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第294話 蔦の巨人

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「キサマ…その物言いに立ち振る舞い、
我があるじイルーラ様ではないな、何者だ!」

「アタイたちはイルーラ様の忠実な僕、
何処の魔馬の骨だかわかんない奴の命令なんて聞けないよ!」

「何者かは損じませぬが、直ちにイルーラ様を解放なさい!

「ワレらのあるじの身体をその様に勝手に扱う無礼…許せぬ!」

 エクゼヴ達はイルーラの身体を動かす”何者か”の命令を一蹴した。
 彼等は俺なんかよりイルーラと長い付き合いがあるのだ。
 その違和感に気付かない訳が無いということである。
 
「余がお前たちのあるじ
身体と声で持って命令しているにも関わらずそれを断るか。
些事さじ”にこだる愚か共め、
命令無視で全員処刑と言いたい所だが…
ならば、こういった趣向はどうだ?」

 イルーラは右手に握った巨大な杖を高く掲げた。

 ばひゅん!

 その瞬間、杖から巨大なつたの様なものが伸びてイルーラの身体に絡みついた。

「…あ…うう……逃げて…みんな…」

 イルーラのか細い声が響いた。
 俺は彼女が意識を取り戻した様に見えた。
 それは配下のエクゼヴ達も同様だった様である。

「「「イルーラ様!!!」」」

エクゼヴ達は一斉にイルーラに駆け寄った。
その瞬間、俺に冷たいものが走った。

「…逃げろっ!」

 俺はイルーラに駆け寄ろうとするエクゼヴ達に向かって叫んだ。
 だが次の刹那、イルーラが持った杖から
 無数のつたが凄まじい速度で放たれた。

「何っ!
これは!?」」

「おおお!?」

「グアアっ!?」

 エクゼヴ、ガグーン、ライゼガの身体を瞬く間につたが絡めとる。
 俺の声が届いて一瞬動きが止まったヴィシルのみが、つたの攻撃を間一髪回避した。
 イルーラの杖から伸びた無数のつたは凄まじい勢いで伸びて、
 エクゼヴ達の周囲に待機していた下位魔族達にも遅いかかった。
 総数370余りの下位魔族を瞬く間に全て絡み取った無数のつたの群れは一気に杖へと戻り、
 その内にイルーラ、エクゼヴ、ガグーン、ライゼガ達ごと取り込んで包み込み、
 巨大なつたの塊と化した。

 俺の目に掛けた『見通しの眼鏡スカウターレンズ』の魔力数値が急激に上昇する。
 1000、2000、3000…今まで見たことも無い凄まじい数値。
 魔力数値の上昇と共につたの塊はうごいて別の形へと変形していく。

 ごばっ
 ごぼぼっ
 ぎゅうううむっ

 耳障りな音と共につたの塊は、
 土くれの巨人ゴウレムよりも遙かに巨大な巨人の姿へと変わった。
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