シスターヴレイヴ！～上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます～

第338話 隙

「流星光斬メテオスラッシャー！」

　優羽花ゆうかの声と共に
　彼女の手に握られていた光の剣の刀身は十数メートルの長さまで伸びる。
　我が妹は光の刀身を大魔王の肘上の部分の、
　魔力を纏っていない箇所に向けて瞬く間に二閃させた。

「ぐおおおおおおッ！！」

　大魔王の巨大な二つの腕が肘から切り裂かれて宙を舞った。
　優羽花ゆうかは間髪入れず、
　刀身が伸びたままの光の剣を大魔王の頭へ目掛けて真横一直線に振るった。

　がぎぃいんっ！

　だが優羽花ゆうかが振りかぶった光の刀身は、
　大魔王の顎あぎとに噛み挟まれて、
　文字通り喰い止められた。

「くっ！？」

　優羽花ゆうかは光の剣を引こうとするが
　大魔王の顎あぎとに凄まじい力で挟まれてびくともしない。
　攻撃の手を止められた我が妹を見据える大魔王の瞳が、
　これまでに無かった赤色の光に輝いた。

　ずどおおおん！

　大魔王の瞳から放たれた赤色の破壊光線が優羽花ゆうかを直撃する。
　だが我が妹は自身を光球状の防御光壁に包ませて、
　大魔王の攻撃を弾き散らした。
　これが勇者の防御技か。
　しかし大魔王の攻撃はこれだけでは終わらない。
　再び両目が赤く輝いて光線が発射され、
　防御光壁を張ったままの優羽花ゆうかに赤い破壊の光を浴びせ続ける。

　優羽花ゆうかと大魔王の凄まじい攻防。
　火球や光線、光剣が飛び交うそれは
　まるで怪獣特撮映画の如きである。
　互いにフルパワーで激突する勇者と大魔王の二者は
　この場に完全に釘付けとなった。

　…大魔王の隙は、ここだ！
　俺は高めた気を両足に集中させた。

「地ノ宮流気士術ちのみやりゅうきしじゅつ・二の型、飛燕ひえん・改！」

　俺は両足に集中させた気をロケットの様に噴射させて音速飛翔、
　皮膚装甲が吹き飛んで中が丸見えになった大魔王の胸の中に飛び込んだ。

　魔力数値5000を誇る大魔王の巨人。
　真正面から戦ってはまともにダメージを与えることすら困難である。
　だがそんな大魔王に有効にダメージを与える方法がある。
　魔力数値で遙かに劣る俺がずっと狙っていた戦法、
　すなわち巨人の右胸の箇所にある魔力心臓核マナハートコアを撃ち抜くことである。
　まあ実際には何度も返り討ちにあっていた訳だが…
　優羽花ゆうかが大魔王を足止めしてくれたおかげで、
　ようやく此処に辿り着くことが出来たという訳だ。
　俺は大魔王の魔力心臓核マナハートコアそのものと化している魔言将イルーラの前に立った。