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第291話 回復魔法の才

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「…童貞振りを誇れ…か…。
俺には全く思いもしなかった。
なるほど、魔族においてはそれが普通なんだな。
立場が、種族が、世界が違えば…
ヒトの考え方そして価値観はまるで変わる…
そういうことなんだな」

 俺は倒れ伏していた地面から上半身を起こすと、
 そのまま勢いよく立ち上がった。

「くくく、
どうやら気勢を取り戻したようだなナルガネ・ケイガ。
キサマは我を倒した強い人間、そうでなければ困るというもの」

 魔族エクゼヴは笑みを浮かべて俺に言葉を返した。
 彼の言葉を聞くたびに何故か
 妹歴16年の我がツンデレ妹、優羽花ゆうかのことが思い出される。
 やはり魔族はツンデレ…?
 いや違うだろう!
 これは流石に錯覚だろうと俺はその考えを再度流した。

「ふむ…人間と私達では考え方が違う、
価値観が違うという事は理解しているつもりでしたが
実際聞いてみるとなかなか滑稽なものですな」

「つまり人間界では童貞や処女は恥ずかしいことなのか?
アハハ、ならアタイもそうなるねえ!」

「ワレは既に妻と子を持つ身故に、
童貞は永遠に持てぬ強さの証明…
眩しい響きの言葉よのう」

 鬼人型オーガがた魔族ガグーン、
 獣人型じゅうじんがた魔族ヴィシル、
 獣型けものがた魔族ライゼガ
 エクゼヴの仲間の三人の魔族が次々と言葉を述べる。

「おお、目覚めたか我が同士達よ」

「エクゼヴ殿から掛けて頂いた回復魔法のおかげです。
感謝いたします」

『我の『段階回復リジェネーション』は
回復には時間が掛かるが故に本調子からは程遠いだろうが、
今は魔界に戻るまでの応急処置として我慢してくれ」

 エクゼヴは回復魔法も使えるのか?
 魔族が回復魔法を使うと言うのは俺のイメージには無かったが
 人間より遙かに高い魔力を持つ魔族ならば、
 むしろ使えて当然というべきか。
 ちなみに複数の個体に一斉に効果を与える
 全体掛け魔法はそれだけでハイレベルな魔法である。

 俺はこの異世界エゾン・レイギスに飛ばされてから三週間、
 魔法学者であるミリィの元で魔法を勉強し
 幾種の魔法を使えるようになったが全体掛けの回復魔法は使えない。
 これは俺に回復魔法の才があまり無い事に起因している。

 回復魔法の才に恵まれているものは相当希少レアらしく、
 光属性回復魔法『光回復ライトヒーリング』を
 全体掛けの回復魔法として行使できるポーラ姫は
 人間界ではトップクラスの回復魔法の使い手として周辺国に名を轟かせている。
 『聖王女』の肩書きは伊達では無いということである。


「…ささ、ケイガお兄様!
回復魔法の指導についてはミリィお姉様では無く、
指折りの回復魔法の才覚を持つと自他ともに認める
このわたくしにお任せくださいませ!」

「ちょ、ちょっと待てポーラ!
そんなに腕を引っ張らなくても…
ちょっ、そこは君の部屋じゃ無いのか?
うおお姫様のベッド初めてみたあ!?」

「お兄様が日々ミリィお姉様から魔法を学ばれている
ミリィお姉様の書斎はいわばミリィお姉様の本拠ベース
魔法の指導は自身の本拠ベースを使うのが基本ですわ。
わたくしの本拠ベースはもちろん自分の部屋ですの。
ささ、そこのベッドに腰かけてくださいませ!」

「だからあポーラ!
魔法の指導にかこつけて自分の欲望を優先するなっているだろう!」

 回復魔法を修得するのは色んな意味で大変だったなあ…。
 俺の脳裏にはポーラ姫とミリィとのやり取りが不意に再生された。
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