上 下
290 / 556

第290話 価値観の差

しおりを挟む
魔言将まげんしょうイルーラ…
何故、俺が童貞であることを魔界中に知らしめる必要があった…?
ど、どうして…そんな酷いことをする…?
やはりお前は…冷酷非道な魔族だったということか…?」

 俺は倒れたままイルーラ向けて手を伸ばしながら問いかけた。
 恥ずかしさと絶望に顔を真っ赤にして涙すら流した。
 こんな辱めは生まれて初めての事だった。
 俺はイルーラの仕打ちから
 彼女を人間の敵である冷酷な魔族だと認識し直して、
 それにふさわしい冷徹な言葉遣いで問いている。

「…童貞や処女が強い力を持つというのは…
…このエゾン・レイギスの常識…
…貴方が童貞であることは魔界中に周知させる必要があった…
…ただそれだけのことなのに…
…私には貴方が何故酷い事と言う理由がわからない…」

「それだけのことって…アンタなあ!」

 俺は全く悪びれることなく返事をしたイルーラに思わず怒りの言葉を吐いた。

「…恐れながらイルーラ様…
このエクゼヴめが具申しますに…
人間と我等魔族の価値観は違うと思われます」

「…価値観…?」

「はっ、イルーラ様。
我等魔族に取っては強い力こそが全てでございます。
このエゾン・レイギスにおいて、
童貞や処女はそうではない者よりも遙かに強大な魔力を持つ存在。
そして性欲などというつまらぬ快楽に溺れぬ心の強さをも併せ持つ存在。
強い存在が称えられる魔族に取って童貞や処女はまさに誉ほまれであります。
ですが、人間に取っては必ずしもそうではないと…我は聞いたことはあるのです。
人間に取って童貞や処女は恥ずかしいこと、秘匿すべきことである…と」

「…どうして…?
…童貞や処女で無くなってしまえば力を大きく失ってしまう…
…そもそも”性交”とは婚姻の後に行うべく行為…
…子を作り子孫を残す行為…
…だけど婚姻もしていないのに”性交”をしていることが…
…人間に取っての価値観だとでも言うの…?
…わからない…
…婚姻をしないで性交をしてしまっては
…力も心も弱く…
…ただの”あばずれ”では無いの…?」

「はっ、このエクゼヴめもわかりませぬが…
そこが人間という生物の程度の低さということでありましょうか」

 魔族エクゼヴは毅然とした態度でそう答えると、
 俺の方へと向き直して口を開いた。

「ナルガネ・ケイガ。
キサマが何をそんなに羞恥しているのかが我にはわからぬ。
だがくだらぬ人間の価値観に左右されることは無いぞ?
キサマは強いのだ、変身して全力を出した我を寄せ付けぬほどにな。
誇るが良いその『童貞』振りを…強い力と強い心と清き身体を」

 先程の俺と激闘を繰り広げた敵であったエクゼヴ。
 だが彼はそんな事が在った事を全く忘れる程に…
 俺にいたわりの言葉を掛けてくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...