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第298話 大魔王が現れた!

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 RPGゲームを始めて直ぐ、
 レベルも装備も弱い状態で町の外をウロウロしていたら、
 いきなりラスボスの大魔王が現れた!
 そんなゲームがあればクソゲー確定であろう。
 しかしこの異世界エゾン・レイギスはゲームでは無い。
 現実は非情である。

 確かにRPGゲーム開始時における、
 主人公の住んでいる地域に生息している敵モンスターが
 ゲーム世界で最弱と言うのは都合の良すぎる話だ。
 現実的には強いモンスターが居てもおかしくは無いだろう。
 かといって、この異世界に来て二つ目の町の外で
 魔族の総大将である『大魔王』と出くわすなんてあんまりである。
 現実さん…ちょいと非情過ぎるんじゃないですかねえ…?

 この異世界エゾン・レイギスはゲームでは無く現実のセカイである。
 ゲームの様に敵モンスターを倒すことで経験値を得ることも出来ないし、
 お金もアイテムもドロップしない。
 経験値を溜めてレベルアップして強くなることも出来なければ、
 新しい魔法や技やスキル等を覚えることも出来ない。
 強くなるには日々の鍛錬が必要である。
 魔法は勉強して覚えていくしかないのである。
 そしてステータスウィンドウオープン!
 などと言って敵味方の能力が
 一瞬で丸わかりというゲームの様な真似も出来る訳が無い。

 だがこの世界エゾン・レイギスには「見通しの眼鏡スカウターレンズ」という、
 まるでゲームやアニメに出て来る様なとても便利なアイテムがある。
 元々は精霊が異世界から召喚した人間に与えた専用装備のひとつだったが、
 エゾン・レイギスの人間がその技術を写し取って量産することで
 世界中に普及するに至った経緯を持っている。

 エゾン・レイギスは魔力が基準となっているセカイ。
 高い魔力を持っていれば、より強靭な肉体になる。
 そして強力な魔法を使うことが出来る。
 つまり魔力が高ければ高いほど強いのだ。
 そのこの世界において最も重要である魔力を数値化して測定できるのが、
 この「見通しの眼鏡スカウターレンズ」なのだ。
 流石にゲームのアイテムの様に相手のステータスを全て測定できるとか
 そんな虫の良すぎる能力は無いものの、
 俺からすれば相手の強さを計るには十分すぎる能力である。

 しかしこの便利する能力によって俺は目の前の「大魔王」を名乗る巨人が、
 魔力数値5000という圧倒的な魔力を持っていることを
 思い知らされているのである…。
 これは大抵の人間ならば戦意喪失するのでは無いだろうか?
 逆に知らなければ良かったという事もあるかも知れない。
 本来ならば相手の力量を数値化して知り得ることなど出来ないのだから。
 これは「見通しの眼鏡スカウターレンズ」が便利さに対するリスクとも言えるだろう。

 正直俺だって逃げ出せるものなら逃げ出したいものである。
 だがそうすれば俺の背後にあるクラシアの町は、
 大魔王に容赦なく踏み潰されてしまうだろう。

 だったら…
 此処は腹を決めて、
 戦うしかないだろう!
 俺は拳を握り締め、戦闘の構えを取った。
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