上 下
434 / 556

434話 魔導将と若き魔竜

しおりを挟む
 エゾンリア大陸中央地域、『中央域センターポイント』と呼ばれる地域。
 かつて宇宙そらより落ちてきたという、
 精霊達の住まう星が突き刺さっている。

 この星の中を通って地下世界の魔界と地上の人間界は繋がっている。
 星の中央には精霊達が張った結界があって、
 強い魔力を持った高位魔族は通り抜けることが出来ない。

 精霊の星はとてつもなく巨大であり、
 その直径は数キロにも及ぶ。

 外景には無数の塔の様なものが突き刺さっており、
 星を構成する物質も自然の土や岩というより、
 人工物を感じさせる。

 星というよりは、
 何者かの手によって造られた超々巨大な建造物といったほうが
 しっくりする姿をしているのである。

 人間の魔法学者の間では…
 この精霊の星自体も、
 精霊たちが創り出したものだと言うのが定説である。


 精霊の星の最頂部にぽっかりと開いた、
 『星の扉スターゲイト』と呼ばれる巨大な穴。
 その中から、
 ひとつの人影と、ひとつの巨大な影が飛び出した。

 人影のほうは魔導士のローブに身を包み込んだ魔族の老人。
 大魔王直属の高位魔族、
 魔界五軍将のひとりである魔導将アポクリファルである。

 そして巨大な影のほうは、
 巨大な翼を羽ばたかせた巨大な竜。
 魔界五軍将のひとり魔竜将ガルヴァーヴの眷属である魔竜の一体であったが、
 今はアポクリファルに付き従っている若き魔竜リュシウムである。

「オオオッ…ここが…地上…
これが人間共の住まうセカイなのかアポクリファル様?」

「フォフォフォ…その通りじゃよリュシウム。
地上の空気もなかなか良いものじゃろ?」

「確かに…魔界とは全く違う清々しい感じの空気ですなッ!

それはそうとアポクリファル様?
星の中に張られた精霊の結界は
高位魔族の方々は通さないと聞いていたが…
アナタが何の支障も無く抜けられたのはどうしてなのだ?」

「フォフォフォ…それは簡単な事じゃよ。
あの結界は魔力数値1000以上の存在を通さないように造られておる。
つまりそれ以下であれば通り抜けることは全く問題ないということじゃ。

今の儂の身体は、
儂そっくりの人造魔族ホムンクルスに儂の精神体の一部を宿らせて動かしておるんじゃよ。
魔力は人造魔族ホムンクルスのものじゃから魔力数値も低い。
よって何の問題も無く結界を通り抜けられたという訳じゃ。

それでは立ち話は此処までにしようかのう?
まずは地上界における儂のアジトに向かうとしよう」

 アポクリファルは高速飛行魔法を行使した。
 その身体を魔力の光が包み込む。
 そして次の瞬間、まるで流星の如く跳ね飛んだ。
 リュシウムは翼を羽ばたかせ、その後にぴたりと続いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は逃げます

恵葉
ファンタジー
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

偽の聖女に用はないと言われて追放されましたが、その後王国は大変なことになっているようです

新野乃花(大舟)
恋愛
王子であるロレットは、聖女の血を引く存在であるユミリアに聖女の能力を期待し、婚約関係を強引に結んだ。しかしロレットはその力を引き出すことができなかったため、ユミリアの事を偽りの聖女だと罵ったのちに婚約破棄を告げ、そのまま追放してしまう。…しかしその後、ユミリアはあるきっかけから聖女の力を開花させることとなり、その代償としてロレットは大きく後悔させられることとなるのだった。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ~小さいからって何もできないわけじゃない!~

渡琉兎
ファンタジー
◆『第4回次世代ファンタジーカップ』にて優秀賞受賞! ◆05/22 18:00 ~ 05/28 09:00 HOTランキングで1位になりました!5日間と15時間の維持、皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!! 誰もが神から授かったスキルを活かして生活する世界。 スキルを尊重する、という教えなのだが、年々その教えは損なわれていき、いつしかスキルの強弱でその人を判断する者が多くなってきた。 テイマー一家のリドル・ブリードに転生した元日本人の六井吾郎(むついごろう)は、領主として名を馳せているブリード家の嫡男だった。 リドルもブリード家の例に漏れることなくテイマーのスキルを授かったのだが、その特性に問題があった。 小型オンリーテイム。 大型の魔獣が強い、役に立つと言われる時代となり、小型魔獣しかテイムできないリドルは、家族からも、領民からも、侮られる存在になってしまう。 嫡男でありながら次期当主にはなれないと宣言されたリドルは、それだけではなくブリード家の領地の中でも開拓が進んでいない辺境の地を開拓するよう言い渡されてしまう。 しかしリドルに不安はなかった。 「いこうか。レオ、ルナ」 「ガウ!」 「ミー!」 アイスフェンリルの赤ちゃん、レオ。 フレイムパンサーの赤ちゃん、ルナ。 実は伝説級の存在である二匹の赤ちゃん魔獣と共に、リドルは様々な小型魔獣と、前世で得た知識を駆使して、辺境の地を開拓していく!

義妹がいればそれだけでいいのでしょう?

新野乃花(大舟)
恋愛
ソリッド伯爵はミラというれっきとした婚約者を持っておきながら、妹であるセレーナにばかり気をかけていた。そのセレーナも兄が自分の事を溺愛しているということをよくわかっているため、ことあるごとに被害者面をしてミラの事を悪者にし、自分を悲劇のヒロインであると演出していた。そんなある日の事、伯爵はセレーナさえいてくれればなんでもいいという考えから、ミラの事を一方的に婚約破棄してしまう…。それこそが自らを滅ぼす第一歩になるとも知らず…。

左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。

処理中です...