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第337話 五連攻撃

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「ごめんよ兄者サマ…足手まといになって…
でもアタシは…あのまま何もせずに兄者サマを見捨てることは出来なくて…」

「ああ、君の気持はわかってる…ありがとうな」

 俺は申し訳そうにしている彼女の頭を撫でて落ち着かせた。
 おおう…これがアニメやゲームでよくある猫耳少女の耳の感触なのか…?
 これは…柔らかくて…とても良いぞ…はっ!?
 べ別にこれは不可抗力であって、
 狙って触れたわけじゃあないんだからね!
 俺は頭の中で必死に弁解をすると、
 ヴィシルの猫耳の柔らかな感触を振り払って顔を引き締めた。

「ヴィシルはここで休んでいてくれ、それじゃあ俺も行ってくる」

「兄者サマ、イルーラ様を…皆を…どうかお願い…」

「…ああ!」

 俺は大地を強く踏み込んで高速で跳んだ。
 目指すは大魔王と勇者が一大決戦を行っている戦場。

 大魔王と優羽花ゆうかの戦いは拮抗していた。
 互いの近距離攻撃ショートレンジ中距離攻撃ミドルレンジ長距離攻撃ロングレンジが交錯する。
 だがどちらも相手に決定的なダメージを与えることなく戦闘は続いていた。
 この膠着状態を打破すべく俺とヒカリは戦場に飛び込んだ!

地ノ宮流気士術ちのみやりゅうきしじゅつ・五の型、流星りゅうせい!」

「リュウセイ!」

 俺とヒカリは両手のひらを突き出して気功波を放った。
 大魔王は右手を振るい二発の『流星りゅうせい』を撃墜する。
 だがその隙を突いて優羽花ゆうかが星剣を振りかぶる。
 大魔王は左手を振るって迎え撃つが、
 俺たちの迎撃で体制が崩れていた為、
 そのまま星剣のパワーに圧され後ずさった。

「お兄!?
もう大丈夫なの?」

「ああ、問題ない。
それよりも優羽花ゆうか
あの巨人は真正面からぶつかるよりも、
もっと有効な倒し方がある。
だから優羽花ゆうかには少しの間…
巨人の攻撃を引き付けて足止めをお願いしても良いか?
その間に俺が大魔王の隙を突いて一気に止めを刺す」

「あたしには細かいことはよくわからないけど…
わかったよお兄!」

優羽花ゆうかは星剣を構えると大魔王に向けて高速で翔けた。

「かああああッ!」

 大魔王は口を開けると火球弾プラズマを放った。
 間髪入れずもう一発、更に一発、計三発の火球弾プラズマ優羽花ゆうかに殺到する。

「やああー!」

優羽花ゆうかは光の剣を振るい火球弾プラズマの悉くを撃墜する。
だが超火力の火球弾プラズマ三連撃は
さしもの勇者とて防戦一方になり足をその場に踏み留めた。
大魔王はその隙を逃さず、
自身の両腕に魔力の光を纏わせて優羽花ゆうかを挟み込むように突き出した。
例えるなら巨大な二本の光槍ランスの交差攻撃。
大魔王は最初から五連撃のつもりだったのである。
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