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第290話 価値観の差
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「魔言将イルーラ…
何故、俺が童貞であることを魔界中に知らしめる必要があった…?
ど、どうして…そんな酷いことをする…?
やはりお前は…冷酷非道な魔族だったということか…?」
俺は倒れたままイルーラ向けて手を伸ばしながら問いかけた。
恥ずかしさと絶望に顔を真っ赤にして涙すら流した。
こんな辱めは生まれて初めての事だった。
俺はイルーラの仕打ちから
彼女を人間の敵である冷酷な魔族だと認識し直して、
それにふさわしい冷徹な言葉遣いで問いている。
「…童貞や処女が強い力を持つというのは…
…このエゾン・レイギスの常識…
…貴方が童貞であることは魔界中に周知させる必要があった…
…ただそれだけのことなのに…
…私には貴方が何故酷い事と言う理由がわからない…」
「それだけのことって…アンタなあ!」
俺は全く悪びれることなく返事をしたイルーラに思わず怒りの言葉を吐いた。
「…恐れながらイルーラ様…
このエクゼヴめが具申しますに…
人間と我等魔族の価値観は違うと思われます」
「…価値観…?」
「はっ、イルーラ様。
我等魔族に取っては強い力こそが全てでございます。
このエゾン・レイギスにおいて、
童貞や処女はそうではない者よりも遙かに強大な魔力を持つ存在。
そして性欲などというつまらぬ快楽に溺れぬ心の強さをも併せ持つ存在。
強い存在が称えられる魔族に取って童貞や処女はまさに誉であります。
ですが、人間に取っては必ずしもそうではないと…我は聞いたことはあるのです。
人間に取って童貞や処女は恥ずかしいこと、秘匿すべきことである…と」
「…どうして…?
…童貞や処女で無くなってしまえば力を大きく失ってしまう…
…そもそも”性交”とは婚姻の後に行うべく行為…
…子を作り子孫を残す行為…
…だけど婚姻もしていないのに”性交”をしていることが…
…人間に取っての価値観だとでも言うの…?
…わからない…
…婚姻をしないで性交をしてしまっては
…力も心も弱く…
…ただの”あばずれ”では無いの…?」
「はっ、このエクゼヴめもわかりませぬが…
そこが人間という生物の程度の低さということでありましょうか」
魔族エクゼヴは毅然とした態度でそう答えると、
俺の方へと向き直して口を開いた。
「ナルガネ・ケイガ。
キサマが何をそんなに羞恥しているのかが我にはわからぬ。
だがくだらぬ人間の価値観に左右されることは無いぞ?
キサマは強いのだ、変身して全力を出した我を寄せ付けぬほどにな。
誇るが良いその『童貞』振りを…強い力と強い心と清き身体を」
先程の俺と激闘を繰り広げた敵であったエクゼヴ。
だが彼はそんな事が在った事を全く忘れる程に…
俺にいたわりの言葉を掛けてくれた。
何故、俺が童貞であることを魔界中に知らしめる必要があった…?
ど、どうして…そんな酷いことをする…?
やはりお前は…冷酷非道な魔族だったということか…?」
俺は倒れたままイルーラ向けて手を伸ばしながら問いかけた。
恥ずかしさと絶望に顔を真っ赤にして涙すら流した。
こんな辱めは生まれて初めての事だった。
俺はイルーラの仕打ちから
彼女を人間の敵である冷酷な魔族だと認識し直して、
それにふさわしい冷徹な言葉遣いで問いている。
「…童貞や処女が強い力を持つというのは…
…このエゾン・レイギスの常識…
…貴方が童貞であることは魔界中に周知させる必要があった…
…ただそれだけのことなのに…
…私には貴方が何故酷い事と言う理由がわからない…」
「それだけのことって…アンタなあ!」
俺は全く悪びれることなく返事をしたイルーラに思わず怒りの言葉を吐いた。
「…恐れながらイルーラ様…
このエクゼヴめが具申しますに…
人間と我等魔族の価値観は違うと思われます」
「…価値観…?」
「はっ、イルーラ様。
我等魔族に取っては強い力こそが全てでございます。
このエゾン・レイギスにおいて、
童貞や処女はそうではない者よりも遙かに強大な魔力を持つ存在。
そして性欲などというつまらぬ快楽に溺れぬ心の強さをも併せ持つ存在。
強い存在が称えられる魔族に取って童貞や処女はまさに誉であります。
ですが、人間に取っては必ずしもそうではないと…我は聞いたことはあるのです。
人間に取って童貞や処女は恥ずかしいこと、秘匿すべきことである…と」
「…どうして…?
…童貞や処女で無くなってしまえば力を大きく失ってしまう…
…そもそも”性交”とは婚姻の後に行うべく行為…
…子を作り子孫を残す行為…
…だけど婚姻もしていないのに”性交”をしていることが…
…人間に取っての価値観だとでも言うの…?
…わからない…
…婚姻をしないで性交をしてしまっては
…力も心も弱く…
…ただの”あばずれ”では無いの…?」
「はっ、このエクゼヴめもわかりませぬが…
そこが人間という生物の程度の低さということでありましょうか」
魔族エクゼヴは毅然とした態度でそう答えると、
俺の方へと向き直して口を開いた。
「ナルガネ・ケイガ。
キサマが何をそんなに羞恥しているのかが我にはわからぬ。
だがくだらぬ人間の価値観に左右されることは無いぞ?
キサマは強いのだ、変身して全力を出した我を寄せ付けぬほどにな。
誇るが良いその『童貞』振りを…強い力と強い心と清き身体を」
先程の俺と激闘を繰り広げた敵であったエクゼヴ。
だが彼はそんな事が在った事を全く忘れる程に…
俺にいたわりの言葉を掛けてくれた。
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