シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進

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445話 恭順

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 完全武装の兵士たちに紛れた人間の魔導士が、
 我等が住まう小山の麓の岩壁に向かって解呪魔法を行使する。
 アポクリファル様の幻影魔法によって隠されていた
 入り口の洞窟を白日の下にさらけ出した。

 魔導将アポクリファル様の今の身体は自身を似せて造った
 人造魔族ホムンクルスに自身の精神体の一部を宿らせたモノ。
 故に持っている魔力は人造魔族ホムンクルス自体の低い魔力数値でしか無い。

 アポクリファル様はその多くは無い魔力のリソースを
 全て魔導研究に注いでおられる。
 故にこの魔導研究施設のある洞窟を隠す魔法は簡易的なモノとなり、
 並の人間の魔導士でも解呪できたという訳である。
 いや、もしかして…アポクリファル様は…
 ”わざと簡単に”解呪できる様にしたという可能性も…?

 魔導将アポクリファル様は
 大魔王様直属の魔界五軍将のひとりであるる高位魔族。
 魔界一の狂魔導学者マッドソーサラーと恐れられる御方。
 その思考の深淵は所詮ワレ程度の頭では理解できない。
 ならばワレが今すべきことは…
 解りもしない事を想像する事では無く、
 アポクリファル様に託された
 此処を訪れた人間に対しての対応をすることのみよ!

 人間共は洞窟の中へと分け入った。
 そして洞窟の中へとその歩みを進める。
 長い通路を抜けて、ワレが鎮座する中央空間ホールへとやって来た。
 ワレは長い首を立ち上げて威圧的に人間共を見下ろして言葉を言い放つ。

「人間共よ、
何ゆえに此処にやって来た?
その物々しい武装…
よもやワレを討とうと来たワケではあるまいな?
お前たちの返答次第では、
その命は瞬く間に無くなるモノと思うが良いわッ!」

 ワレは並の人間ではまず立っていられない程の声量で言葉を放った。
 人間共は軒並みその場に膝を崩した。

「そ、そんなことはありませぬ!
この鎧は脆弱な人間が身を護るための装備故に、
どうかご容赦のほどを、偉大なる御力を持たれるドラゴン様!」

 見下ろす人間の集団の中でも、
 ひと際目立つ豪華な鎧に身を包んだ
 ひとりの男が立ち上がってワレに言葉を返した。

「ほう…
我が声を受けてもすぐに立ち上がることが出来たその胆力…
オマエは並の人間共とは少し違う様だな…何者だ?」

「ハハー、
私はこの地を治める領主、
ゴルザベス=リュ=トースと申す者でございます。
偉大な御力を持つドラゴン様が
この地に住まわれたという話を耳にして、
急ぎ馳せ参じたという訳です!」

 ゴルザベスと名乗った貴族風の男は
 ワレに平伏しこうべを垂れて、
 恭順きょうじゅんの姿勢を見せた。
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