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400話 崩壊する兄

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「しかし静里菜せりな
前の時とは違って、
俺はこの精神世界に来た瞬間、
君に膝枕されている訳なんだが…
どうしてなんだ?」

 細かい事かも知れないが、
 俺はふっと出た疑問をそのまま静里菜せりなにぶつけた。

「それはですね…
兄さんは前の時よりも、
とてもお疲れだったみたいで、
この精神世界に来てからも
なかなか目を覚まされなかったのですよ。

兄さんはとても気持ち良さそうな
お顔で眠っておられました。
その顔をずっと見ていたらわたし、
兄さんの事がとても愛おしくなって…
寝てる間に何て失礼とは思いつつも…
勝手ながら膝枕をさせて頂きました」

「…あっ、ああ…」

 俺は恥ずかしさの余り、
 赤面した顔を両手で覆った。

 静里菜せりなが言う
 俺が気持良よさそうな顔をしていた原因は、
 俺がこの精神世界に来る前の状況からであろう。
 つまり…
 俺がカエデに膝枕され優しく額を撫でられていた、
 あの状況からである。

 兄は絶対、妹に甘やかされ負けたりしない!

 などと俺は抗って言ってはいたが、何のことは無い。
 俺はカエデにバブみを感じてオギャっていたのだ。
 静里菜せりなが見たという俺の
 ”とても気持ちよさそうな顔”が
 その事実を完全に物語っていた…。

 何という体たらく…兄として完全な失格である。
 しかもそんな情けない顔をカエデだけで無く、
 静里菜せりなにまで見られてしまった。
 兄としては切腹モノであろう。
 兄は妹を甘やかすものであって
 決して妹に甘やかされてはならないのだ。
 それなのに…俺は…俺は!

「兄さん、もしかして…
気持ちよさそうな寝顔を
わたしに見られて恥ずかしかったのですね?」

「あ、ああ…」

 流石は妹歴16年の察しが良い我が妹、静里菜せりなである。
 俺の考えている事など手に取るように解るのだ。
 俺は観念して素直に認めた。

「わたしは気にしませんよ。
わたしの大好きな兄さん。
どんな兄さんでもわたしは受け入れますから。
でも…」

「…で、でも?」

「ごめんなさい…。
わたし…恥ずかしがっている兄さんを見て、
つい…”可愛い”と思ってしまいました…」

「う…うあわあああああーー!?」

 俺は顔を更に赤面させた。
 まるで燃える様に熱い。
 むしろこのまま燃え尽きて、
 消えてしまいたい…。

 兄が妹に”可愛い”などと言われる何て!
 兄は妹を可愛がるものであって!
 妹に可愛がられては決していけないのである!

 そういえばポーラ姫にも可愛いと言われていた気がするぞ?
 言わずもがなカエデには完全に可愛がられていたし!
 そして妹歴16年の静里菜せりなにも!?

 うおおおおおおおおあああああああーー!!??
 あにのほうそくがみだれる!?
 このままでは兄のゲシュタルトが崩壊してしまうッ!!
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