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第341話 置き土産

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「ぐはあああアア…やってくれたなア…人間共オオオオ…」

 魔力心臓核マナハートコアを失い、
 完全にその動きを止めた筈の大魔王の巨人から声が発せられた。
 巨人の身体は巨大な炎に包まれて、
 まるで火に焼べられた薪の様に灰塵と化していった。

 巨人が燃え尽きたその後には、
 燃え盛る業火の如き形状をした”巨大な魔力の塊”が虚空に浮かんでいた。

「…人間共ヨ…
仮初めの肉体とはいエ…
よくぞ余を倒しタ…
…だガ…余ハ…只では死なヌ…
この肉体の全てを魔力に変えテ…
ここから見える地平の彼方まデ…
全てを焼き払ってくれよウ…
余の置き土産…受け取るがいい…グボァー!」

 魔力の塊は収束し、ひとつの魔力球へと形を変える。
 それは砲弾の如く超高速で跳ね跳んで、
 巨大な彗星と化した。

「…なっ!?
地ノ宮流気士術ちのみやりゅうきしじゅつ・五の型、流星りゅうせい!」

「リュウセイ!」

流星光斬メテオスラッシャー!」

 俺とヒカリと優羽花ゆうかは咄嗟に技を繰り出して、
 大魔王の魔力球を受け止めた。
 だが…この凄まじい力は…?
 お、圧される!?

閃魔鎌鼬せんまかまいたち!」

 ヴィシルが放った魔力が込められた真空波が俺たちの技に加わって、
 大魔王の魔力球を何とか押し留めた。

「兄者サマ、アタシもっ!」

「ヴィシル、助太刀ありがたい!
うおおおおお!」

 俺は両手ひらを強く突き出して気を更に集中させて、
 全力で『流星りゅうせい』を放ち続ける。
 俺、ヒカリ、優羽花ゆうか、ヴィシル、
 計四人の合計の力の数値は一万を確実に超えているだろう。
 だが大魔王の置き土産の魔力球はそれを全く物ともせず、じわじわと圧して来る。

 大魔王の巨人の魔力数値は5000、
 本来ならば俺たちの合計値一万を超えるのは有り得ない筈である。
 だがこの大魔王の置き土産の魔力球は、
 残った肉体を燃やし尽くし魔力に換えた攻撃。
 云わば後先を考えない自爆攻撃、特攻攻撃と同種のものである。
 それならば爆発的に凄まじい火力を生むのは想像に難くない…
 魔力数値一万を越えても何もおかしくは無いということになるのか!?

 魔力球の凄まじい力は確実に俺たちを圧していく…
 まずい…
 このままでは俺たちはそう持たない。
 でも俺たちだけならば…此の状態からでも、
 全力で回避すれば魔力球の直撃をかわし切ることは出来るかもしれない。
 だがそれでは…
 俺たちの背後にあるクラシアの町は吹っ飛んでしまう。
 そして大魔王が最後に言った言葉の通りなら…
 ここから見える地平線の彼方までの景色の全てが焼け野原になってしまうだろう。

 どうする?
 このままこの状態を続けていれば、
 いずれ力尽きて…
 俺たちも後ろの町も全てまとめて吹き飛んでしまう!
 そうなる前に、俺達だけでも逃げて生き延びるしか答えは無いのか?
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