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第365話 正規入城

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 俺とディラムの目線が合った。
 俺は戦々恐々としていたこともあって内心かなり動揺した。
 だがそんな俺に対してディラムは特に気にすることも無く口を開いた。

「…流石は光の勇者ユウカ。
一回り大きな体躯のケイガを背負ってもこれ程の高速度での飛行魔法とはな。

人間は持ちうる魔力量的に大多数の者は高速飛行魔法は使えないことは、
魔族にも周知の事実。
しかしこの様に飛行魔法が使える者がサポートして補うとは見事な判断だ。
我はまだ同盟をしている訳では無い故、
味方では無い者に対しての空中戦の備えをするのは当然であろうからな」

 魔騎士ディラムは俺が思っていたよりも
 俺の考えを肯定的に捉えてくれた様だった。
 魔族は強い力こそが全ての価値観。
 見栄などという虚構よりも、
 力というじつが優先されるという事だろうか?
 とにかく、同盟に対してのマイナスの心象が無いのなら何よりであると
 俺は、ほっと胸を撫で下ろした。

「兄様!
ホウリイにもうすぐ着くよ!」

 シダレの言葉に俺は正面を見やった。
 遠くに聖王都ホウリイの町影が映った。

「兄様ー、シノブ団長からの伝言魔法ですー。
一度城門前に降りて欲しいとのことですー」

「わかったカエデ。
優羽花ゆうか、頼む。
ディラムも俺たちに続いてくれ」

「オッケーお兄」

「了解した」

 白い巨大な城壁が街を取り囲み、
 その街の中央には巨大な白亜の城が佇んでいる。
 エクスラント王国の王都ホウリイ。
 俺たちは城門の上空に静止した。

「ケイガ兄様…あそこ…」

 ツツジが城門正門前を指さした。

 全身鎧姿フルプレートの女騎士がこちらに手を振っている。
 姫騎士団プリンセスナイツの団長シノブさんである。
 そして彼女の後ろにはモミジ、イチョウ、クレハ、イロハが整列していた。
 なるほど、姫騎士団プリンセスナイツ全員でディラムを迎えるという事か。

 ディラムは魔族ではあるが、
 彼の立場は人間の国で例えるなら大使と同等…いや外務大臣か?
 …確かディラムは魔竜軍の中では魔竜将に次ぐと言っていた気がするぞ。
 つまりそれ以上の立場なのかも知れない。
 ならば聖王国としては、
 空中から飛行魔法という形での入城などという無粋な真似をさせる事はなく、
 正門から正規の入場を持って迎えるということになるのだろう。
 俺は空中から門の後ろの王城への広小路の道をちらりと見たが
 その道の両側には聖王国の兵士がずらりと並んでいた。

 あー…
 これは地球で言う所の外国のお偉いさんをお迎えする時の感じだよなあ。

 そう、これは聖王国と魔竜軍との正式な外交なのだ。
 俺はせいぜい会社同士の商談ぐらいしか経験が無いが、
 国家級レベルともなれば儀礼を持った大層な規模となる。
 俺は頭では解っているつもりだったが、
 現実的には理解が足りなかった様である。
 俺は正門前に降下を始めた優羽花ゆうかの後ろで気を引き締め直した。
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