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第263話 三魔

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「くくく…純粋な魔族である我を、
使い魔程度と一緒にしては困るな。
だがその力に免じて
それぐらいの無礼は大目に見てやろう、
人間の騎士どもよ。
お前たちは多少は骨のある相手と認め、
その褒美として少し本気で相手をしてやろうではないか?」

「くっ…魔族め、我らを見くびるな!」

 魔族の強大な力をその目にしながらも
 聖騎士たちは闘志衰えること無く、
 一斉に武器を構える。
 流石は魔族軍と常に最前線で戦ってきた国境警備軍に所属する騎士達である。

「…エクゼヴ殿、
この程度の下等生物ども相手に、
わざわざ貴方のお手をわずわせることもあるますまい?」

 突如上空から何者かの声が響いた。
 そして次の瞬間、
 空から三つの光り輝く流星が凄まじい速度で聖騎士団に向かって落下してきた。

「魔族の攻撃魔法か!? 各自散開せよ!」

 聖騎士団は即座に散開して、その流星の衝突地点から退避した。

 三つの流星は城壁の石畳の床に衝突して大爆発する…と思いきや、
 空中にぴたりと停止、そのまま床に静かに着地した。
 そして三つの流星が纏っていた光が消えて、
 その中から人ならざる異形の者が出現した。

「魔族ヴィシル参上だぜ!」

 獣の耳や尻尾といった特徴を宿した、
 しなやかな身体に獣の荒々しさを持つ女。

「魔族ガグーン、参上しました」

 灰色の肌をした筋肉粒々の大男。

「魔族ライゼガ、参上」

 一対の巨大な角を生やし、
 背中まで届く長いたてがみを伸ばした獅子の様な怪物。

 突如現れた三人の異形の者達は、
 自分達を囲みながら武器を構える聖騎士団を
 一瞥しながら言葉を述べる。

「エクゼヴ殿、
貴方は我等があるじ
魔言将イルーラ様より魔軍を預かる将軍…
立場あるお方なのですぞ。
人間如き矮小な下等生物相手に、
わざわざお手を下すことはあるますまい。
我等が替わりに、
その者共の相手を務めましょうぞ」

「くくく…共にイルーラ様に仕える誇り高き魔族の戦士たちよ。
ならばこの場は任せようではないか。
だが、この町の人間はすべからず
我等魔族の貴重な手足たる奴隷となる身…
あくまで命は奪わずにな」

「了解しましたぞ」

 ライゼガと名乗った獣型けものがたの魔族は
 その容姿に反して流暢な言葉を口にした後、聖騎士たちへと迫る。

「しかしライゼガ殿? 
その様なことを言ってもその実はただ、
人間えものを自分だけのモノにしたいだけなのでは?」

「待つんだよライゼガ。
獲物の独り占めは許さないからねえ。
アタイとガグーンにも分け前を寄こすんだよ!」

 ガグーン、ヴィシルと名乗った二人の魔族も続いて
 聖騎士たちの前に迫った。
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