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第366話 会談

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「魔騎士ディラム殿。
遠路はるばる、このエクスラント聖王国へとよくぞおいで下さいました。
わたくしはこのエクスラント聖王国の国王代理を務めるポーラニアと申します」

 エクスラント聖王国の王城、ホウリシア城。
 城の謁見の間にポーラ姫の声が響き渡った。
 いつもの小鳥を思わせるような可憐な声とはまるで違う印象の、
 凛とした王者の風格を思わせる声である。

「国王代理である姫殿下自らお会い下さるとは光栄の限りです。
我は魔界五軍将のひとり、
魔竜将ガルヴァーヴ様の副官を務める魔騎士ディラムと申します」

 漆黒の鎧に身を包み、黒いマントを背に垂らした
 魔族の騎士ディラムはポーラ姫に対して頭を下げて一礼した。
 臣下の礼では無い、あくまで礼である。
 これは国家級同士の会談である為に、その身分は同等であるのだ。

 ああ、そうじゃなくてもこれは…
 聖王国の国王代理と魔竜軍を統べる魔竜将の副官、
 それぞれのナンバー2同士の会談ということでも有るのか?

 個の戦闘力で言うならば高位魔族であるディラムのほうに圧倒的に分がある。
 だがポーラ姫…いやポーラ姫殿下は国王代理として聖王国の全戦力を司る存在。
 そして光の勇者である優羽花ゆうか、光の精霊ヒカリ、そして俺も居る。
 総合的な戦闘力ならばディラムに決して引けを取らない。
 国家レベルの対話を対等に行うには当然、
 対等な武力も不可欠なのである。

「ディラム殿、ケイガ様より簡潔に話は聞いております。
我が聖王国と…
いや正確にはケイガ様、ユウカ様、ヒカリ様を主軸に、
そのバックアップを務める我が聖王国も含めて
貴殿が属する魔竜軍が同盟を結びたいと言う話でしたね」

「いえこれは魔族と人間の考えの違いから生じた誤解故、ご容赦頂きたい。
我はケイガ殿よりその考えの差異を指摘されて改めております故。
ケイガ殿が所属するエクスラント聖王国と正式な同盟を結びたいのです」

 むっ、今のは…
 ポーラ姫殿下がディラムから謝罪の言葉を引き出して
 聖王国と魔竜軍が対等であると認識させた様にも見えた。
 まさに外交戦といった所だろうか。

「しかしディラム殿。
貴殿の主である魔竜将殿が、
魔界を統べる大魔王直属の魔界五軍将というのは
私達人間にとっては五百年前からの常識なのです。
そんな魔竜将殿が率いる魔竜軍が、
自分達の長である大魔王を倒す為に
人間の国の、
しかも貴殿たち魔族の軍と
最前線で睨みあってきた我がエクスラント聖王国と同盟を結ぶなど…
誠に失礼ではありますが、
わたくしにはにわかには信じられないのです」
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