391 / 556
第391話 勝者には褒美を
しおりを挟む
「あ…れ…?」
突如俺の身体から力が抜ける。
何だこれは?
両腕が重い、支えられない。
肩からだらんと力無く垂れ下がる俺の左右の腕。
「う…?」
続いて両足の力も抜けていく。
立って居られない。
俺はなす術も無く両膝を着いた。
「はあ…はあ…
こ、これは一体…?」
「ケイガお兄様、
これはわたくしが行使した光属性の身体能力低下魔法、
『減衰光』の効果ですわ」
全身から力が抜けた俺に言葉を掛けるポーラ姫。
「…身体能力低下魔法だって?
でもポーラ、
君は俺に向かって魔法を唱えた様子は無かった筈…?
魔法は、魔法の言葉である『言霊』を
対象の相手にも聞こえる様にはっきりと口にしなければ、
その相手に魔法の効果は発現しない筈…?
それがこの異世界エゾン・レイギスの魔法の法則じゃ無いのか?」
「お兄様、確かに自分以外の他者へ魔法を行使する際は
明確に相手の耳に聞こえる様に『言霊』を唱える必要がありますわ。
でも相手に聞こえないぐらいの小声でも”世界の事象”には干渉できます。
つまり魔法自体は効果を発現するのです。
威力はとても小さくなりますけれど。
でも一度の威力は小さくても重ね掛けすれば…どうでしょうか?」
「そうか…
君は俺の隙を見ながら、
小声で身体能力低下魔法を何度も掛けていたということか…
つまり俺は時間をかけて魔法の効果を積み重ねられて…
たった今、魔法の効果が一気に表れて全身から力が抜けた…
そういう訳なんだな?」
「その通りですわケイガお兄様。
ちなみにわたくしが掛けた『減衰光』の魔法は計7回です。
そしてお兄様が今の着られている衣服は
魔法耐性が付加された戦闘服では無く普通の衣服。
お兄様自身にも魔法の耐性は在りますけれど、
この様な方法で身体能力低下魔法を掛けられれば…
身体を動けなくされてしまう事は
避けようが無いということです。
お兄様はお強いですわ。
でも…魔法による戦いを侮っているふしがあります。
攻撃魔法による正面からの戦い以外にも、
こういった隠密の魔法行使で相手に勝利するという搦め手もありますの。
そして戦場では無く、
気を抜かれてリラックスされた自室で、
親しき者に偽装した敵が
この様な搦め手で襲い掛かって来れば、
ひとたまりもありませんわ。
わたくしは王族として生まれた経験から、
お兄様がこの様な魔法の搦め手で大変な目に合わないか危惧しておりました。
といっても言葉にして説明するよりも実際に見て、
経験してもらうのがわかりやすいかと思いましたの。
そこで大変失礼と承知で…
この様にわたくしが実践させて頂きましたわ」
ポーラ姫はそう話を締めると俺の胸に手のひらを添えた。
「ケイガお兄様。
この度の戦いを実践とするなら…
これで王手、
つまりわたくしの勝ちという事になりますでしょうか?」
「ああ…ポーラ、完全に君の勝ちだ。
魔法戦闘にはこういった手もあるんだな…
ありがとう、とても良い経験になったよ」
ポーラ姫は生まれながらの王族であり聖王女を務める此の国の要人。
庶民である俺には想像することも出来ない、
無数の殺意にこれまで晒されて来たのであろう。
その経験から…こういった方法での襲撃もあり得るのだと、
彼女は身をもって俺に教えてくれたのである。
…良かった。
つまり欲望全力全開で
スケスケネグリジェ姿で
俺に本気で夜這いを掛けて来るお姫様なんていなかったんだ。
「それではお兄様。
勝者には褒美を、
それがセカイの理ですわ。
ですから、わたくしもご褒美を下さいませ…」
ポーラ姫はそう述べると、
俺の頬に口付けをした。
突如俺の身体から力が抜ける。
何だこれは?
