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443話 調査報告
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「ま、魔力数値950のドラゴンだと!?
そんな馬鹿なっ!」
大森林の調査から戻ったグリンジス兵士長の報告を聞いた
大貴族ゴルザベスは驚きの余り、
座っていたソファーからずり落ちた。
「魔界から侵攻してくる魔族軍とて、
大将格の魔族で魔力数値が400前後だと聞いているのだぞ!?
その倍以上の魔力数値を持つ者など居る訳が…
ま、まさか…?
あのドラゴンは?
伝説に聞く…高位魔族だとでもいうのか!!??」
「高位魔族ですと!
500年前の人間と魔族の大戦時に
大魔王と共に地上を破壊し尽くしたと言う、
あの伝説の高位魔族だと言うのですか!?
ゴルザベス様のおっしゃる通りだというのなら…
我々の戦力では最早どうすることも出来ません!
至急、聖王都に連絡し救援を求めるべきかと!」
「しかし兵士長…
聖王都は、聖王国のトップであるポーラ姫は、
今この様に私を追放しているのだぞ!
そんな私が助けを請うても、
無視されるのがオチなのでは無いか…?」
「ゴルザベス様!
このグリンジスの街は確かにあなたの領土ですが、
大きくはエクスラント聖王国の一部なのです!
今や国王代理を務め、
聖王国の実質の長であられるポーラ姫様が
国内に危機ありと解れば、
真っ先に救援の策を講じられるでしょう。
そもそもポーラ姫様は慈悲深き聖王女。
ゴルザベス様は貴族であると同時に、
この聖王国の国民にひとりでもあられます。
聖王国の国民が助けを請えば…
ポーラ姫はどんなわだかまりであろうと過去の事は水に流して、
救いの手を差し伸べてくれる筈です!」
兵士長はポーラ姫に対し擁護的な言葉を並べながら答えた。
貴族ゴルザベスは、
彼がポーラ姫を随分と好意的に買っている事をしみじみと感じた。
慈悲深き聖王女…
確かに自分もついこの前までそう思っていたものである。
いや正確には、
王の資格などない甘っちょろい考えの無力な小娘だと思っていた。
だが先日の謁見の間で彼女が自分に見せたのは紛れも無く、
”絶対的な王者の立ち振る舞い”であった。
ポーラ姫は聖王国を牛耳るべく
水面下で動いていた私の行動を全て見ぬいて、
容赦なく処断して見せたのだから。
しかし聖王国の国民の全ては、
今でも慈悲深き聖王女としてのイメージでポーラ姫を見ているであろう。
…目の前の兵士長と同じように。
彼女の王者としての容赦の無い振る舞いは、
実際に目に見た者でしかわからないだろうから。
つまり、聖王都に下手に救援の連絡などすれば…
聖王国の正規軍が我が領土に進駐し、
そのまま実効支配ということも有り得る。
そうすれば私は領土をも剥奪されるかも知れないでは無いか!
やらせはせん、やらせはせんぞ!
私は後に必ず復権する!
そしていずれは、この国を支配する選ばれし者なのだ!
その為には我が勢力の源泉でもある、
大事な領土を奪われるわけにはいかんのだ!
ならばどうする…?
この危機を打開し、
更には聖王都に、
ポーラ姫に対し逆転すべく…
この危機的事態を上手く利用する手は無いか?
大貴族ゴルザベス。
邪魔な者達をあらゆる強引な手を使って蹴落として、
聖王国貴族派筆頭の大臣にまで上り詰めて来たのである。
そのドス黒い思考回路が脳内でグルグルと回転した。
そんな馬鹿なっ!」
大森林の調査から戻ったグリンジス兵士長の報告を聞いた
大貴族ゴルザベスは驚きの余り、
座っていたソファーからずり落ちた。
「魔界から侵攻してくる魔族軍とて、
大将格の魔族で魔力数値が400前後だと聞いているのだぞ!?
その倍以上の魔力数値を持つ者など居る訳が…
ま、まさか…?
あのドラゴンは?
伝説に聞く…高位魔族だとでもいうのか!!??」
「高位魔族ですと!
500年前の人間と魔族の大戦時に
大魔王と共に地上を破壊し尽くしたと言う、
あの伝説の高位魔族だと言うのですか!?
ゴルザベス様のおっしゃる通りだというのなら…
我々の戦力では最早どうすることも出来ません!
至急、聖王都に連絡し救援を求めるべきかと!」
「しかし兵士長…
聖王都は、聖王国のトップであるポーラ姫は、
今この様に私を追放しているのだぞ!
そんな私が助けを請うても、
無視されるのがオチなのでは無いか…?」
「ゴルザベス様!
このグリンジスの街は確かにあなたの領土ですが、
大きくはエクスラント聖王国の一部なのです!
今や国王代理を務め、
聖王国の実質の長であられるポーラ姫様が
国内に危機ありと解れば、
真っ先に救援の策を講じられるでしょう。
そもそもポーラ姫様は慈悲深き聖王女。
ゴルザベス様は貴族であると同時に、
この聖王国の国民にひとりでもあられます。
聖王国の国民が助けを請えば…
ポーラ姫はどんなわだかまりであろうと過去の事は水に流して、
救いの手を差し伸べてくれる筈です!」
兵士長はポーラ姫に対し擁護的な言葉を並べながら答えた。
貴族ゴルザベスは、
彼がポーラ姫を随分と好意的に買っている事をしみじみと感じた。
慈悲深き聖王女…
確かに自分もついこの前までそう思っていたものである。
いや正確には、
王の資格などない甘っちょろい考えの無力な小娘だと思っていた。
だが先日の謁見の間で彼女が自分に見せたのは紛れも無く、
”絶対的な王者の立ち振る舞い”であった。
ポーラ姫は聖王国を牛耳るべく
水面下で動いていた私の行動を全て見ぬいて、
容赦なく処断して見せたのだから。
しかし聖王国の国民の全ては、
今でも慈悲深き聖王女としてのイメージでポーラ姫を見ているであろう。
…目の前の兵士長と同じように。
彼女の王者としての容赦の無い振る舞いは、
実際に目に見た者でしかわからないだろうから。
つまり、聖王都に下手に救援の連絡などすれば…
聖王国の正規軍が我が領土に進駐し、
そのまま実効支配ということも有り得る。
そうすれば私は領土をも剥奪されるかも知れないでは無いか!
やらせはせん、やらせはせんぞ!
私は後に必ず復権する!
そしていずれは、この国を支配する選ばれし者なのだ!
その為には我が勢力の源泉でもある、
大事な領土を奪われるわけにはいかんのだ!
ならばどうする…?
この危機を打開し、
更には聖王都に、
ポーラ姫に対し逆転すべく…
この危機的事態を上手く利用する手は無いか?
大貴族ゴルザベス。
邪魔な者達をあらゆる強引な手を使って蹴落として、
聖王国貴族派筆頭の大臣にまで上り詰めて来たのである。
そのドス黒い思考回路が脳内でグルグルと回転した。
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