目の差よ。
私はあの魔族の竜…リュシウム様が
我々に害を与える気が無い事は気付いておったわ」

「そ、そうだったのですかゴルザベス様!?
でも自分にはあの竜があと一歩で、
我々に向かって吐息ブレスを吐く様に見えたのですが…?」

「それもリュシウム様の高等な演技だな、
生まれながらの支配者たる私には解った」

「そう…ですか。
しかしゴルザベス様。
あの魔族の竜には早速、
鉱物や魔法薬といった類の
様々なモノを捧げるように言われたのですが…」

「それぐらいは安いものよ。
むしろあちらから要望があるならこちらとしてはやりやすい。
こうやって少しづつ信頼を勝ち取って、
ゆくゆくはリュシウム様の御力を借りることができたなら…
我等は聖王都への反撃の準備として、
この上ない後ろ盾を得ることが出来るのだからな!
がはははは!」

 大貴族ゴルザベスは自分を追放した聖王都への、
 ポーラ姫達への復讐に燃えながら高らかに笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

処理中です...