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第347話 自爆

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「ユウカ、
わたしはこの世界エゾン・レイギスを創造した精霊の一柱ひとはしら、光の精霊。
わたしたち精霊自身で取り決めた世界の法則ルールに従って、
精霊としてはこのセカイに直接干渉する行為、
すなわち自らの手でこの世界に住まう生き物と戦う事が出来ない。
しかし大魔王の攻撃によって命があぶなくなった
おにいちゃんを助けるためにどうしても戦うひつようがあった。
そこでわたしは精霊から人間と魔力契約をした”召喚存在”になりかわった。
今のわたしは契約者であるおにいちゃんと同等の力と技を模倣トレースする存在。
その戦闘スタイルもおにいちゃんと同じ”かくとうじゅつ”。
ようじょの短い手足のままではおにいちゃんのかくとうじゅつを
上手く模倣トレース出来ない。
だから身体を急速成長させて大人の身体になる必要があった。

 でもこの大人の身体は大きい分、
 幼女の身体に比べてエネルギー消費は大きい。
 戦闘を行わないのであれば幼女の姿のほうがてきせつ。
 だから戦いが終わったら元のすがたに戻るつもりだった」

「えっ…つまりそれって…
ヒカリちゃん!
ちっちゃくて可愛い
わたしの理想の妹の姿に戻ってくれるってことなのお!?」

 優羽花ゆうかは俺の手を振り払うと、
 両手を組んでヒカリを
 期待に満ちた熱い視線で見つめながら喜々とした声を上げた。
 いやなにその豹変ぶり!
 さっきまで虫の息で俺の手を握っていたのが嘘の様である。
 例えるなら宗教の教祖の信者…
 いやここは大天使ヒカリの信徒と言ったところだろうか。

「だけどユウカの今のたいどをみて考えがかわった。
ユウカは元の幼女の姿のままのわたしに
なにかといってべたべたしてくる。
だきついてくる。
いっしょにごはんたべようとする。
いっしょにおふろにはいとうとする。
よるはいっしょにねようとする。
わたしは光の勇者と連なる光の精霊。
光の勇者であるユウカを心底拒否することは無い。
だけどこうも一日中べたべたされては…さすがにつかれる。

でも今の大人の身体のわたしをユウカはしんそこいやがっている。
いまのわたしにべたべたすることはまずないとりかいした。
だからしばらくわたしはこのままでいようと考えを変えた」

「えっ…ええっ…
そ、そんなあ…」

 優羽花ゆうかの瞳から希望の光が消えていく。
 そしてその場に力無くへたり込んだ。
 つまりこれは…一切の自重をせずに
 自分の欲望のままに行動しまくった我が妹が招いた自爆行為なのだ。
 まさに自業自得という奴である。
 俺は虚ろな目で虚空を見つめる優羽花ゆうかを哀れみながら、
 明日は我が身、やはり自身の欲望は自重しなければならないと強く思った。
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