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435話 魔導将の地上拠点

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 精霊の星から飛び立った
 魔導将アポクリファルと魔竜エビルドラゴンリュシウムは、
 『中央域センターポイント』上空の雲を掻き分け
 山を飛び越えて高速で飛行、
 あっと言う間にエクスラント聖王国の国境に差し掛かった。
 二体の魔族の眼下には堅牢な城壁を要する砦が立っているのが見えた。

「アポクリファル様、
あれは国境を護る人間共の砦。
監視の兵もいる。
このまま突っ切ってもいいのか?」

「そうさのう…
国境の砦には魔族の接近を監視する魔力探知の網もあるしのう。
このまま行けば儂らの存在は瞬く間に感知されて
ちょっとした揉め事になるじゃろうな。
なあに、儂の魔法でちょいと欺いてやれば問題は無いわい」

 アポクリファルは人差し指をくるりと回した。
 次の瞬間、自身とリュシウムの周りをかすみのようなものが覆った。
 そのまま二体の魔族は砦の上空を堂々と通過した。

 砦の城壁に立っていた兵士達はこちらに視線を向けてはいたものの、
 全く気付いた様子が無い。
 まるで見えて居なかったと言った具合である。

「オオッ…これは…?」

「フォフォフォ…
儂の攪乱魔法ジャミングで生み出した魔力のかすみに包まれた者は、
並の人間では視認する事すら出来んわい。
このかすみには探知魔法も見通しの眼鏡スカウターレンズも欺く効果がある。
視覚的にも魔力探知的にも抜かりないという訳じゃ」

 国境の砦を抜けた魔導将と魔竜はエクスラント聖王国領内に深く侵入する。
 そのまま悠々と飛び続ける二体の魔族が見つめる地平の彼方には、
 聖王都ホウリイには及ばないものの
 かなりの規模の城下町が見えて来た。
 アポクリファルはその城下町から飛行経路を大きく逸らすと、
 町の外輪にある大きな森の上空へと侵入した。
 そして大森林の端にある小高い山の麓に降り立った。
 そこには何の変哲もない岩壁が広がっているだけの場所であった。

 魔導将は人差し指をくいっと壁に向けて差す、
 すると只の岩壁はすっと消えて…
 巨大な体躯の魔竜でも難なく入れる規模の洞窟が姿を現した。

「オオッ、これは…魔法で隠された入り口!?」

「フォフォフォ…
さあ付いてくるが良いリュシウムよ。
この奥こそが、
魔界一の魔導学者、
魔導将アポクリファルの地上における拠点であり、
魔導研究の為のむろじゃ」

 巨大な洞窟の中に入っていく魔族の爺と魔竜、
 長い通路を抜けた先には巨大な空間ホールが広がっていた。
 空間ホールの中央は剥き出しの岩状になっていて、
 天井はかなりの高さがある。
 そして空間ホールの周囲の岩壁には金属製の頑丈そうな扉が無数に張り付いていた。
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