両腕が重い、支えられない。
肩からだらんと力無く垂れ下がる俺の左右の腕。
「う…?」
続いて両足の力も抜けていく。
立って居られない。
俺はなす術も無く両膝を着いた。
「はあ…はあ…
こ、これは一体…?」
「ケイガお兄様、
これはわたくしが行使した光属性の身体能力低下魔法、
『減衰光』の効果ですわ」
全身から力が抜けた俺に言葉を掛けるポーラ姫。
「…身体能力低下魔法だって?
でもポーラ、
君は俺に向かって魔法を唱えた様子は無かった筈…?
魔法は、魔法の言葉である『言霊』を
対象の相手にも聞こえる様にはっきりと口にしなければ、
その相手に魔法の効果は発現しない筈…?
それがこの異世界エゾン・レイギスの魔法の法則じゃ無いのか?」
「お兄様、確かに自分以外の他者へ魔法を行使する際は
明確に相手の耳に聞こえる様に『言霊』を唱える必要がありますわ。
でも相手に聞こえないぐらいの小声でも”世界の事象”には干渉できます。
つまり魔法自体は効果を発現するのです。
威力はとても小さくなりますけれど。
でも一度の威力は小さくても重ね掛けすれば…どうでしょうか?」
「そうか…
君は俺の隙を見ながら、
小声で身体能力低下魔法を何度も掛けていたということか…
つまり俺は時間をかけて魔法の効果を積み重ねられて…
たった今、魔法の効果が一気に表れて全身から力が抜けた…
そういう訳なんだな?」
「その通りですわケイガお兄様。
ちなみにわたくしが掛けた『減衰光』の魔法は計7回です。
そしてお兄様が今の着られている衣服は
魔法耐性が付加された戦闘服では無く普通の衣服。
お兄様自身にも魔法の耐性は在りますけれど、
この様な方法で身体能力低下魔法を掛けられれば…
身体を動けなくされてしまう事は
避けようが無いということです。
お兄様はお強いですわ。
でも…魔法による戦いを侮っているふしがあります。
攻撃魔法による正面からの戦い以外にも、
こういった隠密の魔法行使で相手に勝利するという搦め手もありますの。
そして戦場では無く、
気を抜かれてリラックスされた自室で、
親しき者に偽装した敵が
この様な搦め手で襲い掛かって来れば、
ひとたまりもありませんわ。
わたくしは王族として生まれた経験から、
お兄様がこの様な魔法の搦め手で大変な目に合わないか危惧しておりました。
といっても言葉にして説明するよりも実際に見て、
経験してもらうのがわかりやすいかと思いましたの。
そこで大変失礼と承知で…
この様にわたくしが実践させて頂きましたわ」
ポーラ姫はそう話を締めると俺の胸に手のひらを添えた。
「ケイガお兄様。
この度の戦いを実践とするなら…
これで王手、
つまりわたくしの勝ちという事になりますでしょうか?」
「ああ…ポーラ、完全に君の勝ちだ。
魔法戦闘にはこういった手もあるんだな…
ありがとう、とても良い経験になったよ」
ポーラ姫は生まれながらの王族であり聖王女を務める此の国の要人。
庶民である俺には想像することも出来ない、
無数の殺意にこれまで晒されて来たのであろう。
その経験から…こういった方法での襲撃もあり得るのだと、
彼女は身をもって俺に教えてくれたのである。
…良かった。
つまり欲望全力全開で
スケスケネグリジェ姿で
俺に本気で夜這いを掛けて来るお姫様なんていなかったんだ。
「それではお兄様。
勝者には褒美を、
それがセカイの理ですわ。
ですから、わたくしもご褒美を下さいませ…」
ポーラ姫はそう述べると、
俺の頬に口付けをした。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話
白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。
世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。
その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。
裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。
だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。
そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!!
感想大歓迎です!
※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~
桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。
そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。
頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります!
エメルロ一族には重大な秘密があり……。
そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる