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434話 魔導将と若き魔竜

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 エゾンリア大陸中央地域、『中央域センターポイント』と呼ばれる地域。
 かつて宇宙そらより落ちてきたという、
 精霊達の住まう星が突き刺さっている。

 この星の中を通って地下世界の魔界と地上の人間界は繋がっている。
 星の中央には精霊達が張った結界があって、
 強い魔力を持った高位魔族は通り抜けることが出来ない。

 精霊の星はとてつもなく巨大であり、
 その直径は数キロにも及ぶ。

 外景には無数の塔の様なものが突き刺さっており、
 星を構成する物質も自然の土や岩というより、
 人工物を感じさせる。

 星というよりは、
 何者かの手によって造られた超々巨大な建造物といったほうが
 しっくりする姿をしているのである。

 人間の魔法学者の間では…
 この精霊の星自体も、
 精霊たちが創り出したものだと言うのが定説である。


 精霊の星の最頂部にぽっかりと開いた、
 『星の扉スターゲイト』と呼ばれる巨大な穴。
 その中から、
 ひとつの人影と、ひとつの巨大な影が飛び出した。

 人影のほうは魔導士のローブに身を包み込んだ魔族の老人。
 大魔王直属の高位魔族、
 魔界五軍将のひとりである魔導将アポクリファルである。

 そして巨大な影のほうは、
 巨大な翼を羽ばたかせた巨大な竜。
 魔界五軍将のひとり魔竜将ガルヴァーヴの眷属である魔竜の一体であったが、
 今はアポクリファルに付き従っている若き魔竜リュシウムである。

「オオオッ…ここが…地上…
これが人間共の住まうセカイなのかアポクリファル様?」

「フォフォフォ…その通りじゃよリュシウム。
地上の空気もなかなか良いものじゃろ?」

「確かに…魔界とは全く違う清々しい感じの空気ですなッ!

それはそうとアポクリファル様?
星の中に張られた精霊の結界は
高位魔族の方々は通さないと聞いていたが…
アナタが何の支障も無く抜けられたのはどうしてなのだ?」

「フォフォフォ…それは簡単な事じゃよ。
あの結界は魔力数値1000以上の存在を通さないように造られておる。
つまりそれ以下であれば通り抜けることは全く問題ないということじゃ。

今の儂の身体は、
儂そっくりの人造魔族ホムンクルスに儂の精神体の一部を宿らせて動かしておるんじゃよ。
魔力は人造魔族ホムンクルスのものじゃから魔力数値も低い。
よって何の問題も無く結界を通り抜けられたという訳じゃ。

それでは立ち話は此処までにしようかのう?
まずは地上界における儂のアジトに向かうとしよう」

 アポクリファルは高速飛行魔法を行使した。
 その身体を魔力の光が包み込む。
 そして次の瞬間、まるで流星の如く跳ね飛んだ。
 リュシウムは翼を羽ばたかせ、その後にぴたりと続いた。
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