上 下
365 / 556

第365話 正規入城

しおりを挟む
 俺とディラムの目線が合った。
 俺は戦々恐々としていたこともあって内心かなり動揺した。
 だがそんな俺に対してディラムは特に気にすることも無く口を開いた。

「…流石は光の勇者ユウカ。
一回り大きな体躯のケイガを背負ってもこれ程の高速度での飛行魔法とはな。

人間は持ちうる魔力量的に大多数の者は高速飛行魔法は使えないことは、
魔族にも周知の事実。
しかしこの様に飛行魔法が使える者がサポートして補うとは見事な判断だ。
我はまだ同盟をしている訳では無い故、
味方では無い者に対しての空中戦の備えをするのは当然であろうからな」

 魔騎士ディラムは俺が思っていたよりも
 俺の考えを肯定的に捉えてくれた様だった。
 魔族は強い力こそが全ての価値観。
 見栄などという虚構よりも、
 力というじつが優先されるという事だろうか?
 とにかく、同盟に対してのマイナスの心象が無いのなら何よりであると
 俺は、ほっと胸を撫で下ろした。

「兄様!
ホウリイにもうすぐ着くよ!」

 シダレの言葉に俺は正面を見やった。
 遠くに聖王都ホウリイの町影が映った。

「兄様ー、シノブ団長からの伝言魔法ですー。
一度城門前に降りて欲しいとのことですー」

「わかったカエデ。
優羽花ゆうか、頼む。
ディラムも俺たちに続いてくれ」

「オッケーお兄」

「了解した」

 白い巨大な城壁が街を取り囲み、
 その街の中央には巨大な白亜の城が佇んでいる。
 エクスラント王国の王都ホウリイ。
 俺たちは城門の上空に静止した。

「ケイガ兄様…あそこ…」

 ツツジが城門正門前を指さした。

 全身鎧姿フルプレートの女騎士がこちらに手を振っている。
 姫騎士団プリンセスナイツの団長シノブさんである。
 そして彼女の後ろにはモミジ、イチョウ、クレハ、イロハが整列していた。
 なるほど、姫騎士団プリンセスナイツ全員でディラムを迎えるという事か。

 ディラムは魔族ではあるが、
 彼の立場は人間の国で例えるなら大使と同等…いや外務大臣か?
 …確かディラムは魔竜軍の中では魔竜将に次ぐと言っていた気がするぞ。
 つまりそれ以上の立場なのかも知れない。
 ならば聖王国としては、
 空中から飛行魔法という形での入城などという無粋な真似をさせる事はなく、
 正門から正規の入場を持って迎えるということになるのだろう。
 俺は空中から門の後ろの王城への広小路の道をちらりと見たが
 その道の両側には聖王国の兵士がずらりと並んでいた。

 あー…
 これは地球で言う所の外国のお偉いさんをお迎えする時の感じだよなあ。

 そう、これは聖王国と魔竜軍との正式な外交なのだ。
 俺はせいぜい会社同士の商談ぐらいしか経験が無いが、
 国家級レベルともなれば儀礼を持った大層な規模となる。
 俺は頭では解っているつもりだったが、
 現実的には理解が足りなかった様である。
 俺は正門前に降下を始めた優羽花ゆうかの後ろで気を引き締め直した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

私のバラ色ではない人生

野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。 だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。 そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。 ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。 だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、 既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。 ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。

世界最速の『魔法陣使い』~ハズレ固有魔法【速記術】で追放された俺は、古代魔法として廃れゆく『魔法陣』を高速展開して魔導士街道を駆け上がる~

葵すもも
ファンタジー
 十五歳の誕生日、人々は神から『魔力』と『固有魔法』を授かる。  固有魔法【焔の魔法剣】の名家――レヴィストロース家の長男として生まれたジルベール・レヴィストロースには、世継ぎとして大きな期待がかかっていた。  しかし、【焔の魔法剣】に選ばれたのは長男のジルベールではなく、次男のセドリックだった。  ジルベールに授けられた固有魔法は――【速記術】――  明らかに戦闘向きではない固有魔法を与えられたジルベールは、一族の恥さらしとして、家を追放されてしまう。  一日にして富も地位も、そして「大魔導になる」という夢も失ったジルベールは、辿り着いた山小屋で、詠唱魔法が主流となり現在では失われつつあった古代魔法――『魔法陣』の魔導書を見つける。  ジルベールは無為な時間を浪費するのように【速記術】を用いて『魔法陣』の模写に勤しむ毎日を送るが、そんな生活も半年が過ぎた頃、森の中を少女の悲鳴が木霊した。  ジルベールは修道服に身を包んだ少女――レリア・シルメリアを助けるべく上級魔導士と相対するが、攻撃魔法を使えないジルベールは劣勢を強いられ、ついには相手の魔法詠唱が完成してしまう。  男の怒声にも似た詠唱が鳴り響き、全てを諦めたその瞬間、ジルベールの脳裏に浮かんだのは、失意の中、何千回、何万回と模写を繰り返した――『魔法陣』だった。  これは家を追われ絶望のどん底に突き落とされたジルベールが、ハズレ固有魔法と思われた【速記術】を駆使して、仲間と共に世界最速の『魔法陣』使いへと成り上がっていく、そんな物語。 -------- ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...