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第361話 効果過大

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 ヒカリは先程までの大人の姿から…
 髪からその肌、着ている服、
 頭の先から足の先に至るまで
 白づくめの元の幼い少女の姿に戻った。

 ヒカリ幼女の姿が妹歴16年の我が妹、優羽花ゆうかの瞳に映りこむ。
 その瞬間、優羽花ゆうかの虚ろだった瞳に光が戻った。
 そして蒼白だった顔に生気が戻る。
 ぽかんと空いていた口の端が釣り上がって、
 満面の笑顔になった。

「ああっー!
ヒカリちゃんだあーー!
あたしの大好きな!
可愛いようじょの!
可愛い妹の!
ヒカリちゃんだああーー!!」

 優羽花ゆうかはヒカリに抱き付いて、
 その幼い身体を強く抱きしめた。

「ああっー!
ヒカリちゃんヒカリちゃんヒカリちゃん!
あたしのヒカリちゃんが帰って来たあ!」

「んんー…
優羽花ゆうか…ちょっとくるしい…」

「ヒカリちゃんのぷにぷにしたお肌!
ヒカリちゃんのちっちゃなお手て!
ヒカリちゃんのサラサラな髪!
ヒカリちゃんのミルクの様な匂い!
全てが最高!
最高なのお!

はぁはぁ!
すりすり!
くんかくんか!
はぁはぁはぁ!
すりりすりすり!
くんかくんかくんか!」

 呼吸を荒げながらヒカリを抱き締めて、
 幼女の肌を髪を匂いを全力で堪能する我が妹。

 こ れ は ひ ど い


 優羽花ゆうかは元来無性の可愛いもの好き、
 そして心の底では密かに可愛い妹が欲しいと願っていた。
 そんな優羽花ゆうかにとってヒカリはまさに理想の存在だった。
 だがヒカリは俺と共に戦う為に、戦う為の体躯である大人の姿に成長した。
 優羽花ゆうかはそんなヒカリに絶望して心が折れてしまっていた。

 俺は優羽花ゆうかの回復を狙って
 ヒカリに元の幼い少女の姿に戻って貰うことにした。
 その狙いは見事に的中…
 乾いた砂に水を吸わせるが如く、優羽花ゆうかの気力は回復した。
 むしろ効果が有り過ぎて俺は怖い。

 しかしそんな優羽花ゆうかと入れ替わるかのように
 ヒカリの瞳から光が失われていく…
 まさに目が死んでいるといった感じである。

 これはいけない。
 俺は優羽花ゆうかをヒカリから引き離すべくその肩に手を掛けた。

「おい、優羽花ゆうか
もうその辺で…良いんじゃないか?」

「…何よお兄!
あたしまだまだヒカリちゃんを堪能し足りないんですけど?」

 優羽花ゆうかはまるで親の仇を見るかのような厳しい目つきで俺を見た。

 いや何その目!?
 俺お前にそんな悪いこと言っていないと思うんですが?
 16年間同じ屋根の下で暮らした妹にそんな塩対応されるタイミングでしたか?

 俺は優羽花ゆうかのヒカリと俺に対する余りの対応の差に仰天した。
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