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第373話 同盟とは

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「しかしディラムいいのか?
この地図からしても魔界の貴重な情報だろう。
そして魔界の細かい情報まで。
それを俺たちにホイホイと渡しても」

「ナルガネ・ケイガ。
貴様達は大切な同盟者。
これぐらいの情報を出し惜しんでどうする。
そして同盟者同士、情報の共有は不可欠であろう。
それではいざという時に連携が取れぬでは無いか?」

「…確かにもっともだ。
俺のほうが変な事を言っていたみたいで済まない」

 人間の国家同士の同盟というのはお互いの胸の内、
 本音を隠した腹芸が基本である。
 情報は小出しにして自分の方を優位に保ちながらも
 相手の協力をなるべく多く引き出させる。

 国家クラスとまではいかなくても、
 会社同士の取引、提携、
 そして個の人間同士の付き合いに至るまで…
 人間とはそういう生き物なのかも知れない。
 実際に俺は上司に裏切られて会社を追われて、
 身に染みて思い知ったのだ。

 だが俺はその苦い記憶に捕らわれて…
 間違った考えに陥っていたのかも知れないな。
 それを気付かせてくれたのが人間ではなく
 魔族であるディラムというのは何とも皮肉である。

「ディラム。
お前が先ほど言った魔界に乗り込んで
復活前で力が完全でない大魔王を討つという考えは俺はかなり良いと思った。
それに魔界の中でなら精霊の結界が無いから
魔力数値1000以上の魔族、
つまり、魔竜将の援護も受けられるということだろう?
それなら大魔王に付く魔界五軍将を
魔竜将やその友人の魔騎士将が抑えてくれるということも出来るよな。
魔導将が大魔王に付いたとしても、
それなら俺たちが戦う魔界五軍将はひとりで済むことになるからな。

俺は地上で復活後の大魔王と戦うより、
俺たちに取ってかなり有利だと感じた。
ポーラニア姫殿下、シノブ団長、お二人はどう思いますか?」

俺はディラムの前もあって二人に恐縮した言葉で問いかけた。

「ケイガ様、わたくしも良いと思いますわ」

「私も殿下と同じく」

「ミリィ…ミリフィア公爵はどう思います?」

「…あ、うん。
興奮の余りちょっと意識が飛んでしまっていたね…済まない。
ケイガ様、ボクも異論はないよ。

…はっ!?
いやちょっと待ってくれないか!
ポーラニア殿下、
ケイガ団長、
ボク達は肝心な人間国家同士の事情を忘れていないかい?」

「ああ、そうでしたわミリフィア公爵」

「私としたことが…すっかり失念をしておりました」

 ん?
 人間国家同士の事情?
 俺はこの異世界エゾン・レイギスに来てから三週間、
 この世界の様々な知識を学んだが
 エクスラント聖王国以外の人間の国については
 余り学んでいなかった気がする…。
 魔法や魔族等の魔族との戦いについての学習が主だったからなあ。
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