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第292話 魔言将の軍の気質

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「…なるほど…
…そういうことなのね…
…ケイガ、今回の事は…
…魔族と人間の価値観の差に気付かなかった私に責があるわ…
…どうか許してほしい…」

 イルーラは俺に丁寧に頭を下げた。

「いや、そこまでしなくても良いから!
俺も貴女に言葉を荒げて失礼な物言いをして…
貴女は俺を色々と気遣ってくれていたのに…こちらこそ申し訳ない」

 俺はイルーラを諫める言葉を掛けた。
 彼女は魔界五軍将のひとりである高位魔族である。
 ここに居るエクゼヴ達配下の中位魔族の前で
 頭を下げさせるのは俺としても本位では無い。
 それはエクゼヴ達にとってもあまり心地よくはない光景であろうから。

 俺は元の世界で引籠りになる前は社会人だったので
 イルーラ達の人間もとい魔族関係の今後について
 悪い方向へと行かない様に色々と考えてしまった。
 彼女たちは魔族、人間である俺に取っては敵の筈なのだが
 どうにも憎むべき相手には思えなかった。
 故に俺はこの様な思考になっている。

「ナルガネ・ケイガよ、
そう気にやむことは無いぞ。
イルーラ様は高位魔族ではあらせられるが、
もとより腰の低いお方なのだ。
それぐらいのことは普通だ」

「えっ、そうなのか?」

「イルーラ様は私の様に、はぐれ魔族となった者でも
躊躇することなく直属の配下にしてくれる御方。
力のみが優先される魔族の中でも類まれなる深き慈悲を持たれた御方なのです」

「故にイルーラ様は魔族の種に関わらず人望を集める存在であられるのサ。
アタイとガグーン、ライゼガと、
見た目がバラバラの魔族がここに一同に介しているのは
まさにそういうことだねェ」

「ワレラ、
イルーラ様の配下である中位魔族は
すべからず慈悲深きイルーラ様に恩義がある身。
故にワレラは常にイルーラ様の御御心に叶うように働くのだ」

 なるほど、エクゼヴ達が人間に対して節度を持って対応していた様に見えたのは
 彼等の将である魔言将まげんしょうイルーラの意思が大きく影響しているということか?
 俺が感じた限り、イルーラは人間を滅ぼして我がものとしようとする
 大魔王直属の高位魔族とは思えない優しい気質の持ち主であった。
 それがそのまま配下の魔族の思考に、行動に作用しているということであろう。

「…私は長き眠りに着いている大魔王様のご意思を感じ取り…
…言葉にして皆に伝える大魔王様の代言だいげん魔言将まげんしょうイルーラ…
…私はあくまで代言だいげんであり、私自身が尊ばれる存在では無い…
…だから私は奢ることなく…
…同胞の魔族に対して隔てなく気配って接している…
…それだけのことだから…」

 イルーラは配下の魔族の自身を敬う言葉に対して、謙遜の言葉で答えた。
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