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第266話 見せしめ

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「ならば、まだ口が利ける者に降伏宣言をしてもらうことにしようかね?」

 魔族エクゼヴはこの場で唯一、意識のある人間のレオ守備隊長を見やった。

「この町の守備隊長とやらよ、降伏するがいい。
そしてこの町全ての武装を解除させて、我が魔軍の軍門に下るのだ」

「断る!」

 レオ守備隊長にも降伏を受け入れる気は全く無かった。
 降伏したその瞬間、
 このクラシアの町の住人全てが魔族の奴隷となってしまうからである。

「くくく…強情だな。
早かれ遅かれ、
この町の人間共は我が軍門に降るしかないというのに。
ならばこういうおもむきはどうかね?

 エクゼヴは両手をかざした。
 すると倒れていた騎士がふたり、
 ふわりと空中に浮いてエクゼヴの前へと移動した。
 高い魔力を持つ魔族のみが行使出来るという、
 魔念動力マナサイキックである。

エクゼヴは右手を伸ばす。
そして眼前で浮いている騎士の首を鷲掴みにすると、
ぎりぎり…と
のど輪の形に締め上げた。

「我は先程…
この地上において魔族の為の貴重な労働力となる
此の町の人間は殺さないと言ったが…
あれは嘘だ。
替わりは幾らでもいるのだからな。
下等生物が少し減るぐらい、
全くいとわないのだよ」

 エクゼヴは続いて左手も伸ばす。
 そしてもうひとりの騎士の首も、
 のど輪の形にぎりぎりと締め上げた。

「くくく…このふたりの命は
お前の返事次第に掛かっているという訳だ。
これ以上意味のない強情を張り続けるというのなら…
我はお前から降伏の言葉を言うまで、
此処に居る騎士どもを片っ端から殺していこうでは無いか?」

 エクゼヴは両腕に力を込める。
 その圧倒的な力に首を鷲掴みにされて、
 宙にぶら下げられた二人の騎士は苦悶の表情かおを浮かべた。

「ま、待て!」

「ならば降伏を受け入れるか?」

「そ、それは…」

「くくく…ならば、
 この二人にはやはり見せしめに死んで貰うとしよう」

「や、やめろ!」

エクゼヴは愉悦の表情かおを浮かべながら両手に力を込めた。

光線砲レイ!!」

 何処からともなく放たれた、
 闇属性の魔族には絶大な威力を発揮する
 光属性攻撃魔法の光線がエグゼヴへと迫る。

黒の要塞ブラックガーデン

 だがエグゼヴは闇属性防御魔法を展開して難なく防いで見せた。

「…む?
これは??」

 エクゼヴは自分が両手に掴んでいた筈の騎士ふたりが
 いつの間にか居なくなっている事に気付いた。

 何処からか飛んできた光属性攻撃魔法は完全に防いだ筈だが、
 弾みでどこかへ跳ばされたか…?

 急ぎ周囲を見渡して気配を探るエクゼヴ。
 すると…かなり離れた所で、
 自分が掴んでいた騎士を
 抱きかかえている二人の女騎士が目に入った。
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