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第374話 人の国の業

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「異世界人であるケイガ兄君様あにぎみさま、ユウカ。
そして魔族のディラム殿。
この国には他の人間国家には無いちょっと特殊な事情があるんだ。
少し長い話になるけど聞いてくれるかな?」

 俺たちはこくりと頷いて同意した。
 ミリィは続けて口を開いた。

「ボク達が住まうエクスラント聖王国は
エゾンリア大陸に存在する5つの大国のうちのひとつ。
500年前、大魔王を倒した光の勇者が当時の聖王国の新たな聖王に迎えられて以来、
光の勇者の末裔が治める国でもある。
精霊様たちが異世界から召喚した人間に
専用の装備を授ける光の神殿が領内にあるのは、
光の精霊様が自身に連なる光の勇者の血縁でこの地に建立こんりゅうしたと伝えられている。
必然的に異世界から召喚された人間は全て聖王国に集められることになる。
だから聖王国は異世界から召喚された人間を
補佐する義務を精霊様達から与えられている。
エクスラント聖王国は昔から精霊様との結び付きが強い国でもあるんだ。

だけどこの強い結び付きは他の国からすれば面白くない要因でもあるんだ。
精霊様からえこひいきされた国とか、
500年前の王族が上手く勇者をたらし込んで自分達の血に引き入れたとか、
散々な言われようさ。

でも当時の記録だと大魔王を倒した光の勇者は
世界中の国々から脅威と見なされ危うく殺されそうになった所を、
聖王国が間一髪で迎え入れたって経緯があるんだよ。
まったく…人間って何時の時代も勝手な生き物だよね。

でも補足するなら…
光の勇者の血を引くエクスラント王族は、
稀有けうな属性である光の魔力を強く持って生まれることもある。
領内の光の神殿には精霊様の作り出した強力な専用装備があって
装備を扱うことが出来る異世界人は聖王国に所属しているに等しい。
以上のことから戦力的に脅威を感じていることもあるかも知れないね。

以上のことから他の人間国家は隙あらばボク達の寝首を掻こうと画策している。
光の勇者の血を引く王族の拉致
光の神殿が所在する領土侵略、
このふたつは特に警戒しないといけない行為だ。
実際に過去に何度か未遂事件が起きているからね。
ただ、人間の国々は大魔王率いる魔族軍と戦うという大義名分があるから
あからさまに正規軍を動かして攻め入って来るなんてことは無いけどね。

ただ、ボク達が魔竜軍と連動して魔界に進軍ともなれば、
その隙に聖王国本土が人間の他国に侵攻されてしまうのは充分に有り得る話だ。

つまり…
魔界に乗り込んで魔竜軍と共に復活前の大魔王を討つと言うのは
とても良いアイディアではあるんだけど、
今のままではとても実行できない事になる。
聖王国の防衛のためはかなり大きな戦力が必要になるだろう。
でも聖王国の全戦力無くて、
魔界の猛者相手に渡り合えるのかなあとボクは懐疑的だよ?」
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