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第364話 見栄
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「いや…違うか…?
今の優羽花は
俺と同じくポーラ姫に用意してもらった戦闘服に身を包んでいる。
身体の重要な個所を覆う、軽装鎧。
我が妹の胸も当然鎧に覆われている。
つまり俺の手が優羽花の板の様な胸に触れても、
鎧と区別が付かないだろう。
つまり俺が気付かない内に、
優羽花の板の様な胸に触れていた可能性があるということか…?
…優羽花すまない。
俺はお前の板の様な胸を触れてしまったことを
此処に深く謝罪させてくれ!」
俺は妹歴16年の妹に深く頭を下げた。
「…その”板”ってのは
すっごく引っかかるんですけど…。
でも、まあ、お兄がそこまで謝るのなら…
許すのは今回だけなんだからね!」
優羽花は自分の背中で陳謝する俺に振り向いて、
許しの言葉を返してくれた。
ふう…とりあえず、
我が妹の怒りの矛を収めることには成功した。
何しろ今の俺は優羽花に生殺与奪の権を握られているも同然。
妹が怒りの感情を爆発させて俺をその背から振り落とそうとすれば、
地上へ真っ逆さまに墜落して俺は瞬く間に命を失ってしまうだろう。
俺は命の危機から脱出したのである。
しかし俺は妹の背中に身体を預けるという
兄としても男としても情けない姿勢になっていることに変わりは無い。
…どうしてこうなった?
俺は高速移動飛行魔法が使えない。
対して魔族であるディラムは使える。
案内役の俺たちが彼より足が遅く、待たせる形になってしまうのは
同盟の交渉相手であるディラムに対しての
心象が余り良くないだろうと俺は判断し、
飛行魔法が使える優羽花とヒカリに
飛行魔法を使えない全員を運んでもらおうと考えた。
その結果がこれである。
俺は自分自身の醜態をディラムの前に晒している訳だ。
彼の俺に対する心象は最悪であろう。
そもそもディラムへの心象というのも、
所詮は俺の見栄でしか無いのではないか?
高速移動飛行魔法が使えない自分を軽く見られるのが嫌とか、
そういうせこましい感情があったのでは無いか?
大体クラシアの町へは気を足に纏って地上を高速で走って来たでは無いか。
少々ディラムを待たせることになってもそのほうが良かったのでは無いのか?
大体人間のほとんどが高速飛行魔法を使えないのは、
魔族であるディラムならばご存じの筈である。
俺の魔力数値など、見通しの眼鏡でお見通しの筈なのだから。
つまり俺は…自身のつまらない見栄で、
魔族との同盟の交渉にマイナスの要素を与えてしまったのでは無いか…?
なら俺は…聖王国に、そして人間種に損害を与えてしまったのでは…?
そんな後悔の念に俺は捉われてしまった。
俺は最後尾を飛行しているディラムの様子を覗うべく、
恐る恐る目線を移した。
今の優羽花は
俺と同じくポーラ姫に用意してもらった戦闘服に身を包んでいる。
身体の重要な個所を覆う、軽装鎧。
我が妹の胸も当然鎧に覆われている。
つまり俺の手が優羽花の板の様な胸に触れても、
鎧と区別が付かないだろう。
つまり俺が気付かない内に、
優羽花の板の様な胸に触れていた可能性があるということか…?
…優羽花すまない。
俺はお前の板の様な胸を触れてしまったことを
此処に深く謝罪させてくれ!」
俺は妹歴16年の妹に深く頭を下げた。
「…その”板”ってのは
すっごく引っかかるんですけど…。
でも、まあ、お兄がそこまで謝るのなら…
許すのは今回だけなんだからね!」
優羽花は自分の背中で陳謝する俺に振り向いて、
許しの言葉を返してくれた。
ふう…とりあえず、
我が妹の怒りの矛を収めることには成功した。
何しろ今の俺は優羽花に生殺与奪の権を握られているも同然。
妹が怒りの感情を爆発させて俺をその背から振り落とそうとすれば、
地上へ真っ逆さまに墜落して俺は瞬く間に命を失ってしまうだろう。
俺は命の危機から脱出したのである。
しかし俺は妹の背中に身体を預けるという
兄としても男としても情けない姿勢になっていることに変わりは無い。
…どうしてこうなった?
俺は高速移動飛行魔法が使えない。
対して魔族であるディラムは使える。
案内役の俺たちが彼より足が遅く、待たせる形になってしまうのは
同盟の交渉相手であるディラムに対しての
心象が余り良くないだろうと俺は判断し、
飛行魔法が使える優羽花とヒカリに
飛行魔法を使えない全員を運んでもらおうと考えた。
その結果がこれである。
俺は自分自身の醜態をディラムの前に晒している訳だ。
彼の俺に対する心象は最悪であろう。
そもそもディラムへの心象というのも、
所詮は俺の見栄でしか無いのではないか?
高速移動飛行魔法が使えない自分を軽く見られるのが嫌とか、
そういうせこましい感情があったのでは無いか?
大体クラシアの町へは気を足に纏って地上を高速で走って来たでは無いか。
少々ディラムを待たせることになってもそのほうが良かったのでは無いのか?
大体人間のほとんどが高速飛行魔法を使えないのは、
魔族であるディラムならばご存じの筈である。
俺の魔力数値など、見通しの眼鏡でお見通しの筈なのだから。
つまり俺は…自身のつまらない見栄で、
魔族との同盟の交渉にマイナスの要素を与えてしまったのでは無いか…?
なら俺は…聖王国に、そして人間種に損害を与えてしまったのでは…?
そんな後悔の念に俺は捉われてしまった。
俺は最後尾を飛行しているディラムの様子を覗うべく、
恐る恐る目線を移した。
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