シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進

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第378話 流れのままに

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「テレーズ、非常に残念だが……お前との婚約はなかったことにして欲しい」

「そんな……アルフ様。突然、婚約破棄だなんて……!」


 侯爵令息であるアルフ・デモンは私の婚約者だ。伯爵家である我がリジェント家とは仲が良かったはずなのに。どうしていきなりこんなことに……。

「済まないな、テレーズ。婚約破棄は決定事項なんだ。分かって欲しい……」


 アルフは申し訳なさそうにしているけれど、その意志は固いようだった。

「そ、そんな……う、うぐ……」

「テレーズ……済まない」


 私は涙をこぼしてしまった。アルフはそんな私を見て寄り添う決断をしたのか、一瞬、前に踏み出したけれど、それ以上は進まなかった。どうして寄り添ってくれないんだろう……私はこんなに悲しんでいるのに。


「理由は……理由はなんなのですか!?」

「それは……」


 アルフは少し考え込んでいた。どうしてここで考える必要があるんだろうか? 婚約破棄が決定しているなら、理由なんてすぐに出て来ないとおかしいのに……。

「お前との身分が違うからだよ。私は侯爵令息でお前は伯爵令嬢でしかない。身分が低い者とは……結婚する意味がないと踏んだからだ」

「そ、そんな……そんな理由で……!」


 今さらそんなことを言われても困るのは確かだった。身分が違う結婚になることは、婚約の前から分かっているんだから。それならば、その時に言ってくれた方が良かった。私はこうしてアルフと共に過ごして行くことを考えていたのに。

 その為の花嫁修業だって行っていた。決して楽な修行ではない。時にはくじけそうになったところを、彼の隣に立てる嬉しさで賄っていたことだってあるのに。私は権力なんてどうでも良かった。ただ、アルフと一緒になりたいと昔から考えていたのだ。

 それが現実になった時は……本当に嬉しかった。なのに……!


「お父様やお母様たちにも迷惑を掛けることになります……慰謝料は支払ってくださいね。アルフ様……」

「婚約破棄は認めてくれるということか?」

「認めたくはありませんが……仕方ありません。アルフ様がそう言うのでしたら」

「そうか、済まないな。しかし、残念ながら慰謝料も支払うわけにはいかないんだ。済まないがこれも分かってくれ」

「えっ!?」

 あまりのことに私は思わず立ち上がってしまう。慰謝料すら支払えないってどういうこと!?」

「婚約破棄と慰謝料の未払いを許してほしい。テレーズ……一生、私を恨んでくれても構わない。本当に済まない」

「アルフ様……これは一体……」

「……」


 アルフ様がそれ以上語ることはなかった。私はその日の内に屋敷から追い出されてしまった。でもあり得ない……あの方が……アルフ様がこんな理不尽な婚約破棄をするなんて。
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