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第323話 14人目

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「そりゃあ…決まっているだろう。
自分より強い男に嫁いで強い子孫を残す。
あんたの嫁になるってことだよ…」

「う、うわあっ!?」

 獣人型じゅうじんがた魔族ヴィシルは
 頬を赤らめながら俺に耳打ちする様に寄り添うと、
 囁くように言葉を述べた。
 彼女の熱い吐息を自分の耳に感じた俺は
 思わず驚きの声を上げてしまった。

 やっ、やっぱりそうでしたかああああ!!
 うん…知ってた。
 『倒した男の妻にならければならない…それが一族の掟』
 その掟はゲームやアニメではある趣の王道的なものでもある。
 『倒した男の妹にならければならない』
 と、言う予想外のものがあった以上、もうひとつの方法は
 王道的なものが来るのでは…と俺は考えていた。
 まさに俺の予感的中である。

 と言いつつも俺は彼女の囁く様な仕草にドキっとしてしまい
 またしても動揺してしまった。
 俺は彼女に動揺しっぱなし…いや動揺しかしていない!
 だが、25歳童貞がこんなことされて動じ無いほうがおかしいのである。
 だから俺は悪くない。
 悪くないぞ優羽花ゆうかあ!
 俺は無実だ!
 ふいに脳裏に浮かんだに妹歴16年のツンデレ妹が、
 俺をジト目で見下して来たので心の中で必死に弁明する俺であった。

「まあ、アタシはそっちでもいいけど。
あっでも…いきなり男女の関係になるのはちょっと気恥ずかしいよね。
嫁になるとしても、まずは兄妹の関係で慣れてからだよな?
とにかく…これからは妹としてお願いするよケイガ兄者様!」

 ヴィシルは頬を赤らめてはにかみながら言葉を述べた。
 いやちょっと待ってください!
 何かさらっと凄いこと言いませんでしたか?
 貴女見た目勇ましい感じで
 いかにもな女戦士といった感じなのに…
 いちいち言動とか、ちょっと可愛くないですか?
 やめてくださいそういう意外な伏兵みたいなことは!
 俺はこういうことに一切慣れていない25歳童貞なんですよ?
 そんないちいちドキっとすることしないで下さいよヴィシルさん!

「ああ、こちらこそよろしくなヴィシル」

 だが俺はそんな心の中の動揺とは裏腹に
 彼女を妹としてすんなり受け入れる言葉で答えた。
 何で受け入れたし!
 もう妹は14人目だしもう慣れているとでも言うのか俺?
 身体は慣れてきても心は未だに全く慣れておらんぞ俺!
 いい加減にしろ馬鹿!

 しかし俺には彼女を妹として迎えることを否定する言葉は
 まるで浮かばなかったのも事実。
 俺は所詮、生粋の兄なのかも知れない。
 ならば俺は…
 妹になりたいと言う女性が居れば、
 黙って受け入れるしかないのだろうなあ。
 俺は達観とも、諦めとも取れる心境に至った。
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