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第276話 増援

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「くくく…キサマはもう気付いているだろうから先に言っておくぞ。
我の力は既に絶頂ピークを過ぎ、魔力数値はどんどん減っている。
全力魔力フルパワーの反動と…先程キサマの一撃でやられた影響だな…」

 魔族エクゼヴは憔悴しょうすいしきった表情かおを浮かべながら、
 力無く言葉を述べる。
 対峙する鳴鐘 慧河なるがね けいが
 『見通しの眼鏡スカウターレンズ』に映し出されるエクゼヴの魔力数値は、
 彼自身が言った通り620まで低下していた。

「最早、我ひとりの力では万が一キサマには敵うまい…。
だが我は、魔界五軍将イルーラ様に地上侵攻の魔軍を統べる将軍を任された者。
このまま黙って終わる訳にはいかんのだ!
出でるがいい、我がしもべたる全ての魔軍よッ!」」

 魔族エクゼヴは高々と両手をかかげた。
 その瞬間…彼と慧河けいがが対峙しているクラシア街城壁の最上部、
 その眼下にエクゼヴが待機させていた
 下位魔族で構成された地上侵攻魔族軍の陣形の中に土煙が上がった。
 それと同時に、慧河けいがの『見通しの眼鏡スカウターレンズ』に
 新たな反応が無数に出現した。

「…何っ!?
これは?」

 魔族軍の陣中の土の中から、
 しかばねの兵、
 泥で形作られた人形ひとがた
 岩石で構成された巨人が
 次々と現れる。

「こいつらは…骸骨スケルトン泥人形マッドール土くれの巨人ゴウレムの増援か!?」

 そして魔族軍の陣中の真上の空に浮かんでいた灰色の雲の中から、
 煙状の身体のフードを羽織った人影、
 翼を生やした魔物の形をした石像が
 次々と現れて魔族軍の陣中に降下する。

悪霊ファントム石魔ガーゴイル の増援も…?
なるほど、地中と雲の中に
控えの戦力を潜ませていたということなのか!?

 土くれの巨人ゴウレム、4体。
 骸骨スケルトン、142体。
 泥人形マッドール、152体。
 悪霊ファントム、47体。
 石魔ガーゴイル 、31体。
 慧河けいがの『見通しの眼鏡スカウターレンズ』には
 魔族軍の総数は先程迄の約ニ倍になったと表示されている。

「くくく…念の為に潜ませていた
予備選力の下位魔族を全て投入することになろうとはな…?
我が信頼する同士であるヴィシル、ガグーン、ライゼガは既にキサマに倒され…
我自身もキサマにやられてこの無様振り。
だが、この全軍と我を持ってすれば相打ちで
キサマを討ち取る事は出来るかもしれんぞ…。
ふはははは!
さあゆくぞ人間、
我らの最後の特攻を受けてみるがいい。
それこそが我があるじイルーラ様への忠誠の証、
そして先ず死んで行った我が同士たちへの手向けとなるのだ!」
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